メニューをスキップ
HOME > 世界の子どもたち > ストーリーを読む
日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

シリア:学校に身を寄せる子どもたち

【2012年8月3日 シリア発】

© UNICEF Syrian Arab Republic/2012/Rashidi
ダマスカスにある避難所となった学校で。(食事などで)机を使った後は、全ての机を教室から出し、教室一面に就寝のためのマットが敷かれます。

ダマスカス、アレッポなどのシリア国内の各都市のほとんどの学校が、内戦の中で住む場所を追われた人々の避難場所になっています。教育省によれば、その数は、現時点で307校。少ないところで50人程度。多いところで400人を超える人々が、学校での不自由な生活を強いられています。

危険と隣り合わせの中、また、なかなか思うように支援活動を展開できない状況にもかかわらず、ユニセフをはじめ、シリア国内で支援活動を続けている人道支援団体は、この1ヵ月間に、支援規模を著しく拡大することができました。しかし、(そうした支援の拡大は、)最前線で活動する地元の組織に大きな“負担”として圧し掛かっています。特に、イスラム教の断食月(ラマダン)期間中の人々の栄養状態の確保が、大きな課題となっています。

アマルちゃん(11歳)は、マサケン・バルゼにある学校に避難しています。彼女は、教室で眠るのは気詰まりに感じていました。「学校で眠ることになるなんて、想像もしていませんでした。」「学校は、勉強する場所だと思っていたから。」 初めて学校で眠ることになった日、アマルちゃんは、校庭に常夜灯があるのかどうか心配でした。その日の夜は、教室に空きスペースがなかったので、校庭で眠らなければならなかったのです。

支援活動の拡大
© UNICEF Syrian Arab Republic/2012/Rashidi
イヴァドさん(17歳)は、家族と共に、学校に避難してきました。イヴァドさんは、毎朝たくさんのマットを積み上げて、教室の中に、人々が座れる空間を作ります。そして夜になると、、13人の家族が眠れるように、またマットレスを敷きます。

治安状況から、ダマスカスやリフダマスカスの多くの地域へのアクセスが制限されていましたが、ユニセフは、パートナー団体の協力を得て、様々な緊急支援活動を展開。応急処置用の医薬品等が入った救急キットやレクリエーションキット、家庭用と赤ちゃん用の衛生用品がセットになったキット、調理用ストーブ、マット、毛布、食糧等のユニセフの支援は、5万人を超える子どもを含む7万4,000人の国内避難民に配布されました。

2011年8月、アマルちゃんの家族は、一家の大黒柱である父親を亡くしました。政情不安が続き、16歳の兄のアハマドくんは学校を中退せざるを得ませんでした。「父が亡くなってから、母を助け家族を養うために学校をやめなければならなくなりました。」 (アハマドくん)

母親のウム・アハメドさんは、次のように話します。「毎月家賃を払うことさえ難しい状況でした」「ですから、借家を出て、このプライバシーが何もない学校で暮らしているのです」 学校では、狭い教室を他の人々と共有して生活しなければなりません。「自分の空間を持ちたいです。特に、シングルマザーですから。多くは望みません。小さな空間でもいいのです」

家族の話では、大工だった父親は、息子にその技術を教えることを拒んだといいます。「夫は、アハメドに高等教育を受けて、エンジニアになってほしかったのです。」「でも今は、何もかも失ってしまいました」(ウムさん)

家を出て学校に避難する数日前まで、アハメドくんは、今は閉店しているレストランで働いていました。「父が大工の技術を教えてくれていたら、少なくとも、もっと良い収入を得ていたと思うよ」(アハメドくん)

ユニセフは、学校での避難生活を強いられている子どもたちに、レクリエーション活動や基礎的な社会心理的な支援の機会を提供するため、地元のパートナー団体のスタッフや地域のボランティアの方々に、必要な研修の機会も提供しています。「ユニセフは、先月までに、ダマスカスやルーラル・ダマスカス、ホモス、アレッポ、ダラア、ラタキアで避難生活を送っている2万6,000人の子どもたちに、レクリエーション活動と社会心理的な支援の機会を提供しました」 ユニセフ・シリア事務所のエリック・ダルパイエ副代表はこう話しました。

「この学校は、通っていた学校と同じように見える」
© UNICEF Syrian Arab Republic/2012/Rashidi
ダウアさん(12歳)は、6日前に6人の家族と共に、ダマスカスのオアボウンからこの学校に避難してきました。手にしているのは、今彼女がとても誇りに思っているものを描いた絵。

ダマスカス北部のハイ・ティシュレーンに暮らしていたイッサムちゃん(7歳)も、7人の家族と叔父一家と共に、学校での避難生活を余儀なくされた子どもの一人です。イッサムちゃんは、それでも、この学校と以前通っていた学校の共通点を見つけては、元気づけられているようです。「夜遅くに着いて、あたりは真っ暗だった。次の日の朝は早く起きて、こっそり教室の外に出て、学校を見てみたんだ」「バルゼ・バラダの学校と、とても似ていると思った。今は、たくさんの人でいっぱいだけど」イッサムちゃんは、笑いながらこう話してくれました。

イッサムちゃんの父親は、「学校に避難するなんて私たちの家族だけだと思っていました。でも、たくさんの人が私たちと同じような境遇で厳しい状況に立たされていることが分かりました」と語りました。7月初旬時点の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の調べでは、政情不安が始まってからこれまでに、シリア国内で100万人が住む場所を追われ、避難生活を強いられていると推定しています。この推計値が出された後、シリア国内の情勢は一層緊迫したため、その数は現在までに更に増加したものと見られています。赤十字国際委員会とシリア赤新月社は、先週だけで、約20万人がアレッポとその周辺地域から避難したと推定しています。

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る