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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<2003年8月13日>

ユニセフ親善大使 ジェシカ・ラング
女性や子どもへのレイプを止めて!
<コンゴ民主共和国>


コンゴ民主共和国で行われている、女性や子どもに対する残虐的で、ときに意図的、組織的なレイプに対して、ユニセフの親善大使であるジェシカ・ラングが声を上げました。コンゴ民主共和国で日常的に行われているこうした女性や子どもに対する虐待行為を世界は見過ごしてはいけないと訴えたのです。
「たとえ、この残虐な行為を生き抜いたとしても、女性や子どもたちは、一生、肉体的、感情的、心理的ダメージを背負い続けます。世界はこの残虐行為を阻止し、犠牲者たちに救いの手を差し伸べなければなりません。そして、この行為を行った者には正義の裁きを受けさせなければなりません」ユニセフ親善大使に任命されたばかりのジェシカ・ラングは、大使として初めて訪れたコンゴ民主共和国から帰国して、こう語りました。

コンゴ民主共和国では、すべての武装勢力がレイプ、そのほかの性的暴力に関わりました。こうした残虐行為はコンゴ東部では組織的に、それも広範囲に行われているのです。女性や女の子たちは、「敵を支持した」という理由で、軍事行動の際にレイプされることが多く、これはコミュニティに恐怖心を植え付ける狙いがあります。夫や父親、子どもたちの目の前でレイプされたり、誘拐され、そのまま行方不明になっている被害者も多いのです。

女性や少女たちは、畑仕事、薪拾い、市場に行く途中など、日常生活の中で襲われます。男の子といえども安全ではありません。実際のところ、少年や老女に対する性的暴力は増えているのです。

「口にも出せないほどひどい暴力を受けて傷つきながら、未来に向かって勇気と力を持って立ち向かおうとする人々の威厳ある姿を見るとき、私は圧倒されてしまいます」とジェシカ・ラングは言います。

「レイプは人権に対する挑戦です。人間の自尊心や良識に対する挑戦だと言えます」と語るのはユニセフの事務局長キャロル・ベラミーです。「コンゴ民主共和国では、レイプが戦時の兵器として使われています。世界はそれをやめさせなければなりません。犠牲者の中には5歳の子どもや80歳の老女もいます。こうした罪を犯している人たちは、その責任から逃れられないことを知るべきです」

レイプの恐怖と密接に関係があるのがHIV/エイズの恐怖です。HIV/エイズ感染率の高い兵士たちと、組織的なレイプがコンゴ民主共和国で行われていることをあわせて考えると、レイプされた少女や女性たちは死の宣告を受けたも同然です。ブカブのパンジ病院での統計を見ただけでも、レイプの犠牲者の27%がHIV陽性となっています。推計によるとコンゴ民主共和国東部でHIV/エイズ感染率は人口の15%にもなると言われているのです。

HIVの感染を拡大しているほかの原因としては、性的暴力、避難民の広域的な移動、一般的な保護システムの崩壊、兵士の増大(それもHIV/エイズが流行している地域、ブルンジ、ルワンダ、ウガンダ、ジンバブエなどから来た兵士たちの増大)、保健ケアの欠如が挙げられます。

ユニセフなどの協力で女子教育キャンペーンが行われている。(本文とは直接関係ありません)女性と子どもに対するレイプはコミュニティ全体に壊滅的な打撃を与えています。子どもたちは、学校も保健センターも取り上げられ、目の前で家族が殺され、兄弟姉妹が強制的に軍隊に徴兵され、家族全体が避難民となり、コミュニティも崩壊しているような状態に置かれています。簡単に言えば、「保護」という傘が一切なくなっているのです。

幼い子どもの多くは学校に行くこともできず、避難民キャンプで育てられ、路上で生活したり、武装勢力に徴兵されたりしています。

コンゴ民主共和国の内戦は、無数の子どもたちとその家族の生活をズタズタにしました。子どもたちは、何万人の単位で、武装勢力によって徴兵され、戦闘兵として使われたり、性的奴隷、ポーター(荷物運び)、料理人として使われています。前線の35%が子どもの兵士という場合もあります。内戦は、国の経済にも大きな影響を与え、家族たちは極貧の中で暮らすことを余儀なくされています。人口の70%は、公の保健サービスを受けられませんが、その原因は、貧しさのあまり医療費が払えない、あるいは保健施設に行くこともできない、というものです。

戦時の戦略として組織的なレイプを行っているのは何もコンゴ民主共和国だけではありません。1990年に、ルワンダで大量殺戮事件が起こりましたが、そのときには、25万から50万人の女性がレイプの被害にあっています。バルカン半島での戦争の際は、少なくとも2万人の少女や女性がレイプされたと言います。これは決して異例なことではないのです。ブルンジからの報告によれば、兵士による少女や女性に対するレイプ事件は増加している言います。中にはクラス中の若い女性たちをレイプした事件もありました。

「レイプと性的暴力は、事件に巻き添えになったという種類のものではありませんし、戦争だから仕方がないというものでもありません。これはあくまでも罪であり、罪を犯した者は罰せらるべきです。コミュニティによって、暫定政権によって、国際的なコミュニティによって罰せられるべきです。それも国際刑事裁判所を通して罰せられるべき罪なのです…」とキャロル・ベラミーは言います。

コンゴ民主共和国について

  • コンゴ民主共和国の内戦は世界の人道危機の中でもひどいものであり、アフリカの歴史の中でも一番犠牲者の多い戦争だと言われています。1998年以来、330万人が犠牲になり、その多くは女性、子ども、そして年をとった人たちです。
  • 第二次世界大戦以降、内戦で殺された人の数が、どの内戦よりも多いと言われています。
  • 全人口の55%は子どもです。
  • 1歳になる前に命を失っている子どもの割合は12%以上です。
  • 1998年に内戦が始まって以来、8軒に1軒が悲惨な死を経験しています。
  • 戦争の危機を乗り越えても、多くの子どもたちが、自分の家族や友達にふりかかった暴力的行為を記憶しており、それを払拭できないでいることがあります。
  • 妊産婦は、ほかの女性よりも悲惨な死を迎える確率が2〜3倍高いと言われています。その原因は交通手段の欠如、薬の欠如、保健サービスの不備などです。
  • コンゴ民主共和国は、世界の中でも支援を送るのに一番お金がかかる国です。(理由は治安の悪さ、交通機関の不備、国の大きさなどです)

ロンドン/ニューヨーク/キンシャサ発、2003年8月11日(ユニセフ)


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