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財団法人日本ユニセフ協会




UNICEFリベリア緊急報告(9月1日)

◆ユニセフのリベリア支援は、9月中にあと680万米ドルを必要としています◆

 西アフリカのリベリアでは、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)とアフリカ連合(AU)、国連の立会いのもと、8月18日にガーナの首都アクラで、政府と反政府勢力(リベリア和解民主連合(LURD)、リベリア民主運動(MODEL))が和平協定に調印し、1989年以来14年間続いた内戦に終止符がうたれました。長年の内戦下で首都モンロビアをはじめとするリベリア全域の治安が不安定で、たち遅れていたリベリアの人道支援。なかには、非常に困難な状況にあるにもかかわらず、この3年間に支援が受けられなかった地域もありました。また14年間紛争が続いたことは、14歳以下の子どもたちが安全で暮らせるという、最も基本的なことを奪い去られてきたことを意味しています。

 リベリアの人たちの10人に9人は、毎日1米ドルで暮らす極貧にあり、その半分は0.5米ドル以下の水準にあります。85%が失業状態にあり、6歳から12歳までの学校に通う年齢の子どものうち81%が学校に通っていません。

image1  現在の深刻な問題は、首都モンロビアに流入する多くの国内避難民への対応です。内戦終結前の数ヶ月にわたる激しい戦闘で、暴力を逃れて数万人規模の人々がモンロビアを目指して移動し、首都の人口は現在130万人に膨れ上がっています。避難先の社会に溶け込んで生活する人々もいますが、50万もの人々が国内避難民キャンプや、公共施設や学校などでの生活を余儀なくされています。一方、食糧、水・衛生施設、医薬品、保健センターなどが戦闘で破壊されたり略奪にあったため、著しく不足しています。首都モンロビアでは、このような国内避難民、避難先の社会に溶けこんだ人々など、多くの被災民が援助を待っています。

 しかし今、明るい兆しが見られています。このたびの和平協定で、反政府勢力のリーダーたちは、今後の人道支援活動に対する安全の確保などを約束しました。相次ぐ殺りく、大規模な国内避難民、あちこちで行われている性的虐待にも関わらず、10年以上にわたり国際社会から‘忘れられた緊急事態’の国だったリベリア。国際平和維持軍もリベリア入りし、支援が十分に行き渡らなかった70%の人々を含む国民全体への人道支援活動が可能となった今、リベリアの復興と開発の基礎固めに数年来の絶好の機会を得ています。

 ユニセフは他の人道機関とともに、リベリアでの人道支援プログラムの範囲を強化拡大し、2段階にわけた支援を始めています。
 まず最初に、激しい戦闘が行われた地域を中心に治安や人道支援状況の調査をおこない、必要とされる物資を割り出しを急いでいます。また9月中に、モンロビアと周辺地域において戦争の影響を最も受けてきた、キャンプや簡易避難所などに暮らす35万の最も困難な状態にある人々(ほとんどが子どもと女性)へ緊急支援物資の提供などを行います。  9月から12月には、他の機関と協力してリベリア各地域の子どもたちの状況と支援状況を調査し、支援が必要な地域の割り出しと支援の拡大をすすめていきます。

●子どもの保護<ユニセフ主導・優先事項>
 数万人の子どもが政府軍と反政府勢力によって徴兵され、また略奪、レイプ、暴力、誘拐、殺人が数多く報告されています。家族が殺され兄弟が強制的に徴兵されるのを目撃し、家族が離れ離れになるなか、学校は閉鎖し、保健センターが機能せず、子どもが保護される環境は失われています。
image2  ユニセフの子どもの保護の活動は、紛争で被害のあった、子ども兵士、性的な奴隷として扱われてきた子ども、性的暴力の被害者、繰り返し避難を強いられてきた子どもを中心に進められています。ユニセフは、親と離れ離れになった子どもを親元へ返す家族再会支援や、武力勢力から逃れてきた子どもたちに対する心理ケアを始めました。またあらゆる武力勢力に対し、子どもを兵士として使わないように呼び掛けています。首都モンロビアでは、70の孤児院に4000人、リベリア全土では118の孤児院に合計で8000人の子 どもたちが生活しています。ユニセフはこれらの孤児院に対し、不足している石鹸、高エネルギービスケットなどの基本的な物資や、心理的、身体的ケアに必要なおもちゃ、スクールインナボックス(子どもと教師に必要な学習資材セット)などの教材を提供しています。

