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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

パレスチナ自治区ガザ:
塩分濃度の高い水、脱塩化で安全な飲み水に
ユニセフと日本政府が支援

【2014年1月14日 パレスチナ自治区・ガザ発】

© UNICEF State of Palestine/2014/ElBaba
ラファの脱塩化プラントに設置されている蛇口から水を飲む男の子

水の供給が十分ではないパレスチナ自治区のガザでは飲料水は高価なうえ、水質も決して良いものではありませんでした。しかし、日本政府やユニセフの支援のもと新しく建設された脱塩化プラントにより、ガザの人々の生活に劇的な変化がもたらされました。

ヌセライト難民キャンプに住むラマダン・アル・エサウイさんは、ボトルやタンクを何個も抱えて難民キャンプの狭い路地を通り、2日に1度、業者のもとに水を買いに出かけていました。たくさんの水を運ぶため、4人の子どもたちも一緒です。アル・エサウイさん一家は、1か月に10米ドル相当のお金を水の購入に充てていました。資金繰りに苦しい家庭にとっては、大きな出費です。

「水道水は塩分が強くて、とても飲むことはできません」と、アル・エサウイさんが話します。そのため、アル・エサウイさん一家は、入浴と洗濯以外には、水道水を使えませんでした。

「仕事に就いていないので、生活のためにも、子どもたちを食べさせていくためにも、できる限り出費を抑えなくてはいけません」アル・エサウイさんが話します。「最近まで、最低限の水しか買う余裕がありませんでした。子どもたちが飲んでいた水が、本当に安全なものだったのかも分かりませんでした」

家計に重い負担

© UNICEF State of Palestine/2014/ElBaba
「今までは業者から水を購入するために10米ドル近く払っていました。夫は仕事についていないので、お金を稼ぐのに苦労しています」サブリーン・アル・エサウイさん(29歳)は現在、新しく建設された脱塩化プラントから飲み水を得ることができるようになりました

ガザの水問題は極めて深刻です。この地域の帯水層から得られる水の90%以上は、飲料水としての安全性が保たれていません。そして、民間の業者が販売する水の40〜50%は汚染されたものだと推測されており、決して質の良いものではありません。ガザの5人に4人以上は、適切な規制がとられていない民間の業者から水を購入しています。すでに貧困に陥っている家庭にとって、大きな負担です。

「収入の3割を、水の購入に充てている家庭もあります」と、功刀純子(くぬぎ・じゅんこ)ユニセフ・パレスチナ事務所特別代表が語ります。

川や小川のないガザでは、これまでもずっと水の供給を沿岸帯水層に依存していました。しかし、帯水層から引いている水量が、雨などで自然に溜まる地下水量を超えているため、地中海からの海水が地下水に混ざり、水の塩分濃度が飲み水 に適さないレベルにまで上がっています。また、ガザから出る90,000立方メートルの浄化処理されていない、もしくは部分的に処理された排水が毎日沿岸の浅瀬に流れ出ています。これも水の汚染の原因のひとつです。地下水の過剰な利用により、2016年までにこの地域の帯水層が枯渇してしまう可能性も国連により指摘されています。

脱塩化プラントで、安全な飲み水を

© UNICEF State of Palestine/2014/ElBaba
ヌセライト難民キャンプの脱塩化プラントで水を汲むラマダン・アル・エサウイさん(38歳)

ガザの最も貧困に苦しんでいる人々170万人にとって、この水の問題を解決できる希望の光がさしました。脱塩化プラントと無料の公共水道ができたことにより、安全な水を得ることができるようなったのです。この地域ではすでに18の小規模な脱塩化プラントが建設されています。この大半はユニセフの支援により提供されました。

日本の政府の支援のもと、ユニセフはガザの水のような淡水と海水の混ざった半塩水の処理をすることができる脱塩化装置3基を建設しました。これは1時間50立方メートルの水を処理することができるものです。それに加え、1日に50立方メートルの水処理をすることができる装置も10基設置しました。この日本政府とユニセフの支援により、95,000人に安全な飲み水を提供することができるようになりました。

欧州連合の協力のもと、ユニセフは現在、1日に6,000立方メートルの水処理が可能になる脱塩化プラントの設置の準備を進めています。これにより、75,000人の生活が改善される見込みです。

ユニセフ・パレスチナ事務所のバイラス・ダンゴル水と衛生プログラム部長は、「脱塩化プラントは水の汚染が最も深刻な地域に建設されました。この施設を稼働させるために十分な電力や燃料も確保することができました。これは、ガザの水問題を解決する最善の方法です」と話します。物流や人の移動に対する規制下が2007年から続いているガザ地区では今、これまでで最も深刻なエネルギー危機に陥っています。

ユニセフが建設した脱塩化プラントにより、ヌセライト難民キャンプに身を寄せる15,000人の人々が安全な水を得ることができるようになりました。そして、アル・エサウイさん一家の生活にも劇的な変化をもたらしました。

難民キャンプの住民には週に1度、飲料水が提供されます。「家の貯水タンクを満杯にする量が得られるので、1週間充分にもつ量です」と、Al-Nuseirat地域のサブリ・アルファリートさんが話します。

ラマダンさんの7歳の息子、アハマドくんは、重い水のボトルを持ってキャンプを行き来するという日課から解放されました。「今までは、寒さの厳しい冬でも、夏の暑さの中でも、妹たちと遠くまで歩いて水を買いに行かなくてはいけませんでした。今は、勉強や友達と遊ぶことに時間が使えるようになってうれしいです」

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