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日本ユニセフ協会
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ユニセフ・アジア親善大使
アグネス・チャン さん
フィジー・サイクロン被災地訪問報告会

【2016年3月24日  東京発】

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アグネスチャン ユニセフ・アジア親善大使

©日本ユニセフ協会

アグネスチャン ユニセフ・アジア親善大使

今月7日にユニセフ(国連児童基金)・アジア親善大使に就任したアグネス・チャンさんは、3月20日~21日の2日間にわたるフィジー訪問を終え、大型サイクロン「ウィンストン」の直撃を受けた現地の状況を報告しました。

壊滅的な被害が出た学校やコミュニティを訪れ、子どもたちや住民の話を聞いたアグネス大使は、安全な水、栄養、予防接種、心のケアなど、被災地ではいまだ多くの支援が必要とされていることを訴えました。

 

 不安定な社会状況のなか大型サイクロンが直撃

南太平洋の島国フィジー共和国は観光地として知られていますが、実際には異なる民族間の不信感、度重なるクーデター、経済・産業の停滞など、非常に複雑な社会状況にあります。一方、子どもたちの初等教育就学率は99パーセントに達するなど、アグネス大使も訪問前は「状況は他国より良いのではないか」と感じていましたが、サイクロンの被害は想像を絶するものでした。

サイクロンで家を失ったコリスタパさんが「カラフルな花が咲き誇る素敵な村だった」と言うトコク村。村の前の海岸も瓦礫で覆われていた。

©日本ユニセフ協会

「カラフルな花が咲き誇る素敵な村だった」と言うトコク村。村の前の海岸も瓦礫で覆われていた。

今年2月下旬にフィジーを襲ったサイクロン「ウィンストン」は史上最大規模のカテゴリー5でした。はじめにフィジーを通過した小規模のサイクロンが、海上で大幅に勢力を強めてUターンし再び同国を襲ったため、地元では「ウィンストンの怪」と呼ばれています。これにより、総人口90万人のうち約35万人(12万人は子どもたち)が被害を受け、2万8,000戸もの家屋が損壊しました。多くの人々がいまも不便な避難生活を強いられています。

 村の立て直しと学習の再開が急務

訪問1日目、アグネス大使はビチ・レブ島西部の都市ナンディから車で4時間ほどの、少数のイスラム系住民が暮らすナウト村を訪れました。「村」と言っても地名を表す看板もない、非常に小さなコミュニティに約40世帯が暮らしていますが、今回のサイクロンで建物や農作物に甚大な被害が出ました。

ビチ・レブ島ナウト村。 村の子どもたちと一緒に移動幼稚園のプログラムに参加するアグネス大使。

©日本ユニセフ協会/2016/S.Taura

ビチ・レブ島ナウト村。 村の子どもたちと一緒に移動幼稚園のプログラムに参加するアグネス大使。

村の子どもはアグネス大使に、暴風雨に襲われた当時の恐怖を語ります。「家族みんなで家の中にいたら、屋根が飛ばされました。別の部屋に避難したら、また屋根が飛ばされたのです。でも、最後に残った部屋に逃げて、何とかみんな助かりました」

住民の避難所となった学校でも、鉄筋コンクリートの柱や屋根が飛ばされました。学校に避難した子どもの一人は「机の下に隠れましたが、すごい音がして怖かったです。男の子も先生も、みんな泣きました」と話します。

村ではいま、住民が自力で建材をかき集めて建物を修復するなど、復旧に向けて全力で取り組んでいます。一方でユニセフは、ナウト村のような遠隔地の子どもたちへの学習や衛生面の支援として「移動幼稚園」の活動を展開しています。ワークシートを使いながら先生とさまざまなアクティビティを楽しめるほか、「水と衛生」に関する指導も行います。学習が終わるとおやつの時間があるため、その前に子どもたちに石けんで手を洗うよう呼びかけるのです。

訪問当日に実際に移動幼稚園のプログラムに参加したアグネス大使は「初めは笑顔がなかった子どもたちも、私と歌ったり遊んだりしてすごく喜んでいました。このような取り組みは、子どもたちに安心感を与え、村に活気が戻るので、さらに拡大する必要があります」と話します。

次にアグネス大使は、被害の実態把握や緊急支援に取り組んでいる病院を訪れました。病院の関係者によると、避難所の衛生状態は悪く伝染病のリスクがあるため、政府は自宅に戻るよう呼びかけていますが、多くの人は家に帰っても安心して暮らせる場所がありません。また、栄養不良も懸念されています。サイクロンが来る以前から、雨不足のためすでに食糧の確保が困難でしたが、今回の被害により貴重な農作物の多くが失われました。おとなの男性が優先される社会慣習が残るフィジーでは、栄養摂取に関して子どもたちが取り残される可能性が高いため、緊急の支援が必要とされています。

 水、栄養や心のケアも不足

訪問2日目、アグネス大使は飛行機でオバラウ島に向かい、学校や村落の被害状況を確認しました。

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©日本ユニセフ協会/2016/S.Taura

オバラウ島ロレト小学校。 サイクロンで屋根・壁が吹き飛ばされた図書室。両隣は、この学校に通うイノケ・バリニサブくん(11才写真左)とエスター・コリタパさん(13才写真右)。

