メニューをスキップ
日本ユニセフ協会
HOME > ニュースバックナンバー2017年 >

セミナー開催報告
「子どもたちのための新たなパートナーシップを求めて:イノベーション」
2017年4月19日@ユニセフハウス

【2017年5月18日  東京発】

公益財団法人 日本ユニセフ協会とUNICEF東京事務所は、2017年4月19日、UNICEF官民連携セミナー「Innovation for Children: 子どもたちのための新たなパートナーシップを求めて:イノベーション」を、企業・団体向けに開催しました。

イノベーションの取り組みについて語る、ユニセフ本部イノベーション部門プリンシパル・アドバイザーのクリス・ファビアン

© 日本ユニセフ協会/2017

イノベーションの取り組みについて語る、ユニセフ本部イノベーション部門プリンシパル・アドバイザーのクリス・ファビアン

第1部では、ユニセフ本部 イノベーション部門 プリンシパル・アドバイザーのクリス・ファビアンが、ユニセフの紹介から世界が直面する課題、これまでの取り組み、進行中の取り組み、また国連機関初となるユニセフのベンチャー・ファンドを紹介し、ビジネス・セクターとともに、「新しい価値」を生み出したいと強く訴えました。

第2部では、ユニセフが取り組むイノベーション分野に事業として関わる方々にご登壇いただき、「子どもたちのためのイノベーション×宇宙、ドローン、IoT(モノのインターネット)」と題したパネルディスカッションを行いました。

発表内容の抜粋をご紹介します。

新たな「開発」のストーリーをつくる

世界で新たな技術が生み出され、開発の目標もSDGsへと変わり、ユニセフは創設以来70年が経過したことを上げ、ファビアンは、「これまでの問題や取り組みも、イノベーションが加わることで、取り組み方もパートナーも変わってくる。新しい「開発」のありかた、ストーリーをつくっていくことはイノベーションの役割のひとつ。民間の方にとっても、機会であり、ユニセフは世界を変えるためのパートナーとなりうる」と発表をスタート。

イノベーション部門は、スタッフの大多数が民間部門出身のエンジニアやデータサイエンティストである点についてふれ、限られた予算の中で、いかに価値を最大化するかに重点を置いていると述べました。続いて、人口の都市部への集中、移民、気候変動、社会から疎外された若者、感染症などといった世界が直面する課題を挙げた上で、15年後、30年後といった将来に向けて重要となる問題に対して、取り組もうとしていると語りました。

携帯電話を活用した取り組み

ファビアンは、将来に向けた取り組みのためには、ネットワークを構築し、データへのアクセスを可能にすることが重要であると指摘しました。Facebookのユーザー数は世界一人口が多い中国より上回っている事実や、移民/難民の子どもたちが必要なサービスを受けるには、従来型の国ごとに異なる手続きよりもデジタルIDを活用した支援のほうが安定的に子どもにサービスを届けられる点を例示し、紹介しました。

携帯電話のSMS機能を使って、コミュニティの情報や自分の意見を送れるU-Report。2011年にウガンダで始まり、現在は世界28カ国で350万人以上のアクティブユーザーがいる。リアルタイムで回答率や性別、場所別、年齢別の回答などがウェブ上で確認できる。

© UNICEF

携帯電話のSMS機能を使って、コミュニティの情報や自分の意見を送れるU-Report。2011年に始まり、現在は世界28カ国で350万人以上のアクティブユーザーがいる。

ユニセフが開発したRapidProと呼ばれる携帯電話向けのオープン・プラットフォームは、これまでに教員等による学校情報の入力・集計(EduTrac)や保健データの収集(MTrac)、出生登録(Mobile VRS)などに活用されています。初期段階で投入されたウガンダでは、導入時の出生登録率は30%(2011年)でしたが、68%(2015年)まで改善しました。

さらに、社会をよりよくするための「声」を届けるために開発したU-Reportを紹介。U-Reportでは、携帯電話のテキストメッセージ機能を使って自分やコミュニティの情報を発信できるとともに、アンケートの集計も可能です。アンケートの回答率や性別、場所別、年齢別の回答などをウェブ上でリアルタイムで確認できます。2015年当時、6万1,000人のユーザーがいたリベリアである質問をしたところ、10分以内で1万3,000回の回答があったケースや、表に出てきにくい問題に対する回答を集め、政府が対応した事例を紹介しました。