●水と衛生<ユニセフ主導>
 安全な水は著しく不足し、ゴミの収集と処理が機能せず衛生状態も深刻化しています。ユニセフでは、主に国内避難民を対象とした給水車による給水活動を支援しています。また、貯水袋や井戸設置を進めています。
 いまだに主要な水の供給源は、モンロビアの中心部と東部郊外で行われている給水車による給水活動となっています。そこでユニセフとWHOは、モンロビアに散在している未整備の井戸の塩素殺菌処理を計画しています。長引く内戦と資金不足によって、この殺菌処理作業の着手がこれまで遅れていましたが、8月25日から技術者たちが作業を開始できるようになりました。この計画では、WHOが塩素剤を、ユニセフが殺菌処理に必要な器具、雨具、作業にかかる日当などを提供することになっています。衛生面では、ユニセフは自治体やNGO、子どもたちとともに、“モンロビア清掃キャンペーン”を進めています。

●保健と栄養
 モンロビアの人々の健康状態はまだまだ不安定な状況ですが、最も深刻な状況にある人たちへの支援が行き渡りはじめています。反政府勢力LURDが支配する地域でも、LURD幹部と人道支援への安全が保障されたことで、8月21日から保健・栄養調査を開始できました。
 保健分野では、予防接種キャンペーンや医療体制の再建にとりくんでいます。ユニセフは、現在備蓄中のワクチンや医薬品が使える状態にあるか調査すると同時に、コールドチェーン器材を提供し、第2回目のはしかの予防接種キャンペーンの実施に備えています。
 現在、国内避難所の調査をすすめるとともに、診療所、保健センター、NGOなどに基礎的な医薬品、経口補水塩(ORS)、乳酸リンガル液を提供しています。深刻化する水と衛生状態によって増加したコレラ患者に対しては、下痢による脱水症状をふせぐ経口補水塩(ORS)75000袋、乳酸リンガル液の静脈注射用溶液(1760リットル)を、栄養不良の子どもや女性に対しては、高たんぱくビスケット、高エネルギービスケットを提供しています。ビタミンA補助剤、マルチビタミンの配給もまもなく始めることを予定しています。

●ユニセフ現地スタッフによる7月19日から8月22日までの活動
image3 高たんぱくビスケット1.5トンや高エネルギー  ビスケット、防水シートをNGOなどを通じて  国内避難所の困難な状況にある子どもや女性たち  に提供しました。
5歳未満の子ども128000人と、出産適齢期に  ある女性208686人を対象として、7月にはしか・破傷風の予防接種を実施しました。
モンロビアにある9ヶ所の国内避難所の20000人  の人々に安全な水を提供、1500〜5000リットル  の貯水袋を設置しました。
基礎的な医薬品、経口補水塩、乳酸ナトリウムを、国やNGOなどで運営する12の地域診療所に配給しました。

●ユニセフの緊急援助ライン
 8月16日に、ユニセフのコペンハーゲンの物資センターから、50万ドル相当の緊急支援物資が到着しました。内訳は、3ヶ月間25万人に対応できる量の緊急保健キット、栄養ミルク13トン、粉末状の栄養補助食(ユニミックス)1.275トン、高たんぱくビスケット11000トン、貯水タンクとコンテナー、浄水剤などです。8月22日にモンロビアに到着した第2便の航空便では、注射器、毛布、食糧以外のその他の支援物資や避難所用物資など、50万ドル以上相当の緊急支援物資56.7トンが提供されました。

●9月中に680万米ドルが必要
 ユニセフは、8月から12月までのリベリアの子どもと女性を支援するために、約1700万米ドルの資金を国際社会に要請しており、そのうち9月中に行われる、最も支援を必要とする子どもや女性への支援には、970万米ドルを必要としています。8月20日までに、280万米ドルを確保しましたが、まだ680万ドルが不足しています。

 日本ユニセフ協会では、このようなユニセフの活動を支援するため、アフリカ緊急募金の受付を行っています。皆様のご協力をお願いします。