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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

南スーダン: 一人ぼっちの10歳の少女
「お母さんと家に戻りたい。望むのはただ、それだけ」
家族と離れ離れの子どもは3,000人以上

【2014年5月2日 南スーダン・パガク発】

10歳のニャゴナーちゃん
©UNICEF South Sudan/2014/Pires
10歳のニャゴナーちゃんは2カ月近く歩き、南スーダン・上ナイル州のパガクに辿り着きました。

ニャゴナーちゃんは、最後に見た母親の姿を忘れることができません。家族で平和に暮らしていたマラカルは、南スーダンの多くの町と同様に武力衝突が発生し、不安定な情勢が続いています。

まだ10歳のニャゴナーちゃんは2カ月前にマラカルの自宅からの避難を強いられ、エチオピアとの国境沿いにある、マラカルから300キロほど離れたパガクに辿り着いたところを保護されました。

* * *

一緒に逃げたあの時から、お母さんが見つからない

「真夜中に武力衝突が起こりました。恐怖のあまり飛び起きて、隠れる場所を探すために走って外に出ました」ニャゴナーちゃんが声を震わせながら、その時のことを思い起こします。「外に出ると、お父さんが地面に倒れて死んでいました。お母さんは叫び続けながら私を引っ張って走り、近くに隠れました」

ニャゴナーちゃんと母親は4日間茂みに身を隠して過ごしました。銃撃の音が止んだため、母親は村に戻る決断を下しました。

しかしその静けさは数時間しか続きませんでした。安全が戻ったわけではなかったのです。

「お母さんが眠っている私の所にやって来て、私たちを守ってくれる避難所に今すぐ行かなくてはいけないと言いました。外に出ると、みんな叫びながら逃げまどっていました。多くの人が殺されていました。後ろは振り返らず、力の限り走りました。避難所に着いてお母さんを探しましたが、どこにもいませんでした。あの時から、お母さんは見つかっていません」

目を閉じると、また紛争が始まってしまうかもしれない

ひとりきりになったニャゴナーちゃんは、恐怖に脅えながら、マラカルの国連施設で母親を必死で探しました。来る日も来る日も母親を探し続けましたが、何週間も経つにつれ、希望は失われ始めました。夜は、目を閉じると再び戦闘が始まるのではないかという恐怖に襲われ、眠ることもできませんでした。そのためニャゴナーちゃんは、マラカルからパガクに避難する住民についていくことに決めました。

「わずかな食糧と水を持って、2カ月間歩き続けました。誰ひとり、知っている人はいませんでした。私は一人ぼっちでした。途中で息絶えたり、歩き続けることができない人がたくさんいました。川をボートや泳いで渡りました。時々武力衝突が起こっていない村を通り過ぎるとき、食べたり飲んだりすることができました」

ニャゴナーちゃんの頬を、涙がつたいます。

お母さんと家に戻りたい、望むのはそれだけ

登録するために並ぶ家族と離れ離れになった子ども
©UNICEF South Sudan/2014/Pires
パガクで家族と離れ離れになった子どもたちが登録をするために並んでいます。

家族と離れ離れになった子どもたちを保護し、支援するため、ユニセフは家族追跡・再開プログラムをパガクで開始し、即対応チーム(Rapid Response Team)を派遣しました。ニャゴナーちゃんを含め160人の子どもたちが、直ちに支援が必要と判断されました。

南スーダンでは、家族と離れ離れになった子どもたち3,000人以上が、ユニセフによって登録されました。そして、まだ支援の手が届いていない、ニャゴナーちゃんのように非常に不安な状態に置かれている子どもたちが数千人いると推測されています。混乱状態が続くなか、ユニセフの支援により251人の子どもたちが両親や親せきとの再会を果たしています。

昨年12月、南スーダンで紛争が勃発する前、ニャゴナーちゃんは学校に通い、4年生を修了したところでした。将来は先生になることを夢見ていたニャゴナーちゃんが今望むのは、母親を見つけて、平和のなかで暮らすことだけです。

「お母さんが生きていなかったら…そう思うと、とても怖いです。周りの人たちが私を助けてくれると信じています。私には、誰もいません。マラカルに安全な場所が戻ったら、また家に戻ってもう一度勉強したいです。お母さんと家に戻りたい。今望むのは、ただそれだけです。

時々目が覚めると、たくさんの人が私の身体を押さえているときがあります。眠っている間に叫んだり暴れたりしていると言われました。以前のようにぐっすり眠れる日は、もう二度とこないのではないかと、とても不安です」

*文章に登場する子どもの名前は仮名です。

* * *

ユニセフ・南スーダン現地報告会『世界一新しい国を襲う危機』のお知らせ

ユニセフ・南スーダン事務所 山科真澄・子どもの保護専門官による現地報告会を、5月21日(水)10時からユニセフハウス(東京・品川)で、開催いたします。

山科専門官もまた、戦闘に巻き込まれたひとりです。2月末に上ナイル州のマラカルで、国連施設内外で戦闘が発生し、命の危険と隣り合わせの緊迫した中で支援を続けました。

報告会では、現地の最新情勢や子どもたちが置かれている状況と課題、特に暴力や搾取、虐待についてお話いただく予定です。報道関係の方ならびに一般の方のご参加をお待ちしております。詳細、お申込みは>> ユニセフ・南スーダン現地報告会 『世界一新しい国を襲う危機』

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