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日本ユニセフ協会
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セミナー開催報告
「子どもたちのための新たなパートナーシップを求めて:サプライ」
2017年4月20日@ユニセフハウス

【2017年5月16日  東京発】

公益財団法人 日本ユニセフ協会とUNICEF東京事務所は、2017年4月20日、UNICEF官民連携セミナー「Innovation for Children: 子どもたちのための新たなパートナーシップを求めて:サプライ(物資調達)」を、企業・団体向けに開催しました。

ユニセフ本部 物資調達局 シニア・サプライ・マネージャー レジーナ・ウェーバーが来日し、ユニセフのサプライ(物資調達)の全体像から方針とプロセス、契約形態、サプライヤーになるまでの手順、また近年力を入れている現場で使用する製品のイノベーションの事例などを発表しました。

発表内容の抜粋をご紹介します。

国連機関で最大の物資調達を行うユニセフ

物資調達の全体像を説明するユニセフ本部 物資調達局 シニア・サプライ・マネージャー レジーナ・ウェーバー

© 日本ユニセフ協会/2017

物資調達の全体像を説明するユニセフ本部 物資調達局 シニア・サプライ・マネージャー レジーナ・ウェーバー

デンマークの首都コペンハーゲンにあるユニセフの物資調達局は、人道支援機関では最大規模となる倉庫を港に構え、世界各地で使用する物資を調達、供給しています。

調達された物資は、ドバイ、上海、パナマ、ジブチの地域倉庫や各国の事務所の倉庫にも備蓄され、自然災害などの緊急事態にも発生から「48時間以内に支援物資を届ける」ために活用されています。物資調達に関わるスタッフは94カ国で1,000人以上に上り、現場での支援活動を支えています。

 

2015年、ユニセフが調達した物資とサービスは34億米ドル以上、国連内で最大となりました。その半数を占めるのがワクチンです。続いて医薬品、栄養物資、医療品、国際輸送、建設関連、水と衛生、ワクチン保冷のためのコールドチェーン、教育、蚊帳が続きます。物資調達局は、厳しい品質検査や管理が必要なワクチンや医薬品を中心に調達をしており、これら以外の物資は、主に各国事務所が調達しています。また、ユニセフは自身のみならず政府や団体に代わって調達を行い、適正なプロセスや価格、品質検査を受けたものを調達している一方、長期的な契約の締結や複数社からの調達などを通じて市場の安定性や成長にも関わっています。

幅広い物資を取り扱う中で、ウェーバーは「調達する物資は変化していく。現在は、SDGs達成に貢献できるかとの点でも吟味している。いま取り扱っているものを今後も調達し続けるということではなく、新たな製品やサービスを調達する必要があり、さまざまな製品やサービスの情報を求めている。製品サービスを扱う方々には、積極的かつ継続的に情報を発信し、コンタクトを取り続けてほしい」と呼びかけました。国別の調達額では、ワクチンや医薬品を購入しているインド、アメリカ、ベルギーが上位を占めています。日本からの購入額は1,310万米ドルで39位となっており、自動車、ワクチン、蚊帳などを調達しています。

また、物資調達局では、資金をより効率的かつ効果的に活用すべく、契約形態などによる経費削減にも取り組んでいることも紹介されました。

調達におけるポリシー

国連は、機関ごとに目的や活動が異なるものの、調達においては共通のポリシーを掲げています。

公正で透明性があること、経済的かつ効果的であること、価格に対して最善の価値があること(価値=価格ではないこと)、各機関の目的に役立つものが挙げられます。

ユニセフはこれら以外に、複数企業による入札の実施、入札情報の幅広い発信、技術や品質面で公的な基準を満たしていること、児童労働や地雷などに関わる企業からは調達しないことなどの独自のポリシーを掲げています。

入札には、広告やUN Global Marketplace (国連世界市場データベース:英語)などで公表される公開入札のほか、事前に入札への関心や参加の意思を登録した企業を対象にメールでの案内等に基づく限定入札、また緊急を要する場合等の直接調達の3つの方法があります。入札決定後には、複数年の契約を結び、調達ごとに発注書を出す流れとなります。

ユニセフのサプライヤーになるには

具体的な手順は、ウェブサイトを参照しながら説明を行いました。

まず、ユニセフの物資調達に詳しくなることが挙げられました。

ウェーバーは、ユニセフの物資調達の年次報告書(英語)やウェブサイト(英語)が例示され、すべての情報はウェブサイトに公開されており、これらの情報に慣れること、定期的に確認し続けることが重要と繰り返しました。

ユニセフは約2,000の物資を調達しています。これらの物資は、Supply Catalogue(英語)に掲載されており、機能やサイズなどの仕様などの詳細情報も公表されており、製品ごとの入札スケジュールの概要、具体的な入札情報や期限、必要な書類、問い合わせ先なども盛り込まれています。入札に参加したい、検討をしたい、質問をしたいということがあれば、各問い合わせ先のアドレスに積極的に連絡をして、やりとりを重ねてほしいとの言及もありました。なお、ワクチンや医薬品については、ユニセフはWHO(世界保健機関)の基準を満たしていなければ、入札に参加できないとの説明もありました。

入札に参加する前に必要となるのが、UN Global Marketplace (国連世界市場データベース:英語)への登録です。本データベースは、国連機関共通で運用されており、企業情報や製品情報を登録できます。登録をすると、入札の案内を受け取れるほか、入札結果の確認もできます。

製品のイノベーション

物資調達局は、現場で使用しているまたは必要とされる物資が、供給されるように、製品イノベーション(英語)にも取り組んでいます。

現在、肺炎診断タイマー、ジカ熱診断方法とワクチン、リアルタイムでの大腸菌発見装置などがイノベーション対象になっています。

肺炎の診断に欠かせないタイマー。より簡易に正確に診断できるよう、ユニセフ・サプライ部門主導で改良版を開発している。肺炎は5歳未満の子どもの命を奪う主な病気のひとつ。

©UNICEF

肺炎の診断に欠かせないタイマー。より簡易に正確に診断できるよう、ユニセフ・物資調達局主導で改良版を開発している。肺炎は5歳未満の子どもの命を奪う主な病気のひとつ。

開発は、ニーズの把握、コンセプト固め、実地テストの段階を経て、改良を加えながら進められます。ニーズの把握後、ユニセフは製品に必要な仕様をまとめて公表し、企業にテストや製品開発への参加を呼びかけます。

開発が進んでいる製品のひとつ、肺炎診断タイマーは、2016年末にエチオピアでの実地テストが行われました。実際に使ったうえでの改良点などが協議され、現在も開発が進んでいます。

参入に向けて

発表後の質疑応答では、活発なやりとりが交わされました。ウェーバーは、「サプライヤーへ関心があれば、まず、国連の調達のデータベースやユニセフの物資調達に関する情報、つまり企業にとってのマーケットについて、慣れ親しんでほしい。そのうえで、コンタクトをとる、企業や製品情報、担当者の変更なども含めて情報をアップデートし続け、関心があることをわかるようにしてほしい」と呼びかけました。

参加された方からは、「これまでユニセフ調達部門の方から直接お話しをお伺いする機会がありませんでしたので大変有益でした」「今後も日本での開催を希望します。大変分かり易く、企業ニーズにマッチしたセミナーであった」などの声が寄せられました。

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