データサイエンスによる予測分析

携帯電話会社から提供された通信履歴の解析により、エボラ出血熱が流行していた2015年当時の感染発生地カフーと首都フリータウンの人の移動性の分析結果とエボラの発症件数を示し、緊急時にリアルタイムで情報を収集することができれば、支援に活用できる可能性があると述べました。また、2016年に流行したジカ熱についても同様の分析を行い、入手できるビッグデータを増やし分析の精度をあげることで、データサイエンスが緊急支援に役立てられる可能性を示唆しました。 

ドローン(無人航空機)の活用

乳児のHIV診断までの時間短縮を目指し、ユニセフとマラウイ保健省は血液サンプルを積んだ自動飛行ドローンによる10kmの輸送テストを実施。マラウイのHIV感染率は10%、世界で最も高い国のひとつ。

©UNICEF/UN013394/Khonje

マラウイのHIV感染率は10%、世界で最も高い国のひとつ。感染拡大防止には早期診断がカギとなる。

さらに、ドローンによる画像撮影、インターネット接続の向上、少量の物資輸送についてもふれ、マラウイとバヌアツで進行しているドローン空路の運用計画について紹介しました。乳児のHIV診断までの時間短縮を目指し、ユニセフとマラウイ保健省は血液サンプルを積んだ自動飛行ドローンによる10kmの輸送テストを2016年に実施。現在は、安全基準を定めたうえで45kmにおよぶ空路を設け、ドローン企業へフライトへの参加を呼びかけています。また、バヌアツでは今年6月にワクチンを運ぶテストを予定しています。

 

イノベーション・ファンドの設立と協業だからできること

イノベーション部門は2016年6月、ユニセフが掲げる世界的課題に取り組む技術系スタートアップを支援し協業するため、1,100万米ドルでイノベーション・ファンドを設立しました。ファビアンはそのリーダーを務めています。出資額は10万米ドル以下で、オープンソース、初期段階にある技術が対象となります。Google、Facebook、IBMといった企業が出資者に名を連ねており、ファビアンは日本企業にもファンドへの出資を呼びかけました。

イノベーション・ファンドのウェブサイト。ポートフォリオのほか、過去の投資状況が確認でき、提案もできる。

©UNICEF

イノベーション・ファンドのウェブサイト。ポートフォリオのほか、過去の投資状況が確認でき、提案もできる。

ファビアンは、このファンドへの出資はすなわち「よいことをすることはよいビジネスになる(Doing good is good business)」との点を強調しました。ビジネス上の関心領域を共有し、調査開発を行い、ジョイントベンチャーを設けることで、共有しうる調査やコミュニケーション、製品を生み出せると述べました。

ドローンを一例に、安全な飛行や運用のために必要となるものは共通であると指摘し、ユニセフが運ぶものはワクチンや血液で、企業が運ぶものはピザといった違いに過ぎない。つまり、ルール作りや操縦のためのソフト開発などは協業や共有できるといいます。一企業には難しい公的なルール作りや法整備は、ユニセフが当該国政府とパートナーとなって推進できることも紹介。ほかにも、デジタルIDやブロックチェーン、マシンラーニング、金融機関の口座を介さない送金や通貨、ウェアラブルについても、取り組んでいきたいと語りました。

そのうえで、実際に支援を行う現場や現地の人と取り組むことの重要性を述べ、イノベーション部門があるニューヨークで試作したものは、100%失敗してきたと話し、笑いを誘いました。イノベーション・ファンドには、これまでに190の提案が届き、28カ国の35プロジェクト220万米ドルを出資しており、各プロジェクトや進捗、出資状況はウェブサイトで随時公開されています。

最後に、ファビアンは、よいこと、世界の問題に取り組むこと、ビジネスとして成立させることは同時にできると訴えました。最良の新しい技術は、全く予期しないマーケットで開発されることがあると述べ、発表を終えました。

パネルディスカッション ~イノベーションは子どもたちに何ができるか? 

