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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

チャド:自らの問題を自らの力で解決する難民の女性たち


【2009年3月26日 チャド発】

© UNICEF Chad/2009/Walther
チャドにあるダハの難民キャンプで、難民登録を受けるために待つ中央アフリカ共和国の女性たち。

2月中旬以降、紛争が続く隣国の中央アフリカ共和国からチャド南東部のダハに逃れてきた人は、7,500人以上にのぼります。国境から200メートルもない場所に位置するダハは、もともと約4,000人に満たない住民が暮らしていた小さな町。避難民の80パーセント以上は女性と子どもたちです。

ユニセフは、最初の難民が到着するとすぐ、緊急のニーズに対応するため対応チームを現地に配置しました。難民の流入が山を越して4週間が経過した今月27日までに、ユニセフは、ダハに、水と衛生施設のサービスも備えた栄養センターを設置しました。

また、250人以上の難民の子どもたちが地元の学校に編入しました。ユニセフは、学校用品のほか、全ての子どもたちが学習できるよう4つの臨時の教室を提供しました。

「ダハの学校には、難民の子どもたちが300人通っています。そのうち3人に一人が女の子です。」ユニセフのベン・モウッサ教育担当官は話します。「学校に行くことができないと、子どもたちは、その時間を取り戻すことはできません。教育は、子どもたちを社会や世界につなぐ扉なのです。」

女性のためのフォーカス・グループ

3月初旬、ユニセフはダハで、女子教育と出産前ケアという二つの重要な問題について話し合うフォーカス・グループ(共通の課題を抱える人々の集まり)を開催しました。

このグループの話し合いは、2月からの武力衝突で避難を余儀なくされた多くの人々にとって、住む場所を追われて以来初めて、地域の人々との横のつながりを持たせてくれた機会でもありました。厳しい暑さにもかかわらず、華やいだ雰囲気の中、集会が行われました。

当日は、世代を超えた男女1000人以上が朝早くから集まり、数少ない日陰を探して、集会までの時間を辛抱強く待っていました。

教育への渇望

この集会に参加したユニセフの職員は、①女の子は学校へ行くための権利を持っていること、②女性は妊娠中、地元の保健センターで定期健診を受けるべきであることを訴えました。

「父が私の夫を紹介したのは、私が高等学校の入学試験に受かったばかりの14歳の時でした。」中央アフリカ共和国からやってきたファティマさん(40歳)は話します。彼女と3人の子どもたちの難民キャンプでの暮らしは、既に3週間以上にもなっています。「私は5年間も学校に行くことができて、とても運がよかったんです。でも、もっと勉強できたらいいと思います。学びたいことや理解したいことがたくさんありますから。」

出産前ケアの重要性

フォーカス・グループのメンバーは、教育と安全な妊娠・出産は、本来関連のあるものであると指摘しました。教育を受けた女の子は、健康で安全な方法で妊娠・出産をする傾向があります。また、彼女たちの得た知識は、彼女の家族全員の健康の維持・向上にも繋がるのです。

「出産前の診断には、3つの明らかな利点があります。」とユニセフのチッセ医師は語ります。「1つ目は、妊娠の確認ができること、2つ目は、継続的な診断によって合併症や感染症を防げること、そして3つ目は危険要因を回避し、出産の時に備えることができるのです。」

ザハラさんという名のある女性は、女性が出産前ケアを受けていない理由のひとつは、恥ずかしさと悪いイメージのためだと指摘しています。「女性は、夫以外の男性の前で体を見せることができないのです。」

ユニセフは、現在、難民キャンプに、設備の整った仮設助産施設を開設すべく準備を進めています。

「静かな変革」の始まり

この集会は音楽と踊りで締め括られました。10以上の異なる民族グループが2つの難民キャンプに集まり、彼らの伝統的なダンスを披露しました。

会場は陽気な雰囲気に包まれていましたが、この日の最後になっても女性たちは途方にくれた顔をしていました。こうしたフォーカス・グループの話し合いは、即効的に「変革」をもたらすものではありませんが、今後、時間をかけて、社会に静かな変革を与えてゆく、その出発点になるのです。ユニセフは、ダハの難民キャンプでの生活を余儀なくされる人々がいる限り、今後も、今回と同様の課題をテーマに、定期的な話し合いの場を設けてゆく予定です。こうした方法で、難民の女性と子どもたちも、自分たちの声を発することができるようになるのです。

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