メニューをスキップ
HOME > 世界の子どもたち > ストーリーを読む
財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ブルガリア:親のいない子どもたちに、代替的養護施策を拡充

【2012年5月8日 ブルガリア・ソフィア発】

ユニセフのマーティン・モグワンジャ事務局次長が、ブルガリアを訪問。施設で生活している子どもたちと面会し、社会的に最も弱い立場に置かれている子どもたちのニーズや、そうした子どもたちに適切なケアを提供するにあたっての課題、そして、子どもたちをサポートするための制度の改善への取り組みについて、理解を深めました。

施設に代わるもの
© UNICEF 2012/Bulgaria
ブルガリアで、障害のある子どもたちのための施設を訪問したユニセフのマーティン・モグワンジャ事務局次長(右)と同国ユニセフ事務所のターニャ・ロドカ代表。

東欧と中央アジアの国々では、特に障害のある子どもたちが施設で生活している割合が、世界で最も高い状態です。

しかしながら、殆どのこうした施設では、子どもたちが適切に育つために必要な子どもたち一人ひとりに対する配慮が払われるような環境が整っていません。こうした環境は、特に、乳児や幼い子どもたちの健康状態を悪化させがちであるのみならず、社会性を身につけるための働きかけや知育環境が整っていないために、健康状態の悪化が、長期的・固定的な障害につながることもあります。さらに、適切なケアが提供されないこうした状況に置かれている子どもたちは、ネグレクトや虐待の被害にもさらされやすいのです。

ブルガリアでは、ユニセフの支援もあり、近年、こうした子どもたちのためのより健全な代替的養護施策の導入が進められています。この代替的養護施策には、里親制度や後見人制度、実の家族と同じような環境を提供する小さなグループホーム等の形でのケアの提供が含まれています。また、ユニセフは、子どもたちが家庭に留まることができるよう、(当局に対し、)貧しい暮らしを強いられている家庭や、障害のある子どもたちのケアで困窮している家庭への支援策の導入・拡充も働きかけています。

今回の視察中、モグワンジャ事務局次長は、スラドゥク・クラデネッツにある障害のある子どもたちのための施設を訪れ、子どもたちやスタッフと交流。そこで、施設のあるスタラ・ザゴラ市のイヴァンカ・ソティロヴァ副市長と、ブルガリア政府の子ども保護庁の専門家イヴァイロ・ミラノブ氏とも面会しました。

「施設そのものの状態は、それほど悪いわけではありません。しかし、(施設のスタッフと子どもたちとの間に)情緒的な関係が作られていないのです。施設で働くスタッフたちは、こうしたタイプの施設で現在提供していること以上のケアやサービスを提供することができないのです。」「子どもたちは、家族と一緒に暮らすべきです。もしそれが何らかの事情でできないのであれば、医療サービスへのアクセスも確保できる里親制度か、小さな家族のような環境を確保できるタイプの施設で生活するべきなのです」

幸運にも、今回モグワンジャ事務局次長が訪問したこの施設は、現在、政府が、一部欧州連合の支援も受けて進めている"脱施設化"事業の一環として、閉鎖される予定です。今、この施設を利用している子どもたちは、より健康的な代替的養護による支援を受けることになります。

モグワンジャ事務局次長は、この後、地元のサマリア人協会がユニセフの支援を受けて運営している地域里親ケアセンターを訪問。里親をしている人々からもお話しを伺いました。このセンターは、(里親に関する)情報を管理。里親を目指す人々の研修や評価活動も行っています。また、里親の候補となった方々と子どもたちとのマッチングや、里子の募集活動も支援しています。モグワンジャ次長が面会した里親のみなさんは、社会的に最も厳しい立場に置かれている子どもたちのケアの提供にあたって直面している課題と成果について語ってくれました。また、里親に育てられた子どもたちは、施設で生活している子どもたちに比べて、より大きな精神的・身体的な恩恵を受けているとも語ってくれました。

翌日、モグワンジャ次長は、全国10箇所設置されている、障害のある子どもたちのための小さなグループホームのうちのひとつを訪問。このグループホームは、2010年にモギリノ施設が閉鎖されたことに伴い、ユニセフが政府とともに、新たにモギリノ村に建設しました。

貧窮したコミュニティ
© UNICEF 2012/Bulgaria
ブルガリアのスアラザゴラ市を訪問中のマーティン・モグワンジ事務局次長。

また、モグワンジャ事務局次長はスタラザゴラ市の'Lozenec'と呼ばれるロマのコミュニティを訪れました。事務局次長は、ロマの人々と子どもたちから話を聞いた他、8年以上、この地域の人々を支援し続けている地元NGO「国境なき世界」の代表者たちとも面会しました。

こうした面会の中では、貧困や偏見・差別、基礎的な社会サービスの欠如といった、子どもたちが直面している主な問題について話し合われました。多くの女の子や若い女性が買春や人身売買に巻き込まれています。スタラザゴラ市は、10代で妊娠する女の子の割合が最も高い地域のひとつで、中には12歳の若さで妊娠する子もいるのです。

首都ソフィアに戻ったモグワンジャ事務局次長は、労働社会政策大臣と面会。ブルガリアでのユニセフの活動の最重要課題と、ブルガリア政府の子どもの権利に対する取り組みについて協議しました。大臣は、ユニセフとのパートナーシップの重要性を強調。両者の協力関係が、これまでに、ブルガリアの子どもや女性の生活環境を大きく変えてきたと語りました。

「社会的に最も厳しい立場にある貧困に苦しむ子どもたちに(私たちの活動の)焦点を合わせることが重要です。世界中で、多くの場合、こうした環境におかれているのは、肉親に育てられる機会を奪われたり、障害のある子どもたち、そして、非常に貧しい家庭の子どもたちなのです」「今回のブルガリア訪問を通じて、この国が、子どもたちを守り、子どもたちの権利を実現できるよう、社会的な制度の改善に向け、大きく前進していることを知ることができました」(モグワンジャ事務局次長)

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る