公益財団法人日本ユニセフ協会
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アフリカ干ばつ緊急募金 第36報
ソマリアの教育システム再興に向けて

【2012年1月10日 ソマリア発】

© UNICEF Somalia/2011/Pflanz
ソマリランドのブラオにあるコオッサル小学校で調査書に記入するアリ・アブドゥラーさん。

アリ・アブドゥラーさんは、教室の前に立って、子どもたちに年齢や学校までの距離、孤児かどうか、勉強で必要なものはないかなどを聞いています。

コオッサル小学校の校長を務めるアブドゥラーさんは、今までに例のない小学校就学数調査にかかわっている数千人の教師のうちのひとりです。ソマリア北部の学校で初めての包括的な政府主導の調査が進められているのです。

「以前までは、教育省に、学校設備についての正確なデータはありませんでした。理論上の推測に基づく情報だけだったんです。」「今は、正しい情報があるので、児童・生徒数や教科書やトイレ等の不足状況が把握できますし、教育省は、財務省やドナーに対し、学校に何があって、何が必要なのかを伝えることができます。」(アブドゥラーさん)

毎年実施されるこの調査は、ソマリアの教育システムを徹底的に再興・改善させるための広範囲にわたる活動の一環として行われています。

初期システム

© UNICEF Somalia/2011/Pflanz
コオッサル小学校で、調査書の記入法を説明する研修生。

多くの学校が、電気や水道、教科書、トイレが不足し、机や椅子でさえ十分ではありません。教員への研修も限られており、教師の給与は地域からの寄付に大きく依存している状態です。

「こうしたことは、非常に基本的なことで、機械的に行われるべきもののはずです。でもソマリアでは、そうではありません。」隣国ケニアにある欧州連合代表団の農村開発、社会福祉・インフラ設備部門代表のイザベル・ファリア・デ・アルメイダさんはこう話しました。

「教育省が教師の人数が分からなければ、どうやってシステムを運用していくのでしょうか。どのくらいの予算が必要なのか、教科書を何冊印刷するのか、就学児童は何人なのかといったことを把握していないと、ニーズが分かりません。」(アルメイダさん)

専門家を呼び寄せる

持続的に改善していけるように、ユニセフは、欧州連合やパートナー団体とともに、ソマリアの教育省の対応能力を拡大するための革新的なプログラムを立ち上げました。この戦略の中核は、外国にいるソマリア人の専門家を祖国に呼び寄せ、教育省高官として配置し、彼らの経験を生かそうというものです。

© UNICEF Somalia/2011/Pflanz
ソマリアの教育専門家のひとり、ハッサン・スレイマンさん。

ハッサン・スレイマンさんは、ソマリアに戻ってきた10人の専門家のうちのひとりです。スレイマンさんは、ソマリア教育行政のための総合能力開発(ICDSEA)プログラムを通じて、ソマリアの教育省と高等教育を支援しています。ICDSEAは、計画と政策、人材、財務管理、品質保証、ジェンダーの平等に焦点があてられています。

「技術や知識、構造といった全ての分野に関連する制度面での組織能力が、適切な教育システムを運用するためには不十分であることに気がつきました。」ソマリアでの武力紛争で避難を余儀なくされ、英国で育ったスレイマンさんはこう話します。「我々は、素晴らしい政策文書を作るために、国際的なコンサルタントに頼っていますが、それを実行する技能ありませんから、あまり意味がないのです。」

また、ウガンダで生まれ育った技術顧門のアミナ・オスマンさんはプントランド地方で活動し、様々なカリキュラムを調整しながら、学期末試験の統一性の確保に努めています。また、ケニアで育ったアブディラーマン・モハメッドさんは、小学校の調査データをまとめるコンピュータープログラムの運用試験を行っています。

10人の専門家には、ソマリア国内から選ばれたそれぞれ2人の研修生がつき、将来ソマリアの行政機関で活躍することが期待されています。 南部の政情が安定すれば、同様のプログラムをモガディシュの教育省で実施することも計画されています。

女の子のために

ある朝、プントランド地方ガローウェで、サーロ・コシンさんが、行政官たちの前で、女の子の奨学金制度をスタートすることを発表しました。オランダで育ったコシンさんは、女の子の就学率向上のために活動しています。

「教師は、ジェンダーについて教わっていません。」「従来のクラスでは、女の子と男の子は分けられ、教師はいつも男の子に注意を向けていて、口にはしませんが、女の子は静かに、男の子は発言するようにしているようです。」

コシンさんは、こうした昔から根付いている差別や偏見を変えるには時間がかかると話します。しかしながら、全ての教育政策にジェンダーの平等が確保されれば、状況は改善していくはずです。

「ソマリア政府が自らのシステムを構築し、政策や有能な人材の開発をすることへの支援は、全てのソマリアの子どもたちに質の高い教育を受ける機会を提供する唯一の方法であると信じています。そして、女の子がこうした恩恵を受けることも確保することになるのです。」ユニセフ・ソマリア事務所のシカンデール・カーン代表はこう話しました。

「その一例として、女の子の奨学金制度を設置するために、ユニセフは、教育省のジェンダー部門を支援しています。」「この資金によって、最初の一年で、450人の貧しい家庭の女の子が学校に通っています。追加の支援があれば、今後、さらに数百人のソマリアの最も貧しい女の子たちに教育を受ける機会が提供されるでしょう。」

「同じ状況が続かないようにするためには、ここの政府高官の能力を高め、将来の全てのことを計画するしかありません。」「きっとうまくいくでしょう。私たちはすぐに、自分たちの足で歩けるようになるはずです。」 プントランド地方のアブドゥカディール・ユスフヌールは教育行政官はこう話しました。