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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

モルディブ:女性や女の子に対する暴力の増加問題

【2012年10月23日 モルディブ発】

© UNICEF Maldives/2012/Madhok
現在21歳になるハアワさん。ユニセフは、子どもの保護についての啓発を高めるための政策策定に協力し、女の子に対する暴力の問題に取り組むモルディブ政府を支援している。

ハアワさんは、17歳の時、5人の男から性的暴行を受けました。加害者の男のうち、3人は顔見知り。そのうちの一人は、とても中のよい友人でした。

暴行の様子は動画で撮影され、ハアウさんは、このことを誰かに話したら、この動画を公にして殺すと脅されました。

また、アイシャさんは、16歳の時、友人の誕生日パーティーで性的暴行を含む暴力を受け、家族や警察にこのことを話したら殺すと脅されました。

増加する女の子への暴力

モルディブでは、2008年から、女の子に対する性的暴行をはじめとするあらゆる形態の暴力が、増加の一途をたどっています。政府によると、2008年時点、196件だった子どもに対する暴力の発生件数は、2011年には261件に増加。家庭内暴力、いじめ、セクシュアル・ハラスメントの問題も増加しています。

© UNICEF Maldives/2012/Madhok
アイシャさん(16歳)は友人から暴力と性的暴行を受けた。モルディブでは、2008年から、女の子に対する性的暴力をはじめとするあらゆる形態の暴力が増加している。

ハアウさんは、現在21歳。警察に事件のことを報告しましたが、証拠が不十分なために、加害者は、いまだに逮捕されていません。ハアウさんは、自殺を試み、うつ状態に陥りました。しかし、現在、加害者が誰一人逮捕されず、裁判にもかけられていないという事実に、なんとか折り合いをつけはじめました。怖くて部屋から出られなかった日々に戻りそうになる時もありますが、このつらい経験に終止符を打ち、ハアウさんは、少しずつ前に進むことを決心しました。

一方、アイシャさんは、2,3人の親しい友人以外には、事件のことを誰にも話しませんでした。アイシャさんも自殺を試み、うつ状態に苦しみました。繰り返し悪夢に襲われ、学校も、授業に集中できなくなり、中退。アイシャさんは、プロの歌手になるという夢について話す時、軽く微笑みます。しかし、彼女の瞳には、苦しみと怒りが漂ったままです。

政府の取り組みを支援

ユニセフは、政府と密接に協力し、この問題に取り組んでいます。モルディブのジェンダー・家族・人権省の主導の下、子どもの虐待防止プログラムを展開。また、ユニセフは、子どもの保護についての啓発を目的とする3ヵ年計画の策定も支援しています。

また、ソーシャルワーカーの能力強化と研修を実施。こうしたソーシャルワーカーは、子どもの保護に関する広報活動をはじめ、要請があれば第3者として介入したり、虐待を受けた子どもたちの代替養護(ケア)についても提言しています。警察官は、子どもに優しい対応について、研修を受けています。

ジェンダー・家族・人権省のアイシャス・ラメエラ大臣は、女性や女の子に対する暴力の増加を認識し、加害者から女性と子どもたちを守るための避難場所として、安全な‘家’を設置することが最優先課題だと話しました。

「さらなる共同事業がスタートしました。警察とコミュニティの関係機関は、女性と女の子に対する虐待や暴力に対する報告を、迅速かつ効果的に、そして適切に行うために取り組み始めたのです。社会サービスに携わるスタッフの大規模な実務研修が行われ、被害者やその家族に対する適切な振る舞いや知識、技術を包括的な形で学んでいます」(ラメエラ大臣)

ユニセフ・モルディブ事務所のゼバ・タニビル・ブカリ代表は、次のように話します。「この子どもの問題を、後回しにすることはできません。子どもたちの中でも特に最も弱い立場にあるのは、多くの農村部、そして貧困地域に暮らす声を上げることのできない女の子たちです。こうした女の子の問題は、責任を担うべき我々が一帯となって、人権的な観点から取り組まれる必要があるのです」

本文中の子どもの名前は全て仮名です。

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