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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ガザ地区:
安全な場所など、どこにもない

【2014年7月28日 ガザ地区(パレスチナ)発】

戦闘開始から21日目を迎えたガザでは、子どもの犠牲者が増え続けています。報道によると、これまでに殺害されたパレスチナ人は1,000人以上、そのうち約230人が子どもたちです。1日に10人以上の子どもたちが犠牲となっています。最も幼い犠牲者は、わずか生後3カ月でした。

海岸沿いの狭い土地であるガザ地区の人口の半数は、18歳未満の子どもたちです。これまでに2,000人近い子どもたちが負傷しました。

ユニセフ・ガザ現地事務所 所長のペルミル・イロンシドは「戦闘によるガザの方々への心身の影響は、言葉で言い表せません。殺害された子どもや負傷した子ども、身体の一部を失った子ども、やけどをした子ども、心底怯えている子どもたちをみてきました。戦闘による被害は、2012年の空爆時より、さらに深刻です」と述べました。

大きな喪失

ガザ南部のラファ(Rafah)でイスラエル軍の空爆で破壊された近所の家の瓦礫の中でたたずむ少年
© UNICEF/NYHQ2014-0984/El Baba
ガザ南部のラファ(Rafah)でイスラエル軍の空爆で破壊された近所の家の瓦礫の中でたたずむ少年

一時停戦の間、病院を訪れたイロンシド所長は4歳のシャイマちゃんに会いました。

「シャイマちゃんは、お母さんと兄弟を恋しがっていました。しかし、全員シェルターを探しに行ったときに殺害されてしまったのです。そして、父親とシャイマちゃんだけが生き残りました。わずか4歳の女の子に、家族はほとんど全員亡くなったと、どのように伝えればいいのでしょうか」と語りました。

戦闘は家族全員の命も奪っています。7月21日、アブ・ジャマ家は、1度の空爆で、家族25人が殺害されました。一家は、ラマダンによる一日の断食を終えて夕食を食べていたところでした。殺害された25人のうち18人は、生後4カ月から14歳の子どもたちでした。

消えない傷

多くの子どもたちの子ども時代も破壊されています。この6年間で、今回を含めて3回戦闘が起きており、子どもたちの心と身体に消えることのない傷を残しています。

ユニセフ・パレスチナ事務所の子どもの保護専門官チーフのブルース・グラントは「子どもたちは、もともと回復力をもっており、立ち直る力があります。しかし、あまりにも多くの戦闘に巻き込まれれば、戦闘そのものが新たな日常となってしまいます。そうすれば成長したのちに、同じこと、つまり戦闘を繰り返しやすくなるのです」と述べました。

直ちに心のケアを必要とする子どもは、20万人いるとみられています。ユニセフが支援する緊急心のケア支援を行う5つのチームは、負傷した子どもたちや愛する人を失った子どもたちに、すぐに取り入れられる心のケアを行うべく、支援を行っています。

攻撃される学校

激しい空爆と攻撃を受けたシェジャヤ(Shejaya)近郊に住んでいた25歳のラナさんは、ガザ市内の病院で第一子となる息子を帝王切開で出産。医師によると、戦闘下では早産する女性が増えるという。
© UNICEF/Loulou d'Aki/2014
激しい空爆と攻撃を受けたシェジャヤ(Shejaya)近郊に住んでいた25歳のラナさんは、ガザ市内の病院で第一子となる息子を帝王切開で出産。医師によると、戦闘下では早産する女性が増えるという。

現在、ガザ地区の44%が立ち入り禁止となっており、人口の10%にあたる17万3,000人以上は、国連が運営する学校に避難しています。しかし、ガザには安全な場所などもうどこにもありません。先週、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)が運営する学校が攻撃され、子ども6人を含む15人が死亡しました。国連が運営する学校が攻撃を受けたのは、これで3回目となります。

これまでに、少なくとも130の学校が学校近くへの空爆で被害を受けています。また、1校はパレスチナの武装グループにロケット弾を保管するために利用されたと報道されています。こうした行為は、学校の中立性を損なう行為です。

学校が避難所に

公立学校に避難している人は1万人で、その多くは子どもたちです。

10歳のカマールちゃんは、自宅近くで起きた激しい戦闘の後、家族と一緒にガザ市にある公立のハママ(Hamama)基礎学校に避難してきました。「(避難してきた)学校は安心です。家のすぐそばや遠くでの攻撃音をたくさん聞きました。学校にいるほうが、家よりもいいです。もし家に戻ったら、死んでしまうと思います。友だちが生きているかもわかりません」と語りました。

ユニセフは、公立学校に避難している住民に、おとな用や乳児用の衛生用品の配布を開始。また、WFP(国連世界食糧機関)とともに、食糧や水、衛生用品を地元のお店で購入できる引換券を、1,300世帯以上に配布しています。

喫緊の人道支援ニーズ

一方で、人道状況は極めて厳しくなっています。給水と衛生設備の少なくとも半分は稼働しておらず、人口の3分の2は、安全な水を入手できません。複数の井戸や、主な下水汲み上げ施設、下水処理施設も攻撃を受けました。中には、下水が道路に流れ、子どもの健康を脅かしている場所もあります。緊急修理を行うことで水やトイレが使えるようになるところもありますが、自治体の技術者が安全に作業を行えないために、修理が行えません。これまでに業務中に技術者4人が殺害されています。

いつもであれば、ラマダン明けを祝うイードは、お祝いをし、子どもたちにとっては楽しいひとときです。子どもたちが喫緊に必要とする人道支援を行うには、支援を行える環境と一時停戦が必要です。しかし、停戦の合意はガザと子どもたちが経験せねばならない回復の長い道のりの第一歩に過ぎないのです。

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