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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ネパール:未来を翻弄する政治に”NO”を突きつける子どもたち

【2012年5月25日 ネパール発】

若者たちは、ネパールの伝統的な歌と踊りである「デウダ」を踊った。歌は、アチャム郡で若者たちが直面する問題を歌にしたもので、若者たち自身が作詞したものであった。
© UNCEF Nepal/2012
ネパール東部ビラートナガルのデモ行進には、約250人の子どもたちが参加。教育を受ける権利を守るよう訴えた。

‘勉強の機会を’と書かれた横断幕を背に、約250人の制服を着た子どもたちが、ネパール東部のビラートナガルにある中央市場周辺をにぎやかに行進していました。

スローガンを叫びながら、ベルを鳴らし、笛を吹き、金属製の調理器具等をガチャガチャと鳴らしながら行進する子どもたちの手には、‘学校をピースゾーン(平和地帯)にしよう’‘私たちは“未来”(を担う存在)だけではありません、“今”(を生きる存在)でもあるのです’‘学校を休校させないやり方があるはずだ’といったメッセージが書かれた横断幕が掲げられています。

現在、新憲法の制定を巡って繰り広げられている‘バンダ’と呼ばれる政治的ストライキにより、ネパール中の道路が遮断され、国中のビジネスがストップし、学校が休校しています。子どもたちは、こうした状況に異議を唱えるために、モラング地区とビラートナガル市の勤労児童クラブネットワークの活動の一環として、今回のデモ行進を企画しました。

「バンダの実施を呼びかけた政党や政治グループは、学校を休校させて、私たちの未来をもて遊んでいるのです」「それに、バンダのせいで、私たちの親も働くことができず、生活費を稼ぐことができません」 こう話すのは、勤労児童クラブ地方調整委員会の秘書補佐を務めるニラジ・マラさん(12歳)です。

学校休校への抗議

今回の抗議活動の一環として、子どもたちは、ストライキのせいで車が通っていない、普段は交通量の多い道路に1時間半近く座り込み、そこで学校の‘授業’を開きました。

‘授業’を見に多くの人々が集まると、子どもたちは、新しい憲法は、「子どもの権利」を保障する内容になることが重要だと話し始めました。また、学校を、まさに今、ネパールの人々の生活の様々な面に影響を与えている政治的紛争に影響されない‘平和地帯’にするよう訴えました。

「バンダが始まってから、もう2週間になります。」「日雇いの仕事で生活している多くの家庭が、子どもたちを食べさせることに苦心しています。政治に携わる人々は、バンダではなく、話し合いや交渉を通して問題を解決するべきです」 勤労児童クラブ地方調整委員委員長のマニシャ・カルキさんはこう語ります。

マニシャさんは、また、こうした学校の休校が子どもの教育を阻害し、子どもたちの発達と将来に害を及ぼす恐れがあると語ります。

ディリィ・ディマルさんは、この集会で唯一発言したおとなでした。「みなさんの周りを見てみてください。学校にいるべき子どもたちが、テレビの前で大半を過ごし、町をうろついているのです」と彼は訴えました。

‘授業’の様子を見ていた人々は、子どもたちの意見に賛同しました。

ある男性は、こう話しました。「一方では、子どもたちの教育は、こうした政治的ストライキによって翻弄されていますよね」「でも、他方では、私たちは学費を支払っているわけで、(学校が休校されているために)使われていないそのお金は、どうなっているのですかね?」

若者のリーダーに力を

この‘勤労児童クラブ’は、家計を助けるために仕事をしなければならない子どもたちのためのグループです。このクラブは、こうした境遇に置かれた子どもたちが、自らの経験を分かち合える機会を作るために創設されました。その後、各地につくられたクラブのネットワークが作られ、就学や子どもに対する暴力、ジェンダーの平等といった子どもたちに影響を与えている問題について、子どもたち自身が啓発活動を行えるように、様々なサポートを提供しています。

ビラートナガルの複数の勤労児童クラブが、学校の休校に抗議することを決めたとき、子どもたちは、ユニセフのパートナー団体の地元NGO、人権・環境フォーラム(FOHREn)に、この計画を共有しました。FOHREnは、子どもたちのイニシアティブを尊重しながら、横断幕の製作をサポートし、メガフォンや軽食などを提供しました。

ユニセフは、FOHREnと密接に連携しながら、過去10年以上にわたり勤労児童クラブを支援。子どもたち自身が、(様々な課題の克服のための活動を)自らリードする力を養い、「子どもの権利」を啓発するための取り組みを支援しています。また、勤労児童クラブのメンバーは、ビラートナガルが、2015年までに ‘子どもにやさしいまち’となるために、重要な役割を果たしています。ユニセフも、この目標に向けた取り組みを、ビラートナガル当局と一緒に進めています。

今回の子どもたちの抗議行動は、地元の一地区の勤労児童クラブを代表するスマン・シャーさんの次のような歌で締めくくられました。「みなさんに訴えます・・・私たちの学校を閉めないでください。店を閉めないでください。私たちが大きくなって、教養を身につければ、私たちは、国のために奉仕します。私たちは、この国の子どもです。(この国の)将来は、私たちの肩にかかっているのです」

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