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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ユニセフ・カザフスタン事務所 久木田純代表 帰国報告
「子どもに優しいまち」への取り組み

【2013年8月27日 東京発】

© UNICEF/NYHQ2011-0978/Giacomo Pirozzi
東カザフスタンにあるファミリーセンターで絵を描いている女の子。

中央アジアに位置するカザフスタンで活動を行っている久木田純氏が一時帰国されました。休暇の間にユニセフハウスを訪問され、現在、ユニセフ・カザフスタン事務所が取り組んでいる活動についてお話くださいました。

■「子どもに優しいまち」認証制度

ユニセフはカザフスタンで「子どもに優しいまち」の認証制度づくりに2006年から取り組んでいます。カザフスタンの人口は1600万人。そのうち、510万人が子どもです。「子どもに優しいまち」とは、子どもの権利が守られ、子どもたちの意見を大切にし、子どもの持てる潜在能力を最大限に発揮できる環境づくりがされたまちのことを示します。そのまちづくりの作業は“子どもに優しい”という概念について、政府や現地の人々とともに基準を定めていくことから始まります。議論することで人々が子どもたちの幸せについて考え、自国の課題としての意識を持っていきます。

© UNICEF/NYHQ2011-0991/Giacomo Pirozzi
ユニセフが周産期ケアのトレーニングサポートをしている母子保健センターでは未熟児への対応が進んでいます。

「子どもに優しいまち」づくりが取り組まれている東カザフスタンを例に、年ごとの結果を追ってみると、2007年には「子どもに優しいまち」の試験プロジェクトとして学校規模の取り組みである「子どもに優しい学校」を7つの学校で実施しました。2008年には、東カザフスタン市とユニセフが協力に合意し、ユニセフは市の行政とともに「子どもに優しいまち」づくりを始めました。その年には、ファミリー・サポート・センターが設立され、若者への支援やホットラインが子どもたちに広められる活動が行われました。翌年は、2009-2014年の期間でどのような目標をクリアすべきかといった戦略が立てられました。子どもたちのための予算の確保、インフラの整備、環境、教育、障がいのある子どもたちへの支援、効果測定など、各分野での具体的な達成目標が設定されました。2010年以降も、ヘルスケアセンターの設立、「子どもに優しいまち」についての全国規模のフォーラムの実施、里親制度の導入などが実施されました。そして昨年2012年には、目で見てわかるほど環境が改善され、子どもを対象にした調査でも、安心できる、また満足できる生活環境だという好結果が得られました。現在は、大統領府と協力して新しい国際基準を用いた「子どもに優しいまち」の認証制度をつくっています。

■子どもたちが直面していた問題

「子どもに優しいまち」づくりが実施される前のカザフスタンには、次のような問題がありました。

  • 未就学児施設の不足 ・家族と子どものためのレクリエーション施設の不足
  • 障がい者のための施設の不足 ・家族関係の希薄化 ・蔓延する犯罪
  • 自然と都会環境の快適化 ・子どもの参加が進んでいない
© 日本ユニセフ協会

このように多岐にわたって課題が積まれていました。国は、今も一つひとつ問題を解決していこうと行動しています。時には解決を進めることで、新たな課題が生まれるということもあります。それをアドバイスするのが、我々の役割でもあります。

カザフスタンは、子どもの自殺率が高い、ソ連からの独立後、行政のさまざまな制度が整っていない、各サービスが結びついていない、また、養育遺棄により孤児となる子どもが多いといった面も抱えています。しかし、カザフスタンの人々には、真剣で、結果を出すことへの責任感がある国民性や、世界でうまくいった例など、他国のものを取り入れて自己をよくする文化があります。「子どもに優しいまち」づくりにおいて、この国民性、特に国全体の価値と競争力を高めたいという政府の思いが大きな成長を生みました。ユニセフは国の将来は子どもにある、国の行う投資をどこにするかでその国の未来が決まると訴えていますが、カザフスタンは国としてもこの意見に賛同し、子どもへの投資を優先課題とすると宣言しています。首都アスタナで2017年に万国博覧会が開かれることもあり、政府は世界に誇れる国にしたいと努力しています。

■ 日本におけるまちづくり

日本でもいかに「子どもに優しいまち」をつくるかということは重要だと思います。特に東日本大震災の影響を受けたところは、これを機会に子どもに優しい環境をつくり出すことはチャンスにつながると思います。カザフスタンもソ連時代の核実験などで一番被害を受けた場所だからこそ、いいところにしようという考えができているんだと思います。震災支援活動の中で日本ユニセフ協会が進めている「子どもに優しい復興計画」にも期待しています。

© 日本ユニセフ協会
◆報告者プロフィール◆

久木田 純(くきた じゅん)
ユニセフ・カザフスタン事務所代表
西南学院大学文学部卒、シンガポール国立大学社会学部留学、九州大学大学院教育心理学修士、同博士課程進学。1986年よりユニセフ・モルディブ事務所にJPOとして派遣され、ユニセフ駐日事務所(リエゾン・オフィサー)、同ナミビア事務所(参加型コミュニティー開発担当)、駐日事務所(副所長、外務省、JICAとの事業協力、資金調達を担当)、バングラデッシュ事務所(副所長)、ニューヨーク本部事業資金部・上級アドバイザー、ユニセフ・東ティモール代表などを経て、2011年より現職。

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