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財団法人日本ユニセフ協会




2002年6月20日

アフリカ南部諸国に食糧危機

来年春までに、約1300万人が食糧難に

 アフリカ南部の6カ国(ジンバブエ、マラウイ、ザンビア、モザンビーク、レソト、スワジランド)では、農作物の収穫量が大幅に落ち込み、まだ収穫期にある現段階から深刻な食糧難が予想されています。食糧貯蔵管理が不充分なこともあり、既に地域全体で770万人が飢餓の危機にさらされ、その数は来年の3月までの間に1280万人にまで増えると考えられています。もしも支援が遅れたり、冬季の収穫が予想を下回った場合には、食糧支援を必要とする人の数はさらに増大する恐れがあります。

 2期続いた農耕期の悪天候は、アフリカ南部の広い範囲に大幅な収穫量の減少を引き起こしました。通常であれば、前年からの蓄えで不足分を補うところですが、続く収穫減のために補うだけの貯蔵量がありません。状況が深刻なジンバブエでは、人口のほぼ半数が食料難に直面しています。ジンバブエをはじめとするいくつかの国では、すでに国家災害を発令しています。WFP(世界食糧計画)等によると、南部6カ国で合計345万トンの穀物が不足していることが確認され、国連は、このうちまず120万トンを緊急に手当てする必要があると見積もっています。
 6月6〜7日には、ヨハネスブルクにおいて国連機関、NGO、南部アフリカ開発委員会(SADC)等による地域会議が開かれ、今回の食糧危機の規模や必要な人道支援について話し合われました。この会議では、直接的な食糧支援のみならず、食糧難に付随する栄養問題、水と衛生、農業復興、HIV/エイズ対策といった食糧以外の対策の必要性も確認され、とくに弱い立場におかれている子どもや女性への支援においてユニセフの役割の重要性が強調されました。

現在の各国の状況

<ジンバブエ>

   干ばつに加え政府による農地収用、生産物価格管理の失敗、外国為替制限などの政策面での要因も影響し、深刻な状況に直面している。今年の末までに、ジンバブエ国内では610万人が緊急食糧支援を必要とし、そのうち440万人は地方にすむ人々であると考えられ、70万トンの食糧が必要と見積もられている。

<マラウイ>

   マラウイの食糧危機の大きな原因は、2期続けての不作である。今後食糧支援を必要とする人は320万人まで増え、20万トン以上の食糧が必要になると見こまれる。またマラウイでは、食べるために性産業に携る女性が増え、HIV/エイズが広がっているとの報告もある。

<モザンビーク>

 

 今年の干ばつと2000年の洪水により、同国南部のいくつかの地域ではほとんどの農作物が被害を受けている。北部地域には輸出可能な余剰作物が1万トン以上あるが、南北の交通インフラが未整備なため、北部の余剰分を南部地域に運搬することが非常に難しい状況。来年には、50万人以上が食糧難に直面し、6万2千トンの食糧支援が必要と見積もられている。

<レソト>

 

 レソトでは、干ばつによる不作、ひょう、害虫の広がり、また土壌管理が不充分なことにより、穀物の収穫量が大幅に落ち込んでいる。危機に貧しているのは、およそ44万5千人、5万トンの食料支援が必要とされている。

<ザンビア>

 

 昨年のトウモロコシの不作に続く、今年の南部〜東部にかけての干ばつが、ザンビアの農業に大きなダメージを与えている。2年続く収穫量の減少に加え、HIV/エイズの広がりも深刻なザンビアでは、国民の7割が貧困の中で暮らしている。多くの家庭では、家畜などの財産も手放し、230万人が緊急支援を必要としている。

<スワジランド>

 

 スワジランドも、前年の不作に続き作物が成長する重要な時期に日照りに襲われ、食糧が枯渇している。来年までに、23万人が食糧難に陥り、1万2千トンの支援が必要である。

ユニセフの緊急支援

   ユニセフは、こうした大規模な食糧不足は栄養不良、病気の発生率の上昇、死亡率の上昇、また就学率の低下や児童労働の増大など多くの悪影響を子どもたちに及ぼす恐れが大きいとみています。 ユニセフは、特に状況が悪化しているジンバブエ、マラウイ、ザンビアにおいて、5月末までに以下の緊急的な支援を行うと同時に、今後の緊急支援を確定するため、現在南部アフリカ諸国の子どもと女性の状況とニーズを調査中です。

<ジンバブエ>

   ユニセフジンバブエ事務所は、子どもたちの栄養状態についての調査を進め、3万2,200人の5歳未満児のために600トンのUNIMIX(栄養補助食)を調達。さらにコレラなどの病気の発生を防ぐために、各地方政府を通じてプラスチック製飲料水ケースを2000個、石鹸360個、浄水剤10万錠、コレラ予防についての情報パッケージ200セット等を配布した。

<マラウイ>

   ユニセフマラウイ事務所は、3000人の5歳未満児に900トンの、また妊婦と母乳育児中の女性に5000トンの高栄養食を配布した。同事務所はまた、コレラ対策としての衛生用品、下痢を防ぐための経口補水塩(ORS)等の準備をしている。

<ザンビア>

   ユニセフザンビア事務所は、全国的な食糧・栄養状態調査に専門家3名を参加させると同時に、深刻な栄養不良に陥ったアンゴラ難民キャンプの子どもたちへの補助食、医薬品などを調達。また水の確保や衛生問題、教育などの分野で活動している。