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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

イエメン:子どもを「預ける」ではなく、「育てる」場所

【2012年1月30日 イエメン発】

© UNICEF Yemen/2012/Rasheed
ユニセフの支援を受けて、イエメン各地に開設された「保育センター」に通うソマリア人の女の子たち。

ソマリア人のミリャム・モハメッドちゃん(10歳)の声が、保育センターの小さな部屋に響きわたっていました。モハメッドちゃんは、他の子どもたちと一緒にソマリア国家を歌っています。
「この歌は、まだ一度も見たことのない私のふるさとの歌なの」「私はイエメンで生まれたけど、たぶんいつかソマリアに行くわ。」と、モハメッドちゃんは語ります。
地元のボランティアの方の家で運営されているこの保育センターは、数千人ものソマリアからの難民やソマリア出身のイエメン人が暮らす貧困街、バサティーン地区に15箇所あるセンターのうちのひとつです。この保育センターに預けられている30人から40人の子どもたちの母親は、夜明けから夕方まで、家政婦として働きに出たり、あるいは街にお金を無心しに行ったりしています。

難民の子どもたちが置かれている厳しい状況

終わりの見えない内戦を逃れ、毎年数万人もの人々がアデン湾をわたり、イエメンまでの過酷な旅に出ます。この数は徐々に増えていて、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2011年、アデン湾や紅海を渡ってイエメンにやってきたソマリアからの難民や移民の登録者は、10万3,000人、前年比2倍になりました。

しかしながら、(そうやって辿り着いた)イエメンでも、子どもたちは厳しい状況に置かれています。イエメンは、この周辺の国々の中で、5歳未満児死亡率が最も高い国のひとつです。また、発育阻害を負っている5歳未満の子どもの割合は、世界で2番目に高くなっています。

家族や地域が満足に“支えて”くれない(そうすることが出来ない)状況の中、子どもたちは、特に厳しい立場に立たされています。

最も弱い立場の子どもたちへの支援
© UNICEF Yemen/2012/Rasheedn
バサティーン地区の保育センターでの授業の一風景:クラスメートにアラビア数字を教えている男の子。

ユニセフは、UNHCRと密接に連携しながら、特に教育、保健、子どもの保護の分野で、こうした子どもたちへの支援活動を展開しています。また、深刻な急性栄養不良状態にある子どもたちへの支援や、幼い子どもたちの就学前教育を促進するための支援も行っています。

バサティーン地区にある保育センターは、こうした支援の一環として、ユニセフのパートナー団体の一つの地元NGO組織、Al-Tadamounによって運営されています。保育センターでは、子どもたちの年齢に応じた活動が積極的に取り入れられています。1歳から4歳までの子どもたちは、おとなに見守られながらおもちゃを使って遊び、4歳から6歳までの子どもたちは、鉛筆を使ったり絵を描いたりして学び、6歳から14歳までの子どもたちは、英語やアラビア語、音楽などの基本を教わっています。また、子どもたちには、さらに制服やバッグ、そして課外活動の機会も提供されています。

「お母さん方が仕事をされている間に、子どもたちを預かっています。(保育料として)子ども1人あたり100リヤル(約0.44米ドル)いただいています。」 保育センターが設置されている建物の大家のサイダ・ムバラク・アッタさんは、こう話しました。「でも、お母さん方がお金を払う余裕がない時には、よく無料で預かっていますよ。」

教育を受けられる安全な場所
© UNICEF Yemen/2012/Rasheed
バサティーン地区の保育センターで、クラスメートにアラビア数字を教えるジャマル・ファルークさん。

保育センターは、イエメン南部にあるソマリア人のコミュニティでさらに重要な役割を果たしつつあります。この地域では、女性が一家を支えている(主な稼ぎ手になっている)家庭が増えているのです。
「私のママは、家政婦なんだ」と、オマルちゃん(6歳)は話します。「パパは、ときどき車を洗っているよ。でも、ママは、お金と食べ物を持ってきてくれるんだよ。」
オマルちゃんは、保育センターに通い始める以前は、家の中で、過酷な状態に置かれていました。「お母さんは、僕を何時間もベッドの隣に縛りつけていたんだよ。まるで犬みたいに。火や電気で遊ばないようにって。とてもひどかった。でも、今はずっといいよ。」「ここなら友だちと遊べるし、美味しい食事もあるし、歌やおもちゃをつかった遊びも教えてもらえるんだ。」(オマルちゃん)

「バサティーン地区の保育センターは、500人近くの子どもたちに、安全で健康的で、そして、教育を受けられる環境を提供しています。この子どもたちは、この保育センターに来なければ、母親と一緒に街でお金を無心したり、家に1人で残され、様々な危険にさらされていたのです。」 保育センターで子どもたちの面倒をみているノール・ヒルッシさんはこう話しました。
保育センターで働いている人々は、ユニセフの支援で、「子どもの保護」に関する研修を受講。年齢に応じた子どもたちへの対応法や、遊びを通した教育法を学んでいます。
「このユニセフの支援で、保育センターの役割は強化されています。」「保育センターは、ただ子どもたちを預かる場所ではありません。子どもたちは、ここにいれば安全ですし、教育を受けることもできるのです。」(ヒルッシさん)

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