はじめに訪れたロレト小学校では、サイクロンにより屋根が飛ばされ、建物にも大きな被害が出ました。学校の図書館は屋根と壁が完全に破壊され、ほとんどの本が吹き飛ばされてしまいました。教室も使用できなくなったため、現在はユニセフの支援で設置されたテント造りの仮設教室で授業を行っています。アグネス大使は低学年の授業を見学し、子どもたちへの心のケアの必要性を感じました。「サイクロンにより心の傷を負い、カウンセリングを必要としている子どもたちがまだ多くいます。泣いてばかりで、話ができない子もいました。私が抱っこするとますます泣き出してしまい、どうして泣いているのか話すことすらできないのです」

次にアグネス大使は、小学校で出会った子どもたちが住む沿岸部のトコウ村を訪れました。イノケ・バリニサブくん(11才)の家族は家を失い、いまは避難所で寝泊りしています。サイクロンによる暴風と高潮で1.6メートルほどの大波が村に押し寄せ、イノケくんは避難所から自宅が流されるのを目にしました。村人の中には、溺れて命を落とした人もいるそうです。

オバラウ島トコウ村。 サイクロンの暴風と高潮で全壊したエスター・コリタパさん(13才)の家で。

©日本ユニセフ協会/2016/S.Taura

オバラウ島トコウ村。 サイクロンの暴風と高潮で全壊したエスター・コリタパさん(13才)の家で。

エスター・コリタパさん(13才)の家も、台所以外のほとんどを破壊されました。かろうじて持ち出せたのは教科書、ノート、筆箱だけで、あとの家財は全て流されてしまいました。いまは食べ物や安心して寝る場所もままならず、大変な状況が続いています。「コウモリや鳥もお腹をすかせているのです」とエスターさんはアグネス大使に話します。自分自身お腹がすいているとは言えず、動物の話をして遠回しにつらさを表現しているのです。

アグネス大使はトコウ村の人々による歓迎会に出席し、さまざまな支援の必要性について話を聞きました。まず、安全な水を取り戻すことが急務です。村人の話では、現在は学校でしか安全な水を手に入れることができず、子どもたちが学校に行きペットボトルに水を汲んで持ち帰るしかないそうです。また、栄養不良の懸念も高まっています。多くの村人は、「子どもたちにはせめて昼食だけでも学校で給食を提供してもらえないか」という要望を口にします。加えて、子どもたちに対する家庭内暴力、蚊の発生に伴う伝染病の懸念、高潮を避けるための山間部への移住など、トコウ村が直面している課題は山積しています。

ユニセフはいま、安全な水の提供や予防接種の実施などを進めていますが、まだ資金が不足しています。実際に、村の子どもたちへの200食分の栄養補助食品の配布が求められていますが、まだ100食分しか目途が立っていません。アグネス大使は今回の訪問を経て、水、衛生、栄養、教育、子どもの保護など、被災したフィジーの子どもたちの多岐にわたる支援ニーズがまだ十分に満たされていないことを実感しました。「現地で出会ったたくさんの子どもたちが、ずっと笑顔でいられるように、日本のみなさまにもぜひ支援をお願いしたいです」と訴えます。

アジア地域の緊急課題に取り組む

オバラウ島ロレト小学校 ユニセフの支援で設置されたテント造りの仮設教室の前で、子どもたちと。 ユニセフは、学用品がセットになったスクールバッグも配布した。

©日本ユニセフ協会/2016/S.Taura

オバラウ島ロレト小学校。 ユニセフの支援で設置されたテント造りの仮設教室の前で、子どもたちと。ユニセフは、学用品がセットになったスクールバッグも配布した。

アジア親善大使としての初めての任務を終えたアグネス大使は、フィジーを襲ったサイクロンが地球規模での気候変動の危機に関連していることを強調しました。特にアジア太平洋地域では、温暖化に伴う海面上昇や異常気象により、深刻な影響を受ける国が数多く存在します。実際に、気候変動に対して最も脆弱とされる世界10カ国のうち、4カ国がこの地域に集中しています。最近では、太平洋で大規模なサイクロンが頻発し、北東アジアでは干ばつが深刻化するなど、気候変動に端を発する事態が続いています。今後は、広範囲の浸水、農作物の減少、子どもたちの健康状態の悪化、移住先の土地を巡る争いなど、国の存亡に関わる影響が懸念されます。

「アジア太平洋地域は危機的状況にあります。アジア親善大使として、今後は日本だけでなくアジア全体に支援の輪を広げていきたいと思います。任務や責任がこれまで以上に広がりますが、子どもたちの権利や幸せを守り、元気に成長するための支援をしていくという活動の『心』に変わりはありません」とアグネス大使は今後の活動の抱負を述べました。

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日本ユニセフ協会は、フィジーのサイクロン被害を含め、自然災害で被災した子どもたちや家族に対する支援のための『ユニセフ自然災害緊急募金』を受け付けています。みなさまのあたたかいご協力をお願い申し上げます。

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