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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

コソボ:ユニセフ事務所から日本のみなさまへの感謝のメッセージ

【2009年11月10日 コソボ発】

© UNICEF
ジャコヴァ / ジャコヴィツァにあるユニセフが支援する早期幼児教育センター。

先日、私はユニセフ・コソボ事務所の代表として着任しました。今まで提供されたコソボの子どもたちへの全ての支援についてスタッフと話し合っていますと、日本ユニセフ協会が、コソボ危機の間もその後の復興支援においても際立った支援をしてくださっていることに気がつきました。日本ユニセフ協会を通じて日本のみなさまからお寄せいただいたご支援に、心から感謝の意を表したいと思います。1999年から2004年の間に、コソボの子どもたちを襲った武力紛争の影響を緩和するため、そして復興支援のために、日本ユニセフ協会から、総額1,484,591.17米ドルが提供されました。

この日本ユニセフ協会の支援のおかげで、ユニセフ・コソボ事務所は、1999年に勃発した武力紛争で破壊されたコソボ政府と市民社会の復興を支援し、子どもたちのための新たな社会サービスの提供を開始することができました。多くの学校の再建と、教育システムの改革、ほとんど全ての子どもたちへの定期的な予防接種、様々な施設に入所していた子どもたちなどの「脱施設化」などへの支援は、日本ユニセフ協会からの支援なくしては成し遂げることはできなかたでしょう。

1999年から2002まで、保健分野におけるユニセフの活動の中心は、予防接種率を高めることでした。日本からの支援で、ユニセフは、18歳未満の100万人の子どもたちに必要な、主な病気に対するワクチンを調達することができました。また、この支援により、コソボ公衆衛生研究所に中央保冷室を設置することができ、適切な温度で一年分の全てのワクチンを保管することができるようになりました。

世界保健機関(WHO)、国連人口基金(UNFPA)との共同支援である母性保護戦略の一環として、ユニセフは、コソボ全土にある13の産科病棟に必須医療機器を提供し、医療関係者に必要なトレーニングを実施しました。こうした支援によって、出産適齢期の女性が、出産前後の救急保健ケア・サービスを利用できるようになりました。ユニセフの支援活動と政策提言活動の結果、コソボ保健省は、小児向けEPIワクチン(ポリオ・BCG(結核)・DPT三種混合(ジフテリア・破傷風・百日咳)・麻疹のワクチン)の全量を国家予算で負担するようになっています。

© UNICEF
ゲームの準備をするサマースクールの子どもたち。

こうした努力にもかかわらず、保健分野では、いまだ多くの問題が残されています。特に、基礎保健ケア・サービスの質、乳幼児の発達に関する親や保護者の理解不足に問題があり、こうしたことがコソボの高い乳児死亡率を招いています。より系統立てた方法として取り組む必要のあるもうひとつの側面は、ロマ、アシュカリア、エジプシャンといった少数民族の子どもたちの問題です。こうしたコミュニティの子どもたちの予防接種率や、その他の保健や発達に関係する問題について調査することが必要です。

教育分野では、日本ユニセフ協会からの支援により、ユニセフは、コソボ政府の教育改革方針に従い、1999年に学校の再建・復興支援を開始しました。2001年には、この改革方針を大きく実行に移すため、ユニセフが選抜した35の研究協力校に「子どもを中心に置いた教育」を試験的に導入しました。学校には机や椅子などのほか、理科実験用の備品やコンピューターをはじめとする教育用資材を提供。2万人近くの子どもたちと1,200人の教員が、この恩恵を受けました。また、この年一年間を通して、ユニセフはコソボ全土で、新たな教育戦略・政策を具体化するため、幼稚園にも、教育用資材をはじめとする様々な支援物資を提供することにも力を注ぎました。

ユニセフは、2001年まで、(紛争後の子どもたちへの「心のケア」としての)社会心理的な教育支援において主導的な役割を果たしました。早期幼児教育は、2002年においても継続的に支援され、政府の早期幼児教育政策の確立と、コミュニティレベルで試験的プロジェクトを実施する機関の設置に取り組みました。地域の中に教育活動の運営組織や、「子どもに優しい学校」プロジェクトや「早期幼児教育センター」プロジェクト、「女性の識字と少数民族の教育プロジェクト」の運営委員会が設置され、コソボの人々の間に、自らの力で子どもたちの教育を良くしていこうという風潮が創られました。「子どもに優しい学校」プロジェクトの一環として、ユニセフのパートナーの一つである地元のNGOは、障害をもつ子どもの教育、子どもの権利の実現、部族間の話し合い、対話形式の教育、学校教育の親の参加を積極的に促進しました。

ユニセフは今年、カリキュラムの枠組みを見直すため、教育・科学技術省の支援を行っています。

この中で、ユニセフは、「子どもに優しい学校」というコンセプトが、カリキュラム改訂の中で必須要素になるよう提言しています。コソボの中で、早期幼児教育は、見落とされてきた分野のひとつです。

資金不足から、早期幼児教育を受ける子どもは、まだまだ極一部に過ぎません。ユニセフは、幼児教育と早期学習開発基準を定めた法律の制定のため、教育・科学技術省に対して技術支援を行っています。

子どもの保護の分野では、日本からの支援によって、精神的、身体的に障害のある子どもたちも、他の子どもたちと一緒に生活できるようにする取り組みが進んでいます。

労働・社会福祉省との連携により、シュティミェ市の成人用施設にいた35人の子どもたちを、全員、コミュニティ・ホーム(子どもへの支援施設)に移すことができました。コミュニティの人々の生活と分断されない生活が送れる施設の再開は、子どもの福祉と健康のためにも大変有益な事業でした。

コソボ政府は、特別な支援を必要する人びとのための対策を策定し、さらに障害を一生背負って生きる子どもがいる家族への社会保障に関する新たな法律を採択しました。

しかし、特別な支援を必要とする子どもたちへのサービスの改善と、子どもたちの潜在能力を最大限に引き出せるような、個々人にあった計画を始めるにはさらなる投資が必要です。

障害のある子ども、または一般的に保護を必要とする子どもたちへのサービスの向上には、資金不足、関係省庁や機関の相互連携の不足、そして社会福祉分野を司る行政機関に、実証に基づく計画策定能力が欠如している現状などの課題に取り組まなくてはなりません。

日本をはじめとする世界各国のドナーのみなさまからのご支援や、コソボの市民社会、そしてコソボ政府の諸機関との共同作業と協力により、ユニセフはこれまで、多くの成果をあげることができました。ここ数年、多くの子どもたちの生活に著しい変化をもたらしたすべての成果を可能ならしめた皆様のご厚意に、この場をお借りして感謝申し上げます。

コソボは、旧ユーゴスラビアの崩壊後、経済面、社会面において、この地域では最低の水準を持つ汚名を受け継いだ国です。そして、コソボは、他の西バルカン諸国に比べて、今なお、かなり遅れをとっている国なのです。

ヨーロッパ統合による繁栄にもかかわらず、コソボは、この地域で最も高い乳児死亡率を記録し、子どもたちは、極度の貧困の影響を受けています。ユニセフ・コソボ事務所は、ヨーロッパの真ん中に位置しながら忘れられがちな、この国の子どもたちの深刻な状況が忘れられないようにするためにも、今後ともコソボの全ての子どもの権利を守るため、全力で取り組みます。

ヨハネス・ウェドニッグ
ユニセフ・コソボ事務所代表

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