公益財団法人日本ユニセフ協会
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アフリカ干ばつ緊急募金 第68報
二ジェール:食糧危機への対策〜地元に適した方法を

【2012年5月11日 ニジェール・ニアメ発】

© UNICEF/NYHQ2012-0178/Asselin
ニジェールのミリアにあるユニセフが支援している保健センターで、すぐに口にできる栄養治療食を利用して栄養不良の治療を行っている生後8ヵ月の娘のナナ・ファッソウマちゃんと母親のラヤ・アチロウさん。

二ジェールの多くの家庭にとって、慢性的な食糧危機と栄養危機は、“日常生活の一部”となっています。2011年に見舞われた雨不足と不作に続き、ニジェールは、今、2005年から数えて3回目の栄養危機のさなかに置かれているのです。

その半数以上は子どもで占められる600万以上の人々が、現在、食糧不足に直面していると推定されています。ユニセフやニジェールで活動を共にするパートナー団体は、重度の急性栄養不良で治療が必要になる子どもたちは、今年1年間で、39万4,000人以上に上ると推定しています。

「2005年、そして2010年・・・2012年と、困難に苦しみ続けています。こうした苦しい時期は、以前より頻繁に来るようになっている気がします。」 ゲゴロウ・トンドウ村の村会議員のカドリ・サルカさんは、こう語ります。「今年の収穫は、過去最低でした。去年の収穫高の10パーセントにも満たなかったんですから。」

2005年や2010年の危機の時と多くの類似点が見られる中、人道支援専門家と政府関係者は、過去数年にわたり経験してきた時と比較すると、ニジェールの多くのコミュニティには、現在の食糧不足の重荷に耐える準備があると考えています。

その大きな理由は、悲劇的な状況の再来を防ぐために、これまで、国や地方それぞれのレベルで、(干ばつなどの自然災害や予防に関する)知識や対応能力、回復力を強化するための対策が講じられてきたことにあります。ユニセフは、2005年から、政府をはじめとするパートナー団体が、ニジェールの子どもたちの栄養不良に対し、根本的かつ構造的問題の解決を図る長期戦略に基づく様々な取り組みを支援しています。

地元に適した解決策を

© UNICEF Niger/2012/Tidey
妹のアサナーちゃん(生後9ヵ月)に、STAが生産したすぐに口にできる栄養治療食を食べさせるタヒナちゃん(9歳)。

こうした取り組みの好例は、5歳未満の子どもたちの重度の急性栄養不良の治療のためのすぐに口にできる栄養治療食(RUTF)の国内生産に向けた、ユニセフとニジェールの地元企業(Societe de Transformation Alimentaire (STA))のパートナーシップにも見られます。

STAのファティマ・シセ社長は次のように説明します。「私が、2001年にこの会社を買収した当初、乳児のための栄養を強化した粥状の食品を生産していました。2005年にこの国が食糧危機に見舞われた際、ユニセフの方が、最も厳しい状況に置かれている子どもたちやお母さん方を助けるRUTFを生産できないだろうか、と尋ねてきたのです。その後のことは、ご存知のとおりです」

2005年、STAは、(『プランピーナッツ』として知られるRUTFを開発した)ニュートリセットとフランチャイズ契約を結び、RUTFの生産を開始しました。

ユニセフ・ニジェール事務所によると、STAは、2006年、ユニセフの栄養支援プログラムに供するため、30トンのRUTFを生産し、それは、ニジェール全土に届けられました。その後、生産量は、2011年までに2,700トンに達し、その92パーセントをユニセフが購入しています。STAは、2013年までに、年間生産量を5,023トンにする計画です。また、既に、近隣諸国にも輸出を始めています。ユニセフは、STAの最大の取引先であり続けています。

「これは、お金の問題ではありません。子どもたちを助けるためなのです。会社を始めた時も、当初は、利益は出ませんでした。」「ユニセフとのパートナーシップを通じて、我々も成長することができました。また、それが、この国の栄養危機に対し、この国の中で解決策を見出すという我々の目標を達成する一助になっています。」

パートナーと共に

© UNICEF Niger/2012/Asselin
ニジェール・ミアメにあるSTAの工場ですぐに口にできる栄養治療食(RUTF)の出荷を準備するスタッフ。

ユニセフがSTAを支援するにあたっての目標には、ニジェール国内は勿論、世界的なRUTFの供給量を増加させること、地元経済に資すること、将来、新たな栄養危機に見舞われた際にも(迅速に対応できるように)国内に、RUTFの十分な備蓄量と供給量を確保すること、そして、ニジェールにRUTFを輸入する際に掛かっている輸入・輸送費を削減することが含まれています。例えば、フランスからニジェールまでRUTFを運ぶのに、船便で40日を要します。(必要とする)100パーセントのRUTFをSTFから調達することによって、ユニセフ・ニジェール事務所は、最も厳しい状況に置かれている子どもたちに、確実に、さらに迅速に、RUTFを使った支援を届けることが出来るのです。

ユニセフとSTA のパートナーシップは、すでに成功を収めつつあります。ユニセフ・ニジェール事務所によると、2010年、ユニセフは、STA から約600万米ドル分のRUTFを調達する一方、約400万米ドル分を、国外から調達しました。しかし、2011年にSTAが生産体制を強化。それ以後、ニジェールで必要なRUTFは、全て国内で賄っています。

「STAとのパートナーシップにより、多くの恩恵を受けています。特に、巨大な倉庫を自前で用意する必要がなくなり、倉庫のスペースと費用が抑えられています。RUTFは、定期的に少量ずつ届けられています。このため、物流網への負担も軽減され、より効率的な物流体制が構築できました」 ユニセフ・ナイジェリア事務所物流・調達部のステファン・アルノー部長はこう話しました。

新たな栄養危機に直面している2012年。ユニセフは、ニジェールで活動しているパートナーと共に、栄養不良の子どもたちに、より迅速に、より安価な形で、命を守るRUTFを届けることができています。

このパートナーシップは、しかし、ユニセフがニジェールの子どもたちの栄養不良に対する根本的かつ構造上の問題に取り組むための長期戦略の一環として、ニジェールで展開している活動のひとつに過ぎません。栄養不良を削減し、予防するための活動も積極的に行われています。

ユニセフは、パートナー団体と共に、栄養不良と闘うために必要となるあらゆる手段を講じて、最も厳しい立場の子どもたちのニーズに安定的に応えられるよう、国際社会に対し、支援の強化を求めています。