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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

インドネシア:「妊婦への案内状」キャンペーン

【2010年7月22日 インドネシア発】

© UNICEF Indonesia/2010/Purnomo
インドネシア東部ティドレにある診療所でナフィアさんの診断をする助産師のシチ・サラさん。

ナフィサさん(30歳)は、4人の子どものうち2人を1歳になる前に亡くしました。その2人の子どもたちは高熱を出し、ナフィサさんは地元の診療所に連れて行きました。「子どもたちは助かりませんでした。とても悲しかったです。」

現在、ナフィサさんは、再び妊娠しています。しかし、今回生まれてくる赤ちゃんは健康に生まれてくると信じています。というのも最近、ナフィサさんは、ティドレにある妊産婦診療所で検診を受けるための案内状を受け取ったのです。

読み書きができないナフィアさんは、隣人にその案内状を読んでもらいました。診療所に行ったのはちょうど良いタイミングでした。そこで村の助産師、シティ・ファラさんの検診を受けたとき、血液中の赤血球濃度が非常に低下していることが分かったのです。これは、深刻な貧血の兆候を示すもので、妊娠中に命に関わる合併症を引き起こしかねないものでした。

「薬をもらって、たくさんの野菜と魚を食べるように言われました。」(ナフィサさん)

名誉なこと

© UNICEF Indonesia/2010/Purnomo
ユニセフからの正式な検診の案内を持って、インドネシアのティドレにある地域の診療所で、妊産婦検診を受けるナフィアさん。

ファラさんと、他の二人の保健員は、妊娠している女性たちに検診を受けに行くよう呼びかける公式の案内状を送るという、ユニセフが支援しているキャンペーンを推進しています。このキャンペーンは、ファラさんたちが、2008年にユニセフが開催したワークショップで、「妊婦への案内状」キャンペーンとして企画したものです。

インドネシア群島から遠く東部に位置する小さな島、ティドレは、経験豊かな助産師が不足していたため、このキャンペーンによって大きな変化がもたらされました。

「私たちの社会では、案内状を受け取ると、敬意を示されていると感じます。名誉なことです。」ティドレ島保健事務所の代表、ハルン・コナラス医師はこのように話します。「この取り組みは、妊婦検診の受診を促す画期的な方法です。」

妊産婦の保健における格差

© UNICEF Indonesia/2010/Purnomo
インドネシアのマルク島に位置するグラバチ村に暮らすファーリア・ムスタファさん(29)と娘のアイシャちゃん。

インドネシアでは、毎年約2万人もの女性が、妊娠に関係する合併症で命を落としています。これは、アジアの中で最も高い割合です。

最新の調査では、インドネシアにおける出産の70パーセント以上は、経験のある医療従事者が立ち会っていると報告されています。また、この割合は、地域によって大きな格差があることも明らかになりました。首都ジャカルタでは、経験のある医療従事者が立ち会う割合は97パーセントに上るのに対し、ティドレのあるマルク諸島ではわずか33パーセントに留まっています。

ティドレ島の妊産婦と新生児の保健担当官のスクマ・アルバンジャルさんは、これまで、「ドゥクンス」と呼ばれる伝統的な助産婦に頼っていたことが、農村部の妊産婦の保健を改善する取り組みを複雑にしていたと話しました。ユニセフはこの問題に対処するべく活動しています。

伝統的な助産婦と地元の助産師の新たなパートナーシップによって、現在、伝統的な助産婦が、直接出産に立ち会うことはありません。代わりに、伝統的な助産婦たちは、経験豊かな助産師や医師を紹介しています。また、伝統的な助産婦たちは、このキャンペーンで配られている案内状を届ける手助けもしてくれています。

「このパートナーシップを通して、経験豊かな保健員が立ち会う出産の割合は、100パーセント近くに達しました。」ファラさんはこのように話します。「また、今までのところ、わたしたちの村で、出産時に命を落としたお母さんはひとりもいません。」

悲劇を避ける

アルバンジャルさんは、ナフィサさんの例は、このキャンペーンがシンプルだがいかに効果的であるかを示すものだと指摘します。「このキャンペーンがなければ、保健員が不足しているこの島で、ナフィサさんのような女性に手を差し伸べることはとても難しいことだったでしょう。」

ナフィサさんも、5回目の妊娠は、亡くなった二人の子どもたちのような悲劇はおきないと確信しています。

「案内状を受け取って、とても誇らしく、嬉しかったです。」その時のことを思い出して、ナフィサさんは満面の笑みを浮かべながら話します。「赤ちゃんが健康であることを祈っています。」

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