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日本ユニセフ協会
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ネパール現地報告会
 「大地震から500日、復興の現状と今後の課題」

【2016年8月22日  東京発】

日本ユニセフ協会は2016年8月22日(月)、ユニセフ・ネパール事務所代表 穂積智夫氏による現地報告会を開催しました。

昨春、110万人以上の子どもたちが被災したネパール大地震から約500日が過ぎましたが、これまでに「ユニセフ・ネパール大地震緊急募金」として日本国内の個人、企業、団体の皆様からおよそ18億円ものご寄付をお寄せいただきました。貴重なご支援に深謝申し上げます。

このたび日本をはじめ世界からの支援をうけて、ユニセフが行う復興にむけた取り組みと今後の課題について穂積代表が報告しました。

報告会当日は、台風9号の接近が懸念されました。台風の影響やご都合が合わず当日報告会にご参加いただけなかった皆さまにむけて、報告会の動画および概要をまとめたレポートを掲載いたします。

ネパールとはどんな国か

ネパール基礎統計

ヒマラヤ山脈に代表されるように、ネパールは起伏が激しい国で、自然に恵まれ、植物や鳥類の種類が豊富です。また生物学的のみならず、126以上のカーストまたは民族グループを持ち、123の言語が存在するなど社会的にも多様性があります。

ネパールは自然災害に対してより被害を受けやすく、地滑り、洪水、地震に対する脆弱です。昨年の大地震では高山地帯と丘陵部が被害の中心になりました。経済面からだけでなく、保健サービスを受けられる環境にあるかなどの健康面からもみて、「多面的貧困」の状況にある国民は、人口の4割以上であることがわかっています。

ネパールにおける子どもたちの状況

ネパールでは5歳未満児死亡率は、皆さまのご支援により1990年と最近のデータと比較して70%以上削減されており、年々改善しつつあります。しかし、国際基準と比べればいまだに高いのが現状です。特に生まれて1ヵ月以内に亡くなる子どもが多くいます。皆さまのご支援のもと予防接種を受けられる子どもの数は約9割です。しかし、栄養不良による低身長や低体重の子どもの数はそれぞれ3割を超えています。特に低身長は脳の発達にも影響を与えるため、栄養不良は大変重要な課題です。

ネパールの子どもの現状に関して説明する穂積氏

©日本ユニセフ協会

また、ネパールは児童婚が非常に多い国です。20歳から49歳までの女性の49%が18歳になる前に結婚しています。これは世界でも10番目に高い数字です。児童婚は女子教育の問題だけでなく、低発達の悪循環(身体的に成人でない状態で子どもを産めばその産まれた子どもが低発達で生まれる可能性が高くその連鎖が続くこと)を作り出すなど発達の観点からも悪影響を与えます。

子どもの保護についても、課題が山積しています。公共サービスを受け、あらゆる権利を享受するためには、人として存在していることを証明する出生届が必要ですが、5歳以下の子どもの58%しか登録されていません。過酷な児童労働をしている子ども(5歳から17歳)の割合は、学校に行きながら働いている子どもを含めると37%となり、これも国際基準と比べると高い数字です。ネパールでは多くの人たちが国外へ出稼ぎしており、約5人に1人の子ども(5歳から17歳)は、両親のうち少なくとも1人が海外に働いています。親の不在が子どもの発育に与える影響についても注視していく必要があります。

2015年の震災と対応

605,254軒の家屋が完全に倒壊

© UNICEF/UNI184668/Karki

昨年の4月25日と5月12日、それぞれマグニチュード7.8と7.3を記録した大地震は、8,959人が亡くなり、22,302人が負傷するなどネパールの歴史上、過去80年間で最悪の天災でした。首都カトマンズの高度を約1メートル押し上げ、60万以上の家屋を完全に倒壊しました。さらには特に被害が大きかった14郡の80%以上の保健施設が被災したことからも、その規模の大きさがわかります。

今回の地震でネパールの経済にも大きなダメージを与えました。被害総額は70億6000万米ドルまでのぼり、これはネパールのGDPの36%損失を与えたことになります。そして今回の地震で新たに貧困線(1日1.25米ドル)未満の生活を強いられることとなった人々の数は、70万から98万2000人になるといわれています。

震災後の変化

ネパールにおいてユニセフは、震災前の2013年から5カ年計画として、とりわけ経済的に困難な状況におかれている地域(青色の部分)で集中的に支援していました。しかし今回の地震で最も被害を受けた地域はオレンジ色の14の郡であり、地域として重なりがないため、活動及び予算の規模もほぼ2倍になっています。

ネパールの支援地域

ユニセフが行ってきた支援

ユニセフが提供した大型医療用テント

© UNICEF/UNI185258/Panday

今回の大地震に伴い42億円相当の救援物資を準備し、これまでに38億円相当の物資の配布を行いました。ワクチン、衛生キットなどの物資を提供しました。中でも500回近くの余震が続いた状態で集中して治療や保護を行うため、大型医療テントは重宝されました。

また通常このような大規模な災害が発生すると、様々な組織や団体が支援するため、支援の重複や不足を防ぐための調整が必要になります。そのシステムをクラスターと言います。全部で11あるクラスターの中でユニセフは特に水と衛生、栄養、教育、そして子どもの保護においてコーディネーター役を担い、また保健においても深く携わってきました。

地震被災郡におけるユニセフの活動

さらには、災害が起こると子どもの人身売買など、リスクが高まります。家族やコミュニティは、甚大な被害を受けるとそれまで安定していた生活の基盤が崩壊し、その結果子どもを犠牲にして生活の糧を手にすることなど、これまで手を出さなかったオプションまで考えるようになるという背景があります。こういった問題を防ぐため、ユニセフはネパールの内務省、移民局、警察、そしてその他の団体と協力して監視所を国境沿いや郡と郡の間に設置し、人身売買の危険にさらされる子どもたちを見つけ出し、保護してきました。

また物資の支援に加え、政府のシステムを通じた現金支給も成果を上げています。地震発生後、より脆弱なグループに属する43万以上の人たちに1人当たり30ドルの支給を行いました。第三者機関のモニタリングからもしっかりと必要な人に支援が行き届いていることがわかり、また支援のスピード、コスト、確実性の点からも食料や医薬品の支給においてユニセフが買って支援するより現金で渡した方がより効果的であることが言えます。

今後の展望と予定

地質学的に、ネパールでは今後も大地震を含めた災害が多発することが考えられます。すでに、より災害に強い予防接種プログラムのための冷蔵・冷凍設備・システム、耐震性のある学校再建活動の支援調整などをはじめていますが、現状回復のみならず将来性を見据えた減災に取り組んでいます。今後、レジリエンス(回復力の向上)を開発活動の全てに組み込んでいかなければなりません。そのためにも今回の震災の教訓は全国的に生かされる必要があり、災害準備マニュアルの作成をすすめています。

ネパール1年レポート(英語版のみ)はこちら[3.3MB]>>

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日本ユニセフ協会は、ネパールで起きた大地震で今もなお困難な状況にある子どもたちのため、「ネパール大地震緊急募金」へのご協力をお願いしています。皆さまからのご支援をよろしくお願いいたします。


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