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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ナイジェリア:
1,050万人以上が学校に通えず、大半は女の子
質の高い無償の義務教育をアフリカのすべての子どもたちに

【2014年6月13日 ナイジェリア・トロ発】

「女の子の教育プログラム」の支援を受けている小学校に通うナイラトゥさん(12歳)。将来の夢は、医者になること。
© UNICEF NYHQ/2014/Esiebo
「女の子の教育プログラム」の支援を受けている小学校に通うナイラトゥさん(12歳)。将来の夢は、医者になること。

ナイジェリアでは1,050万人以上の子どもたちが学校に通っていません。その多くは、ナイジェリア北部で暮らす女の子です。ユニセフは女の子が教育の機会から取り残されないようにするための支援や、教育の重要性について両親の認識を高めるための活動を行っています。

* * *

カシム・リーマン・トロさんは12歳の娘、ナイラトゥさんが将来の夢について語る姿を、誇らしげに見つめて笑顔をみせています。ナイラトゥさんの夢は、医者になることです。

「娘が夢を叶えられるよう、命尽きるまで、心からサポートします」と話すトロさん。自身の名前と同じ、ナイジェリア北西部の小さな街トロにある家の外に座りながら語ります。

トロさん自身、成人対象の読み書きのクラスに参加するまで、文字の書き方を学ぶことはありませんでした。けれども、15人いる自分の子どもたち(うち11人は女の子)全員に、質の良い教育を受けさせていると、トロさんは語ります。

かつて政府庁舎で電報配達人として勤務していたトロさんは、家の近くにある土壁や網枝で作られた建屋で、伝統的なコーランの学校を運営しています。

「自分の子どもだけでなく、近所の女の子がきちんと学校に通っているかも確認しています」と、トロさんが笑顔で語ります。

宗教指導者も協力して行う啓発活動

先生からの質問に答えるナイラトゥさん。
© UNICEF NYHQ/2014/Esiebo
先生からの質問に答えるナイラトゥさん。

ナイラトゥさんはコーランを読み上げながら、細い木で黒板のアラビア語の文章をたどっていきます。トロさんは娘のナイラトゥさんのように、コーランの授業に参加している学齢期の生徒全員が政府の学校にも通っていると語ります。

トロさんのように地域でも尊敬を集める住民は、特に女の子が公式の教育を受けることに対する反対の声が高い地域で、住民の認識に変化をもたらす、大きな役割を担っています。コーランを学問として勉強したトロさんは、地域の親たちに絶大な影響力を持っています。

ナイジェリア北部の多くの子どもたちは、コーランの暗記や朗読などを行う、コーランの学校に通っています。しかし、基本的な算数や読み書き、ライフスキルなどは学ぶことができません。

学校に通っていない子ども、多くは女の子

コーランの学校を営む父親、トロさんに授業で習ったことを伝えるナイラトゥさん。
© UNICEF NYHQ/2014/Esiebo
コーランの学校を営む父親、トロさんに授業で習ったことを伝えるナイラトゥさん。

ナイジェリアの学校に通っていない1,050万人の子どもたちの60%は、北部の出身で大半は女の子です。

「依然として子ども、特に女の子を学校に通わせることに反対する人たちもいます。これは西洋の教育に対する不信感だけでなく、教育の重要性に対する認識の低さや教育の質が十分でないことが原因です」と、ナイジェリア北部・バウチ州のアブドゥライ・カイカイ現場事務所代表が語ります。

多くの家庭は、学校に子どもたちを通わせる余裕がないのです。

ナイラトゥさんがトロにある小学校で解剖について学んでいるなか、教室の窓の外では、草原で幼い男の子が家畜の群れの世話をしています。

男の子の名前はハサムくん。「だいたい9歳ぐらい」と語ります。人見知りのハサムくんに代わって、一緒に家畜の世話をしている叔父さんが語ります。「ハサムは数年間学校に通っていました。しかし、父親に親せきの家畜の世話を頼まれ、学校を辞めなくてはいけなくなりました」

「子どもたちのなかには、家族の生活を支えるため、学校に来ることができない子もいます」と、ナイラトゥさんの先生、ラミ・サミュエルさんが話します。「貧しく、子どもたちに教育を受けさせる余裕がない家庭もあります。このような家庭の子どもたちは、いくらかのお金を得るために市場に行き、簡単な仕事をしています」

女の子の教育プロジェクト

英国国際開発省の資金提供により実施されている「女子教育プロジェクト」は、教育の質の向上や、2020年までに100万人以上の子どもを新たに学校に通わせることを目指しています。また、現在農村地域は男性教師が圧倒的に多く、多くの両親が女の子たちを学校に通わせることを躊躇っています。そのため、農村地域に1万人以上の女性教師を配置するための活動も行っています。

この教育プロジェクトは、算数や理科、英語、ハウサ語、ライフスキルなどの主要教科を伝統的なコーランの学校に取り入れるための支援も行っています。出来る限り多くの子どもに教育を受けさせる努力をすると語る親も増えてきています。

女の子の教育を後押しする「母親の会」

「母親の会」でミーティングをするハディサ・アマドゥさん。
© UNICEF NYHQ/2014/Esiebo
「母親の会」でミーティングをするハディサ・アマドゥさん。

小学校の校庭で、地元の「母親の会」の女性たちが、織物のマットの上に座って、啓発キャンペーンや生徒の出席状況について話し合っています。

「中途退学する児童がでた場合、その子の家庭を訪れて両親と話をします。経済的余裕がなく、子どもを再び学校に通わせられない家庭もあります」母親の会代表のハディサ・アマドゥさんが語ります。「私たちが使える資金は十分ではありませんが、経済的に余裕がない家庭の女の子たちに鉛筆や必要な学用品を購入し、学校に通えるよう、出来る限りの支援をしています」

「女性として、女の子たちが教育の機会から取り残されている現状に、何か行動を起こさなくてはという気持ちになります。女性も幅広い仕事ができるようになるためにも、女の子たちには教育を受けてほしいのです。私たち女性が働いたり教育を受けることに、抵抗を示す男性もいます。多くの男性は、女の人に職場に出かけたり、働いたりしてほしくないと思っていますから。女の子たちが教育を受けることの重要性について、男性とも話をして理解を高めるようにしています」(アマドゥさん)

ナイラトゥさんは、一生懸命勉強することに決めたと語ります。

「私が将来医者になるためにも、教育はとても大切です。たくさんの人を助け、お母さんやお父さん、兄弟や姉妹の力にもなりたいと思います」

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6月16日は「アフリカ子どもの日」。2014年のテーマは、「子どもにやさしく、質の高い無償の義務教育を、アフリカのすべての子どもたちに」です。

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