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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

インド:子どもたちの未来を拓くイケアとユニセフのパートナーシップ

【2010年9月22日 インド発】

サロジャ・プラジュパティちゃんは、大きくなったら国の教育大臣になりたいと思っています。

「すべての子どもたちが学校に通えるようにしたいの」と語るサロジャちゃんですが、実は、彼女は、インドで最も人口の多いウッタル・プラデーシュ州のサンブハドラ小学校に設置された「子ども内閣」で、すでに「教育大臣」として活躍しています。「子ども内閣」は、“首相”はじめ7人の女の子と5人の男の子で構成されています。

質の高い教育の拡大
© UNICEF/2010/Crouch
インドのウッタル・プラデーシュ州サンブハドラにあるブット小学校を訪れたイケアのミカエル・オールソン最高経営責任者。

サロジャちゃんは、子どもたちに家の手伝いや仕事をさせたい親たちによって、学校に通わせてもらえない子どもたちが、彼女の住むコミュニティにも数名いると言います。サロジャちゃんは、教育は、全ての子どもの人生を変えるものだと信じています。「だって、大きくなったら、何にでもなれるのよ。」

「子ども内閣」は、ユニセフがウッタル・プラデーシュ州の11の地区で推進している様々な活動を通じた学習と質の高い教育の機会を組み合わせて提供するアプローチの一環として実施されているものです。

「『子どもに優しい学校』では、子どもたちが基礎教育の課程を修了できるようにするために、長く学校に通い続けられるよう、より楽しく勉強に取り組める学習方法を取り入れています。」ウッタル・プラデーシュ州にあるユニセフ現地事務所のアデレ・クドル所長はこう話しました。

スウェーデン発の国際的ホームファニッシングストアのイケアは、その社会貢献活動、「The IKEA Social Initiative」を通じて、ウッタル・プラデーシュ州東部のミルザープル県、ジャウンプル県、ソーンバドラー県にある全ての小学校に、このユニセフが提唱する新たなアプローチを導入するための支援を行っています。

児童労働問題の解決に取り組むイケア
© UNICEF/2010/Crouch
ラジャスタン州で、以前児童労働で搾取されていた子どもたちと話すイケアのオールソンさん。

イケアの最高経営責任者、ミカエル・オールソンさんは、イケアが支援している事業を視察するため、この度、2週間をかけて、インドのウッタル・プラデーシュ州、ラジャスタン州、マハラシュトラ州を訪問。イケアによる1億6700万米ドルの支援がどのような成果をもたらしているか、確認してまわりました。

1990年代、各国の報道機関は、開発途上国で生産活動を行っている多国籍企業の中に児童労働を使っている企業があると伝えました。こうした一連の報道を受け、イケアは、ユニセフとセーブ・ザ・チルドレンに協力を求め、企業の行動倫理規定を確立。2000年、ユニセフとともに、ウッタル・プラデーシュ州の“カーペット・ベルト(絨毯の帯)”と呼ばれる地域で行われている児童労働の問題への取り組みを始めました。

「このウッタル・プラデーシュ州で始まった児童労働問題に対するイケアの取り組みは、現在までに、インドを中心とした地域の1億人の子どもと女性たちの生活を改善するための取り組みに広がっています。」 The IKEA Social Initiative統括部長、マリアン・バーナーさんはこう話します。

ウッタル・プラデーシュ州を視察中、オールソンさんは、「子ども内閣」のメンバーと面会。色のついた紙の星が並んだ紐で飾られて、魔法にかけられたように様変りしたブットとバフラの教室も見学しました。教室では、英語とヒンディー語でかかれた教材用のフラッシュカードや、数学用の教材が壁の格子からかけられていて、子どもたちは、自分の目線のより近くで、こうした教材を見ることができます。

「感動的な」訪問
© UNICEF/2010/Crouch
ラジャスタン州で子どもの保護のために活動するメンバーと一緒に座るイケアのオールソンさんと、ユニセフ・インド事務所カリン・ヒュルスホ代表(右)。

壁には、インドの国旗やトラ、クジャク、蓮の花の絵が描かれていました。子どもたちは、部屋中に置かれたま新しい黒板で、文字を書いたり、算数の問題を解いたりすることができます。

オールソンさんは、青いシャツとグレーのズボン(男の子)かスカート(女の子)の制服を身につけた1年生と2年生の子どもたちの輪の中に入りました。子どもたちは、フラッシュカードで遊んだり、文字や単語を読み上げたりしていました。

オールソンさんは、彼のために子どもたちが歌を歌い、詩を朗読してくれたことに大変喜び、子どもたちに次のように呼びかけました。「教室に招いてくれて、本当にありがとう。」「勉強を続けてください。皆さんから素晴らしい刺激をもらいました。」

「この参加型の教育法は、子どもたちが自分のスペースで学習できるとても面白いものだと思います。」バフラ小学校のスニタ・デヴィ先生はこう話します。「以前は、私が黒板に書いて、子どもたちはそれを見ているだけでしたから。」

最も支援が必要な子どもたちへの支援
© UNICEF/2010/Crouch
ラジャスタン州ドゥーンガルプルにある新生児ケアセンターで未熟児の赤ちゃんと面会するオールソンさん。

デヴィ先生が教師になったのは、村を助けるために何かしたいと思ったからです。「45人の村の子どものうち、わずか2人が教育を受けていなくても、その子たちの生活がより良いものになれば、私の仕事は価値のあるものだと思います。」

ユニセフの教育支援事業の目的は、小学校の就学率を上げ、最終学年まで残る割合と、卒業する割合も増やすことです。特に、女の子と、社会的に弱い立場にある子どもたちに質の高い教育を提供することに力を注いでいます。

サンブハドラは、人口146万人。ウッタル・プラデーシュ州で最も大きな地域のひとつです。人口の約65パーセントが貧困ラインを下回る生活を送り、42パーセントは、最も低い階級(カースト)に属します。6歳から14歳までの学年齢期の子どもたちのうち14パーセントは、学校に通っていません。

ユニセフの子どもに優しい学習アプローチでは、コミュニティも、積極的に学校の運営に参加しています。子どもたちの親や教員、そして子どもたち自身が、それぞれ役割を果たすことで、全ての子どもたちが質の高い教育を受けられるよう、良い変化が生まれています。

変化を生むために

ギャネシュ・シャンカル・パンデイさんは、2年前に販売の仕事を辞め、ブット小学校で大きな情熱を持って教えています。パンデイさんは、人形やマスク、麦わら帽子といった楽しい道具を使って、6歳から7歳までの子どもたちに勉強を教えています。パンデイさんが恐竜のおもちゃを使って授業をしたときには、子どもたちは、歓声を上げて大喜び。パンデイさんが近づくと、子どもたちは怖がるふりをしてパンデイさんから逃げ回っていました。

パンディさんのこの楽しく教育的でもある手法のお陰で、子どもたちも熱心に計算や歌、ダンスを学習しています。子どもたちは、耳たぶをひっぱったり、楽しそうに先生のまねをしたりしていました。

パンディさんは、こう語ります。「この教え方をはじめてから、子どもたちは、とても熱心に学習するようになりました。」「子どもたちのやる気は増し、集中する時間が増えて、さらに熱心に勉強するようになるのです。」

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