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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

アンゴラ:ポリオ根絶への不断の取り組みが状況を変える

【2012年8月8日 アンゴラ・ウイジェ発】

ウイジェの町の北東部に住む26歳のリカルド・モンティロさんは、車いす生活ながらも仕事で身を立てています。彼は、アンゴラ内戦中、コンゴ民主共和国との国境地帯で暮らしていたときにポリオに罹ったのです。

家族から疎まれていると感じたリカルドさんは、家を出てウイジェに向かい、ムンド・アルバートさんの金属加工工場で仕事を見つけました。「仕事をくれる人がみつかるまで、しばらく時間がかかったよ。」 リカルドさんは学校には8年生までしか通っていませんでしたが、聡明な青年です。学校に戻るお金を稼ぐため、商取引を覚えたいと強く願っています。「来年は勉強をするつもり。看護師になる夢があるんだ。もちろん僕は成功すると思うよ。だって僕には内面の強さがあるからね」

リカルドさんの話が過去の例になることを願うばかりです。アンゴラからポリオの新たな症例が報告されなくなり1年が経ちます。2001年にポリオを根絶しておきながら、2005年以降はポリオの再輸入を繰り返してきたアンゴラにとって、これは画期的な出来事と言えます。

一人ひとりの子どもに届くように

ウイジェ地方は、ポリオとの戦いで実績を残してきました。コンゴ民主共和国や、コンゴとの国境は穴だらけで、それは、汚染された水や食べ物を通じて広がる伝染病が、人々が国から国に移動する際に検出されずに入ってきてしまうことを意味します。政府は、ユニセフやWHO等その他のパートナーと協力して、出入りする人々が予防接種を受けているかどうか確認できるように国境沿いに検疫所を設けてきました。

© UNICEF Angola/2012
リカルド・モンティロさんは、窓と扉を溶接することを学んでいます。彼は3歳の時ポリオに罹りました。学校に戻って看護師になる勉強をするため、お金を稼ぐ決意をしました。

2012年のポリオキャンペーンを通じて、ウイジェ地方で予防接種を受けていない子どもたちの割合は2011年の10%から3%まで低下しました。ウイジェ地方の予防接種管理者であるルクレシア・ペドロ・ミゲル氏は、こうした良い結果は、コミュニティを巻き込んだキャンペーンによって人々の生活習慣が改善したことや予防接種を定期的に実施したためだと説明します。

しかし一方で、アンゴラの首都であるルアンダでは、無秩序に広がった迷路のような不法居住者入植地の子ども一人ひとりに予防接種を行うことが大きな課題となっています。ポリオに関する専門家グループである独立監視委員会は、ルアンダのことをポリオの天然の巣窟と呼びます。ユニセフのアンゴラ事務所のコーエンラード・バノームリンゲン代表は、「ルアンダにはアンゴラの凡そ4分の1の人口が集中しています。人口が過密で水やトイレ事情の問題を抱えているため、ポリオやコレラのような感染症が沸き立つポットのようなものです」と語りました。

コミュニティ・ボランティアが主導する

ルアンダにたくさんある貧困地域の一つ、コゼンガでは、コミュニティ・ボランティアが主導して、子どもたちが予防接種を受け、その家族がより健康的な生活を送っているかどうか確認するようにしています。ユニセフやWHO等その他のパートナーにより支援された、パストラル・デ・クリアンカというグループのプログラムでは、コミュニティ・リーダーを選出し、自分たちの地区の家庭の健康を監視できるようにトレーニングを実施しています。コミュニティ・リーダーとなった各ボランティアは10世帯を任され、その世帯は定期的な検診や予防接種を受けることになります。

コゼンガのパストラル・デ・クリアンカにおいてコーディネーターをしているエネディル・ロサ・コレアさんは、「パストラルのプログラムが大きく貢献したのは、コミュニティ・ボランティアである母親たちが各家庭に行けば、子どもたちの親に予防接種を受けることがなぜ重要なのかということを、難なく語ることができる点です」と話します。「予防接種を受け、保健所に行き、より健康的な生活を送るのは子どもの権利なのだということを、各家庭はコミュニティ・ボランティアから教わるのです」

予防接種だけではない

3歳の息子エバンダちゃんの母親であるテレサ・ジョアキムさんは、コミュニティー・ボランティアのシシリア・ドミンゴさんの活動がなければ、子どもは生きられなかったかも知れないと言います。シシリアさんは、その男の子の話を聞いて駆けつけたとき、その子が深刻な栄養不良状態にあったので衝撃を受けたということです。シシリアさんはすぐにエバンダちゃんを診療所に運び、数日間入院させました。そして、母親のテレサさんに経口補水塩を与え、地元で手に入る食材から栄養のある食事を作る方法を教えました。「シシリアがいなかったら、私は今どこでどうしていたかわからないわ」とテレサさんは言います。

© UNICEF Angola/2012
アンゴラのパストラル・デ・クリアンカでコミュニティ・ボランティアをするシシリア・ドミンゴさん。ポリオの予防接種キャンペーンの運営や地域の家族の健康管理をしています。

定例的な予防接種や基礎的な健康診断に加えて、シシリアさんは家族に適切な衛生習慣に関する指導も行なっています。6年前にここで活動を始めてから、状況は改善してきたとシシリアさんは言います。「戦争中は、ここには多くの病人や死者がいました。私がパストラルで働き始めてから、事態が正常化に向かっていると分かるようになりました」

予防接種キャンペーンの強化、定例的な予防接種サービスの質量両面の拡充、国境管理の改善、家庭における飲み水やトイレへのアクセス改善により、アンゴラはポリオ根絶に向けた道を歩んでいます。ポリオが完全に根絶したとみなされるためには、3年間症例が報告されないことが必要です。

「私たちは、この画期的な出来事を達成するのにそれぞれの役割を担ってくださった、地域、地方、ならびに国の役人の方々、市民社会団体、国際協力パートナー、民間セクターやメディアの皆様全員にお礼を申し上げます」と保健省大臣のホセ・ヴィエラ・ディアス・ヴァンダム氏は感謝の意を述べました。

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