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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

バングラデシュ:子どもたちがテレビのニュース報道を制作


【2013年2月27日 バングラデシュ発】

© UNICEF VIDEO
ダッカで活動する若者ジャーナリスト。ユニセフが支援するプログラムの一環として、ジャーナリストとしての研修を受け、子どもにとっての重要な問題について調査している。この若者ジャーナリストが伝える「子どもの目から」は、毎週金曜日に放映。

バングラデシュのゴールデンタイムに放送される人気テレビ番組の中で、子どもたちが制作、構成、撮影を行い、ニュース報道まで行うコーナーがあります。

「こちらは『ATNバングラ』です。ダッカのミルプルにあるジュネーブ難民キャンプのスラムから、シャムパ・イスラムがお伝えします」

こんな風に、少女はジャーナリストとして、低所得地域に設置されているジュネーブ難民キャンプに暮らす子どもたちの、不健康で不衛生な環境について語った後、レポートを締めくくります。

この番組は以前から優れた報道番組でした。しかしながら、このコーナーにおける視聴者の感心を引いたのは、このレポーターが、まだわずか16歳であるということです。

ユニークな取り組み

シャムパさんは、子どもたちの問題を扱う「子どもたちの目から」というコーナーの6人の若者レポーターのひとりです。このコーナーは、毎週金曜日夜7時から10時に、国内のニュースを伝える人気テレビ番組『ATNバングラ』の中に設けられています。

「子どもたちの目から」は、バングラデシュの子どもの緊急性の高い問題を取り上げるユニークなコーナーです。テーマとして、市内の遊び場の不足や児童労働、また、停電が勉強の妨げとなっている問題も取り上げます。12月にスタートしてから、21回にわたり、こうしたテーマについての報道が放映されました。

地元NGO「バングラデシュ子どものテレビ基金」のファーミドゥル・イスラムさんは、この若者ジャーナリストたちは、厳格な選考過程を経てきた子どもたちだと説明します。「子どもたちは、ニュース制作、ネタ作り、台本の書き方、撮影方法、インタビュー方法、ニュースの見せ方、さらには正しい発音といった広範囲にわたり、8ヵ月の研修と個人指導を受けました」イスラムさんはこう話します

テーマの分析

この若者ジャーナリストたちは、週末や放課後に集まり、その週に取り上げるべきテーマについて話し合い、議論を深めています。こうしてまとめられたアイディアは、『ATNバングラ』のニュース局長のZ.I.マムンさんにチェックしてもらいます。

モハマド・ボカールさん(16歳)は、その後、ニュースがどうやって作られていくのか説明してくれました。「テーマを選んだら、ニュースの台本を準備して、事務局と再確認し、撮影に臨みます。その後、編集者が編集しますが、その時は私たちも立会います。ニュースが放映される前までずっと」。完成したそれぞれの作品は、チームの努力の賜物です。一人ひとりが様々な制作を担当し協力して行われています。

ダッカの街頭でのレポートは、容易なことではありません。若者ジャーナリストは、手続きやプロセスの問題に始まり、言葉による嫌がらせや脅しといった妨害や困難に直面します。しかし、一日の終わりには、いつも自分たちの撮りたいものを撮影してくるのです。

「厳しい立場の子どもたちに、結婚式の食べ残しを一皿10バングラデシュ・タカ(0.13米ドル)で売りさばいていることを報道したときには、私たちは脅しを受け、その建物から出て行くよう求められました。反響を恐れて、インビューに応じる人は誰もいませんでした。でも、このような状況に対処する方法を学ぶことができました」モハマド・ハサン・マハムード・ナビルさん(15歳)はこう話しました。

このチームは最後まで努力を重ね、この話は放映されました。

「仕事への情熱」

ほとんどの若者ジャーナリストは、経済的に恵まれない環境で育った子どもたちです。こうした子どもたちの親や保護者は、メッセンジャーとして働いていたり、事務所を手伝ったり、ユニセフが支援している公共施設で生活したりしているのです。

「このプログラムを開始した当初、子どもたちは内気でしたし、困惑し、ためらっているようでした。しかし、研修を受けて、たくさんのテーマを伝えるようになって、自信を持ち、物怖じしなくなっていきました。学校の成績も向上しました。『子どもたちの目から』の経験から、大きくなったらジャーナリストになることができると感じているのだと思います」イスラムさんはこのように語ります。

「私たちは、情熱を持って仕事に取り組んでいますし、この試みが継続することを願っています」「この経験は、私たちに現実の世界への洞察力と、世間に何かを訴える機会を与えてくれました。こうした経験は、学校でも私たちの想像力を高めてくれています。学校の成績にも、特別な単位として反映されているのです」シャムパさんはこう語りました。

子どもの声を広げる

「国内のニュースを通して、子どもの声に耳を傾ける取り組みを増進させていることは、特筆すべき成果です。子どもの問題は、取り扱われないことが多いですから」ユニセフのアリファ・S・シャルミン広報担当官はこう話します。「ここでは、子どもであることで厳しい立場にある子どもたち自身が制作し、撮影し、監督も務め、編集も管理しています。子どもたちは、自ら自分たちのニュースを生み出しているのです」

マムンさんによると、この実験的な試みは成功しています。「このコーナーの反響は、全て肯定的なものです」「人々は、こんなに若い学生たちが、難しいテーマに取り組み、レポートに成功していることに、本当に感銘を受けているのです」

子どもの権利条約に則り、ユニセフの主導で始まったプログラムは、ユニセフと地元NGO「バングラデシュ子どものテレビ基金」とATNバングラとのパートナーシップにより成立しています。

「私たちは皆、大きくなったら、子どもの生活の全般的な向上や改善のために、社会の変化を促すジャーナリストになりたいと思っています」「今は、その土台があります。私たちのようにたくさんの子どもたちがこうした機会を利用して、生活を変えることができるだろうと信じています」(ボカールさん)

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