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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ナイジェリア: トイレ問題を解決したある発明品とは?

【2013年7月3日 ベヌエ(ナイジェリア)発】

ナイジェリア中東部のベヌエ州で、大工を営むマーティン・デワン・アヨさん。マーティンさんが考えたある発明品が、村々のトイレ問題を解決しています。

大工のマーティン・デワン・アヨさんは、家財道具以外にも新たなものを作り始め、手ごたえを感じています。マーティンさんが作っているのは、1時間ほどで作れる簡易な通気性のあるトイレのふた。このふたが、マーティンさんの村の人々の暮らしを大幅に改善しています。

今ではマーティンさんが暮らすイオルップのほとんどの家庭でマーティンさんがつくったトイレのふたが使われており、最近では近くの村の家庭でも、このふたが使われはじめました。

イオルップには116世帯が生活しています。この村は2011年12月に “コミュニティ主導による包括的な衛生プログラム(CLTS)”に参加しました。このプログラムは ユニセフやナイジェリア政府、そしてイギリスからの支援によって運営されている「ナイジェリアにおける水と衛生プログラム」の一環です。

水と衛生プログラムを地域に広げるには、まず「トリガリング(引き金)」と呼ばれる段階から始まります。地域住民たちは、始めに、正しい衛生習慣を行うことによって得る効果について学びます。その後、地域で手に入る資材や材料を使って、各家庭ごとに自分たちのトイレのふたを作ります。ここイオルップは2008年のプログラム開始以来4500を超える「屋外排泄ゼロ」を宣言した村のひとつです。

マーティンさんのトイレのふたは「女性が家庭にあるトイレを使いたがらない」という問題を解決するために開発されました。

必要は発明の母

© UNICEF Video
トイレのふたはゴキブリやハエの侵入を防ぎ、熱気を外へ逃がす優れものです。

トイレのふたは、木またはプラスチックでできており、ハエやゴキブリの侵入や、においが漂うことを防ぎます。しかし、ふたをすると、トイレ内に熱気がこもります。プログラムのコンサルタントであるステラ・イフェオマ・オカフォーさんは、女性たちがトイレを使うのをためらうのは、この熱気によって感染症に感染すると思っているからだと考えています。

村では、屋外排泄は行われていませんでしたが、水と衛生に関して話し合いは行われていませんでした。最近になって、水と衛生の問題を話し合うために、水と衛生の委員会が設けられ、話し合われるようになりました。すると、多くの女性から「トイレにこもる熱気がいやでトイレを使いたくない」という意見が寄せられました。委員会では対応策の検討を重ね、大工であるマーティンさんにある依頼することに決めました。

マーティンさんは、通気性があり、ハエやゴキブリの侵入を防ぐふたを作ることを依頼されました。「最初は金網で作ってみました。でも、使い続けるうちに錆びてしまうことがわかりました。そして、木の枠にきっちりとはめ込まれたプラスチックのネットを使ってつくったんです」と話しました。

委員会がこのデザインを採用したところ、マーティンさんにはトイレのふたの注文が殺到し、生産が追いつかないほどです。価格はひとつ500ナイラ(約2.50米ドル)。住民のほとんどが農家であるこの村でも、手の届く価格に設定されています。「今や、イスや屋根などは値上がりして購入できない人もいます。しかし、トイレのふたは、ほとんどの人が買える値段です」とマーティンさんは語ります。

コミュニティー主導で、病気の感染を予防

2012年に行われた複数指標クラスター調査(MICS)によると、2011年時点で、ナイジェリア国内人口では、改善された衛生設備(トイレ)を利用することができるのはわずか31%、清潔な水を利用できるのはたった58.5%にとどまりました。農村部に住む人々は都市部にすむ人々にくらべ、改善された衛生設備を利用できる割合が1.5倍低くなっています。また、最も貧しい層の家庭は最も裕福な家庭に比べ、改善された衛生設備を利用できる可能性が5.3倍も低いという結果がでました。

ナイジェリアの貧しい家庭のほとんどは、農村部に住んでいます。インフラ設備が整っていない農村部では、幼い子どもたちを下痢などの病気から守るため、自ら生活環境を衛生的にし、維持するコミュニティー主導のプログラムが欠かせません。

水と衛生委員会と、マーティンさんの低コストの発明品は、このようなコミュニティ主導の草の根活動において大きな成果を見せています。「住民が主体的に取り組めば、支援を受けられなくても、外部からの指導がなくても、持続可能なのです」とステラさんは話します。

改善のきざしをみせてきた人々のくらし

ユフミア・ピーヴァー・ングシィールさんは、さや豆の木の下に腰掛けています。「トイレにふたをしてから、ハエが顔のまわりを飛んだり、食べものにとまったりすることがなくなったんです。子どもたちを病院に連れていくことも減り、医療費が減りました」 1歳7ヶ月になる娘の母親であるングシィールさんがトイレにふたをする成果を語ります。

マーティンさんの発明品の評判は、近隣の村にも届きはじめています。マーティンさんによって何よりも幸せなことは、自分が作るトイレのふたで、村の環境が改善していくのを見られることなのです。

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