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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<信濃毎日新聞2004年10月19日掲載>

家庭崩壊 性的暴力から守る
<フィリピン>


ユニセフの支援センターに保護された、ストリートチルドレンや暴力などの犠牲になった子どもたち(本文とは直接関係ありません) 海外に働きにでていくフィリピン人は、総人口の約10%にあたる700万人。フィリピンでは失業率が高く、こうして海外で稼いだ外貨はフィリピン経済を支えるとともに、各家庭の家計を支えているのです。

 親が海外で働く間、残された子どもが親せきに育てられることはめずらしくありません。しかし厳しい経済状況のなか、すべての子どもが懸命に働く親や親せきに育てられているわけではありません。大人が働かずに子どもが働かせられたり、ドラッグ(麻薬)とお酒で苦しい現実から逃避する父親に、性的暴力をふるわれることさえあります。

 守ってくれるはずの家庭がない子ども達は、家から逃げ出して路上で暮らすようになります。ある調べでは、子ども達が路上に暮らすようになった原因の主な原因のひとつは家庭内の暴力といわれています。2000年、フィリピンの都市部だけでストリートチルドレンは、約4万4000人。その数は貧困によって家庭が崩壊し、子どもたちの人間らしい生活を奪っていることを物語っています。

 この状況を改善しようと、フィリピン政府は2000年、21世紀における子どものための新しい枠組「チャイルド21」を策定しました。ユニセフとの協力で、子どもの権利を守る社会を、2025年までに実現することを目指しています。 

 これに基づき、子どもの権利を守る動きは少しずつすすめられてきました。一つの例は、性的暴力事件の裁判です。

 子どもたちにとって、裁判官が着る黒いガウンさえ怖いものです。そこで、こうした裁判のときには、裁判官はガウンを着ない動きがすすんでいます。

 さらに性的暴力をうけた子どもが裁判で証言するとき、別室でテレビを通じて証言を行うことができるようになりました。子どもたちがおびえずに証言でき、公正な審判が行われようにするためです。ユニセフでは、子どもが証言するためのカメラやテレビなどの機器を提供しています。

 性的暴力は子どもの心に大きな傷だけでなく、やり場のない気持ちを残します。ドラッグを常用した実父に性的暴力をうけた14歳のアンジェリカ(仮名)は、父親を今も思う母親の気持ちを考えると、はっきり自分の気持ちを表せません。子どもの親に対する気遣いに胸が痛みます。

 貧困による家庭崩壊の犠牲者となっているアンジェリカをはじめ、ストリートチルドレンのために、私達に何ができるかを考えずにはいられません。

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