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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたちは今

中央アフリカ共和国:
子どもたちが描く過去の記憶
家族の捜索やトラウマを乗り越える手助けに

【2014年5月28日 バンギ発】

子どもが描いた絵
© UNICEF Central African Republic /2014
子どもが描いた絵。

絶え間なく紛争が続く中央アフリカ共和国では、多くの子どもたちが自宅からの避難を強いられています。マドレーヌ・ローガン広報官が現地の「子どもにやさしい空間」で行われている活動の様子を伝えています。

* * *

中央アフリカ共和国の子どもたちに深く刻まれた記憶に、胸が痛みました。頭に銃を突きつけられる妊婦、放火されて炎に包まれる、赤ちゃんが眠る家、血の海に横たわる遺体を見下ろす、ナタを手にする男性。

これらはすべて、ボサンゴアのユニセフが支援する「子どもにやさしい空間」で子どもたちが描いたものです。

絵に表れる、子どもたちの心の傷

子どもが描いた絵
© UNICEF Central African Republic /2014
子どもが描いた絵。

2012年12月から中央アフリカ共和国で発生している激しい武力衝突。子どもたちはその小さな瞳で実際に目にした、恐ろしい光景を鮮明に描いています。

状況が最も深刻だったときは、約50万人の子どもたちが自宅からの避難を強いられました。また、特定の地域で暮らしている、もしくは特定の宗教を信仰しているという理由によって、子どもたちも攻撃の対象にされています。自分の感情や体験を絵に描くことは、ひとつの治療方法です。恐ろしい体験のシーンであっても、幸せだった頃の感情であっても、それらを描くことが、子どもたちが心に負った傷を治していく手助けとなります。

感情を表現することが、前に進む力に

「子どもにやさしい空間」に参加する子どもたちが、紛争が始まる前の思い出を描いています。安定した生活を送っていた頃の幸せな記憶を取り戻すことは、心のケアにおいて極めて重要です。描くことで、紛争前に感じていた愛情を再認識することは、子どもたちが心の傷を乗り越える、大きな力になります。

しかしなかには、自ら進んで、自分が目にした恐ろしい光景を描く子どもたちもいます。

「自宅からの避難を強いられている子どもの多くは、暴力行為を目にしています。そしてその記憶は深く刻まれ、頭から離れずにいるのです。すぐに対処しなくては、子どもたちが受けた心の傷は更に広まってしまいます」と、ユニセフ・中央アフリカ共和国のジャン・ロケンガ子どもの保護担当チーフが語ります。

家族の捜索のヒントにも

子どもが描いた絵
© UNICEF Central African Republic /2014
子どもが描いた絵。

子どもたちが描いた絵は、避難する際に離れ離れになってしまった子どもたちの家族の捜索にも役立ちます。

幼い子どもたちのなかには、家族を捜すのに必要な情報を伝えることができない子どももいます。たとえば、「村の名前は?村のどこに住んでいたの?家族は何人?お母さんの名前は?」などの質問に、答えることができません。

このような場合、絵を描くことで子どもたちの記憶を引き出し、重要な情報を得ることができます。マリエ・ソウドレ子どもの保護専門官が実際に現場で行っている活動を紹介します。

「子どもたちに付き添いながら、まずは寝室の絵を描いてもらいます。そして、『いつも誰と一緒に寝ていたの?一緒に寝ていた人の絵を描ける?部屋の中には、他に誰がいるの?』などの質問をします。質問を問いかけることで、子どもたちが過去の記憶を思い出し、絵を描きやすくなります。こうしてゆっくりと家族の情報を集め、家族の捜索のために役立たせます」

絵の中の懐かしい過去

描いた絵を見せるエミリーさん
© UNICEF Central African Republic /2014
描いた絵を見せるエミリーさん。

その他にも、子どもたちは昔を懐かしむ絵をよく描きます。10歳のエミリーちゃんは、避難する前に住んでいた自宅を思い出さない日は一日もありません。避難所に設置された「子どもにやさしい空間」で、かつて暮らしていた家の絵を何度も繰り返し描いています。

私がエミリーちゃんと出会ったのは、彼女の一家が安全を求めて避難所に移動してから、2カ月が過ぎたときでした。一家が身を寄せるバンギにある避難所では、約7,000人が生活を送っています。環境は一変し、エミリーちゃんは恐怖感じることもあります。食糧、安全な水、トイレなどの生活の基本的なものを、何千人もの人々と共有しなくてはいけません。

学校は12月から閉校しているため、「子どもにやさしい空間」が、エミリーちゃんのような子どもたちにとって、安心して遊び、安全な場所で過ごし、目撃した暴力行為や避難生活で受けた心の傷を癒すための心のケアを受けることができる、唯一の場所です。

ここで子どもたちは、絵を描くほかにも、スポーツや演劇、ダンスなどの活動も行っています。

「子どもにやさしい空間」で必要な支援を受けるエミリーちゃんは、絵の中に描かれた自宅に戻ることができる日が来るまで、色鉛筆を手に懐かしい故郷を想い続けます。

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