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日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

スーダン:2つに別れた国の狭間に取り残された人々

【2012年2月1日 スーダン・コスティ発】

© UNICEF Sudan/2012/Khanna
コスティの船着場で、何時乗れるとも分からない船を待ち続けるサビナ・サイサさん(18)才。彼女のように、ナイル川のほとりで船を待っている人々は、数千人にものぼる。

サビナ・サイサさん(18歳)は、今の彼女にたった一つ残されたぼろぼろの人形を見るたびに、親友のジャクリーンさんのことを思い出します。

サビナさんとジャクリーンさんは、それぞれの家族と一緒に、2011年6月、新しい“我が家”となるはずの南スーダンに向けて旅立つため、コスティの船着場にやってきました。そして12月、ジャクリーンさんは、定員を超えるほどの乗客を乗せた船で、南スーダンの首都ジュバに向け、ナイル川を渡っていきました。

「ジャクリーンともっと一緒にいたかった。でも彼女は行ってしまいました。彼女が今どこにいるのかも、いつ会いに行けるのかもわかりません。」サビナさんはこう話しました。

サビナさんは、スーダンの中でも大きな船着場のひとつのコスティの船着場で、常に人の波が絶えず、いつその機会がやってくるとも知れずに、劣悪な環境の中で南スーダンへの旅立ちの時を待っている、推定9,000人から1万4,000人のスーダン南部出身者のうちの一人です。この港の収容人数はわずか2,000人に過ぎません。ですから、船着場のありとあらゆる設備が、そのキャパシティを超えてしまっているのです。

にもかかわらず、人々の“動き”が耐え難いほど遅いのは、コスティだけではありません。他の船着場でも、数千人以上の人々が“立ち往生”しています。

先が見えない状況
© UNICEF Sudan/2012/Khanna
コスティを出発した船は、ナイル川で南スーダンを目指す。

南スーダンの独立から6ヵ月。現在でも、かつてスーダンの一部だった同国出身の70万人近くの人々が、スーダン国内に留まっています。スーダン国内で最近施行された法律により、多くの人々がスーダン国籍を失ったり、あるいは失う可能性があります。スーダン政府が設定した2012年4月8日の期限までに、南スーダン国籍を取得する必要があるのです。南スーダン出身の人々には、正式な書類を得るために、南スーダンに行くより他に選択肢はありません。スーダンでの生活を続けたいと望む南スーダン出身の人々も、まず南スーダンの国籍を取得し、その後、スーダンの正式な在留資格を取得する必要があります。

さらに、この中には、どちらの国籍も取得することが難しい状況の人々もいるかも知れません。しかしながら、いずれにしても、適切な書類が無ければ、いずれの国においても居住資格を失い、社会的保護や社会サービスを享受できなくなるだけではなく、何らかの懲罰を受ける可能性も出てくるのです。

国連は、スーダンと南スーダンの両政府に対し、スーダン国内に居住する南スーダン出身者が、より簡易に南スーダン国籍を取得し、スーダン国内での居住権と労働許可を取得できる手続きを導入するよう求めています。

また、NGOやユニセフ、IOM(国際移住機関)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、WFP(世界食糧計画)をはじめとする国連各機関は、限られた資金の中、南スーダンに向かっている人々のニーズに応えるべく活動しています。

「本当に何もかも足りません」

現地語で‘港’や‘Toub(疲労)’を意味する「メエナ」と名づけられた赤ちゃんが、厳しい状況にあるコスティで生まれました。この名前には、家族が直面している困難な状況が映し出されています。

「水も食べ物も毛布もトイレも、本当に何もかも足りません。今はただ、蓄えを食いつぶしながらここで待っています。」 あるコミュニティのリーダーを務めるステファン・バディディさんはこう話しました。

こうした中、幼い子どもたちは、誰よりも大変な状況に苦しんでいます。学校も無く、教育を受ける機会はありません。多くの子どもたちが、体調を崩しています。ダナ・サイモンちゃん(2歳)は、8月に病に倒れ、現在は、ユニセフが支援している栄養センターで治療を受けています。

こうした中、IOM(国際移住機関)が準備している船を利用できた人々には、安堵の表情が溢れています。

「新しい生活を始めることは簡単ではないと知っていますが、私は希望を抱いています。」「ここ(コスティ)で活動しているような女性グループを組織するつもりです。」 船で、乗客の安全確保をボランティアで手伝っているラゲナ・オカゲさん(40歳)は、こう話しました。

オカゲさんの仕事は重要です。この船旅は、約3週間におよびます。そして船は、2,000人以上の人々が寿司詰め状態なのです。

最近、こうした“船旅”の中で2人の子どもが命を落としました。これを受け、地元のNGOは、ユニセフの支援を受け、先客に対する安全や衛生、また安全な飲料水の確保について説明する活動を始めました。また、特に深刻な状況にある子どもたちには、危険な船旅ではなく、空路でのジュバへの移動も支援しています。マラリアと腸チフスと診断されたビクトリア・パトリスさん(12歳)は、船が出発する直前に“救出”され、空路でジュバに運ばれました。

一時的な支援活動
© UNICEF Sudan/2012/Khanna
スーダンのコスティに設置された子どもに優しい空間で歌を歌って踊る子どもたち。

船旅を余儀なくされた人々の不満は、その表情からも明らかです。さらに、先日、南スーダンで民族衝突が勃発した日以降、その不満は拡大しているようです。

こうした中、ユニセフの支援を受け、コスティの人々が“子どもに優しい空間”を設置しました。“子どもに優しい空間”には、子どもたちが安心して遊んだり、絵を描いたり、歌を歌ったり、踊りを踊ったり、学習したりできる環境が整っています。

「息子を連れてきました。私の周囲の子どもたちも、みんなここに連れてきますよ。」ハナン・ジャン(30歳)はこう話しました。

こうした意識が、コスティで船を待っている人々に希望を与えています。

サビナさんも、コスティに留まっている子どもたちの不安を取り除くために、“子どもに優しい空間”でのボランティア活動を始めた一人です。「みんなと力を合わせれば、この困難を乗り越えることができるはずです。」(サビナさん)

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