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公益財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

インド:ポリオ根絶へ!

【2012年1月12日 ニューヨーク発】

長年、ポリオの流行地域の一つとして認識されてきたインドで、今、ポリオ根絶の歴史が刻まれようとしています。

明日(13日)で、インドでは、ポリオの感染症例が1年間にわたり1例も確認されなかったことになります。これは、ポリオの感染症例が確認されない期間としては、インドでは最長の記録です。現在実施されている、(国内各地から集められたポリオと疑われる症例の)検査の結果が全て陰性であれば、インドは、WHO(世界保健機関)のポリオ感染国リストから除外されることになります。

これは、国際社会によるポリオ根絶に向けた取り組みの大きな勝利です。大変画期的な成果であり、この国の医療の歴史に、大きな一ページを飾るものであることは間違いありません。

驚くべき成果

© Amazonas Images/Salgado
2001年、ムラーバーダードにあるダドゥパル村では、保健スタッフが一軒一軒家を回って子どもたちの予防接種を呼びかけた。予防接種を受け終わった家庭にはチョークで印が付けられた。

インドは、過去数十年にもわたり、野生株ポリオウィルスの保菌国のひとつでした。2009年には、ポリオに感染した子どもの数が最も多い国にもなりました。

しかしながら、この国の無数の保健スタッフたちは、ポリオ根絶のために粘り強く熱心に活動を続け、そうした不断の努力が、ポリオ撲滅への新たな希望となり、またその活動への関心を高めました。最も厳しい環境にある農村地帯にも、たくさんのボランティアの方々が出向き、電車やバスも通っていない、市場もないような場所に暮らす人々への予防接種を実施しました。

「インドの成功は、最も困難な環境にあっても、ポリオの根絶は可能だということを証明しました。事実、インドでは、こうした最も困難な地域に焦点を絞って予防接種活動を続けたことにより、この感染症を根絶することができたのです。」 ユニセフのアンソニー・レーク事務局長はこう話しました。

この大きな成果を生むために、多くの努力が費やされました。2011年の1年間に、約9億人分の経口ポリオワクチンが、8,500人の保健スタッフなどの手によって投与されました。また、2回実施された全国一斉予防接種キャンペーンを通じ、最も感染リスクが高い地域に住む7,000万人にもなる子どもたちをはじめ、総計で1億7000万人を超える5歳未満の子どもたちが、数回にわたって予防接種を受けました。こうして、その“努力”を数字にすると、スケールの大きさがお分かりいただけるでしょう。

レーク事務局長は、インド政府の強力なリーダーシップが成功の鍵だったと語ります。インド政府は、包括的なポリオの根絶プログラムをスタートさせ、ウッタル・ プラデーシュ州やビハール州といった極度の貧困、また人口密度が高く、トイレや社会インフラの整っていない、ポリオのような伝染性のつよい感染病の菌が保菌されやすい地域で、高い予防接種率を維持し続けました。

強力なパートナーシップ

インドのポリオ根絶プログラムは、ユニセフとインド保健家族福祉省、WHO(世界保健機関)の国際ポリオ調査プロジェクト、国際ロータリー、米国疾病対策センターをはじめ、多くのパートナーの協力と支援、そして努力の賜物です。ユニセフはワクチンを提供するとともに、物流面の統括、そして予防接種キャンペーンを展開する際の一般の方々への広報・宣伝・啓発活動などの面で主導的な役割を果たしてきました。

ユニセフ親善大使のアミターブ・バッチャンさんはじめ、“ボリウッド”の名で知られるインド映画界の有名俳優たちも、ユニセフと共にこの根絶プログラムに協力。テレビやラジオCMで、子どもたちに予防接種を受けさせるようお父さんやお母さん方に訴えたり、実際に予防接種の実施現場を視察。様々な公の場でこの問題を取り上げ、予防接種キャンペーンへの関心や参加の醸成に貢献してくださいました。バッチャンさんは、先月スタートした新たな予防接種キャンペーンの中で、ポリオをインドの過去の歴史にするための協力を訴えてくださったばかりでした。

「パートナー団体は、技術的な協力だけでなく、人材の確保や資金面でも協力してくれています。」「しかし、インド政府の役割は特別なものでした。インドの文化的背景の中でポリオ根絶プログラムを推進させるために、非常に積極的な役割を果たしました。国、州、地域、それぞれのレベルで、政府が主体的に動いてくださいました。また、インド政府は、このプログラムに対し、資金と人員の両方で、他国に類のないほど大きな貢献をしてくださいました。」ユニセフのジェフリー・ベイツ保健事業担当官はこう話します。

全ての子どもたちがポリオの予防接種を受けるという大規模な事業に人々の関心を集めるため、ユニセフ親善大使であり有名なブラジルの写真家のセバスチャン・サルガドさんは、2003年、ポリオ撲滅のための取り組みを、著書『The End of Polio: A Global Effort to End a Disease(ポリオの終焉:病気を撲滅するための世界の取り組み(仮訳))』にまとめました。

「ルワンダの虐殺、ヨーロッパ南部の民族浄化、アフリカ北部の飢餓など、様々な場所で悲惨な状況を目撃してきました。こうした状況は、圧倒的に、人間の手によって生みだされてきたものです。」「(しかし)ポリオ根絶のために多くの人々が払ってきた多大な努力は、私に、将来への希望を与えてくれました。そして、改めて、どんな難題でも解決できるのだという信念を新たにさせてくれました。」(サルガドさん)

ポリオの一掃

ポリオ根絶まであと一歩という状況の中、一度根絶が宣言された国や地域にポリオが再来する可能性は皆無ではありません。ポリオ根絶が宣言されようとしている今、近隣国のパキスタンやアフガニスタンからウィルスが再伝播されることを防ぐことが、インドの次の課題です。パキスタンとアフガニスタン、そしてナイジェリアは、現在、ポリオの感染例が確認されている唯一の国々です。2011年、パキスタンとアフガニスタンでは、ポリオの感染者数が急増しました。そして、1999年までポリオの感染が確認されていなかった中国で、再伝播が確認されたのです。

世界のどこであっても、ポリオは全ての子どもたちに危険を及ぼします。インドでの前進は、技術や社会的な問題を乗り越えてポリオを根絶することが可能であることを示しました。

「ポリオをはじめとする感染症に対する予防接種の効果は絶大です。このような恐ろしい病気を解決する素晴らしい方法です。」「ですから、いまだに、予防接種を受ける機会のない子どもたちがいるということは、非常に深刻な問題なのです。」ユニセフのギータ・ラオ・グプタ副事務局長はこう話しました。

「私たちには、完全に予防することができる感染症から、困難な立場にある全ての人々、特に子どもたちを守ることができるのです。」「私たちには手段があります。ですから、世界中で、ポリオの根絶を達成しなければなりません。」(レーク事務局長)

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