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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<<2002年12月11日掲載>>

女性性器切除(FGM)によって亡くなった少女の話
<ジブチ>

 6月17日午前12時45分、Xさんは8歳になる娘を連れ、緊急医療サービスに駆け込みました。彼女の子どもは外陰部に受けた深い傷口からの大量出血により失血状態に陥っていました。子どもからは深刻な貧血症状が見受けられます。急を要するこの事態に医者はすぐ対応し、止血処置をし、同時に輸血も始めました。しかし、少女を救うためのすべての努力は報われることなく、少女は入院してわずか2時間後、息を引き取りました。
  この娘と母親の悲劇はこのようにして始まりました。

 6月16日午前6時、母親は8歳の娘(元気で明るい、とても健康な子どもでした)を町でもあまり治安のよくない地域にある、伝統的な性器切除手術を執り行う切除者のもとへ連れていきました。この女性切除者がFGM手術に用いた唯一の器具は使い込まれたかみそりの刃と、麻酔薬として使われた砂糖とモツヤクジュ(ハーブの一種)の粉末を混ぜたものだけでした。邪悪な精霊を追い出すためにコーランの一部を読み上げると、少女のおばにあたる女性が現れ、少女が動かないようにとしっかり押さえつけました。少女は身動きもとれないまま手術台にのせられ、両足を開かれました。そこに居た他の親戚の女性や近所の女性たちも手伝って、少女が動けないように押さえつけました。少女の叫びや嘆願は聞き入れられることなく、切除者は手術を開始し、外陰部の全ての性器を切除し始めました。小陰唇、クリトリス、大陰唇のすべてです。そして傷口には止血のための砂糖とモツヤクジュの粉末を混ぜたものを塗り、布切れで少女の両脚をしっかりと縛り、開いた傷口がふさがるようにしました。切除者はこれで少女は「けがれた血液」から浄化されるであろうと少女の母親に告げました。

写真は本文とは直接関係ありません

 母親は後になってこう話しました。少女は手術中に気を失い、意識を取り戻すとすぐに傷口の痛みで泣き叫び続けた、と。少女の出血は昼も夜も過度に続きましたが、母親は切除者に言われた通り血を拭くだけでした。少女には飲むものも与えられませんでした。切除者は、尿をすることで傷口が開く危険性があるからと説明していたのです。

 夜9時半のこと、父親が帰宅すると、少女はひどく衰弱しており、すぐに少女を病院に連れて行くことにしました。そこで少女はあらゆる処置もむなしく、2時間後に息を引き取ったのです。

 この事態を受け、産婦人科の主治医である医師がFGM反対運動の代表に連絡をし、状況を報告しました。そして両親にはこの幼い少女の死がFGMの風習によって引き起こされたものであること、切除の手術をしていなければ少女の死は防げたのだと説明しました。

 少女の両親は娘を亡くした悲劇を繰り返すことのないようにと「安全な母性」プログラムに参加することになりました。

ジブチ・シテイ、11月29日(ユニセフ)
マダム・サフィア・エルミ「安全な母性」プログラム代表

*女性性器切除(FemaleGenitalMutilation:FGM)は、主にアフリカのおよそ30カ国で行われている儀式的行事。女子の貞節を守り結婚の条件をよくするためものと考えられ、長い間続けられてきた。WHO(世界保健機関)の推定では、1億3000万人の女性や少女がFGMを受けているとされる。FGMは身体に悲惨で致命的な長期的苦痛を与え、また深刻な心理的影響を及ぼす。近年、ようやくFGMは女性に対する虐待であるとの認識が広まり、法律で禁止したり、反対運動が広まったりしている。

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