続いて、パネルディスカッション「子どもたちのためのイノベーション× 宇宙、ドローン、IoT(モノのインターネット)」が行われました。ユニセフ・イノベーション部門も取り組む宇宙、ドローン、データの分野で活躍されている国内の方々にご登壇いただき、自社の事業で子どものためにどのような取り組みができるかといったアイディアや事例を発表いただき、意見交換を行いました。

イノベーションともよばれる自社のビジネスを、子どもたちにどのように活用できそうかアイディアを発表してくださったパネルディスカッションご登壇のみなさま

© 日本ユニセフ協会/2017

イノベーションともよばれる自社のビジネスを、子どもたちにどのように活用できそうかアイディアを発表してくださったパネルディスカッションご登壇のみなさま

モデレーターのグローバル・ブレイン株式会社 パートナー(宇宙・ロボティクス担当)青木 英剛氏は「子どもたちのためのイノベーションと各業界がどのように手を取り合い、新しいビジネスに活路を見出せるか、みなさまと一緒に考えるきっかけにしたい」とパネルディスカッションを開始、各分野の動向や展望を解説しました。

超小型衛星を製造/運用する株式会社アクセルスペース 代表取締役 中村友哉氏は、超小型衛星を50機まで打ち上げ、世界中を毎日見られる新しいインフラを作ろうとしていることを説明。自然災害などの発生状況を画像で比較できるほか、地上にあるデータと組み合わせて解釈すれば、活用用途が大きく広がると発表しました。

地上データが不足している途上国のほうが、超小型衛星によるデータを活用できる余地が大きく、特に途上国での地上データを多数有するユニセフは魅力的であると述べ、ファビアンはデータサイエンスの面で共に取り組みたいと返しました。

AI(人工知能)、IoT、ロボティクスの技術を活かした事業を行う株式会社リアルグローブ 代表取締役社長 大畑 貴弘氏は、熊本地震におけるドローンの活用事例やテスト、学習記録データを活かした事業を紹介。教育分野に加え、ドローンから得られるデータを活用して救急医療、災害対応への取り組みを進め、子どもや社会に貢献したいと述べました。

大畑氏は、教育問題は国の問題と捉えていたが、ディスカッションを通じて違う課題に気づいたと述べました。ファビアンはテクノロジーやドローンによって、ネットにつながり、より多くの情報が得られるようになること、自動翻訳などで自らの言語で学べる可能性が高まることを例示しました。

日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 澤 円氏は、安心安全にデータやネットを活用できるようにすることは同社の使命として、サイバー犯罪への取り組みを紹介しました。

サイバー犯罪の一例としてオンライン上の子どもの画像の売買や人身売買などを挙げ、これらの犯罪から子どもたちを守るために、同社の画像認識技術(Photo DNA)を無償でFacebookやTwitter、Google などに供与し、子どもの保護や犯罪検挙に活用されている事例を発表しました。PhotoDNAは、読み取った画像情報を保存し学習してほかの画像との照合を行っています。澤氏は、イノベーションの正の面を享受する一方で、人を幸せにしないことに技術が使われないよう留意すべきと指摘し、一例としてAIを挙げ、企業の枠を超えてAIの平和的活用に向けた倫理委員会がつくられたと紹介しました。

モデレーターの青木氏は、イノベーション面でのパートナーシップについて、ユニセフは場を提供でき、企業は技術やサービスを提供できる、双方の強みを生かしたかたちで実現できるのではないかと述べました。

イノベーション部門のウェブサイト。各国での取り組みや事例のほか、求人も掲載されている。

©UNICEF

イノベーション部門のウェブサイト。各国での取り組みや事例のほか、求人も掲載されている。

ファビアンは「イノベーションとは、利益を生むのではなく、新たな価値を創りだして共有していくこと。わたしは新しいビジネスを始めるときに、価値を生み出すことを考えている。共有される価値こそが、社会へ残すべきインパクト。このために、お互いの強みを活かしながら、新しいパートナーシップをつくっていきたい」と述べて今後への期待を示し、パネルディスカッションは終了しました。

* * *

サプライ(物資調達)セミナー

また翌20日には、ユニセフのサプライ(物資調達)部門のセミナーを開催。ユニセフ本部 物資調達局 シニア・サプライ・マネージャー レジーナ・ウェーバーが登壇し、ユニセフのサプライ(物資調達)の全体像から方針とプロセス、契約形態、サプライヤーになるまでの手順、また近年力を入れている現場で使用する製品のイノベーションの事例などを発表しました。

詳しくは、セミナー開催報告 「子どもたちのための新たなパートナーシップを求めて:サプライ」 をご覧ください。


トップページへ先頭に戻る