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財団法人日本ユニセフ協会



ハイチ地震緊急・復興支援募金 第10報
求められる「子どもたちの視点」
ユニセフ、空港で不法な国外連れ去りを監視
ユニセフ広報官からの報告

【2010年1月20日 ハイチ・ポルトープランス発】

1月13日に現地入りしたユニセフ広報官タマール・ハーンが、19日、被災地の様子を次のように伝えてきました。

世界の最貧国の一つを、世界で最も大きな人道支援が必要な現場に変えてしまった大地震が発生してから1週間。被災された方々への支援。時間との競争が続いています。

水や食糧、衛生用品など、人々の命を守るための支援物資は、日々被災地に届き、その量も増えてきています。しかし、まだまだ問題は山積しています。

少なくとも数百、ひょっとすると数千にものぼると思われる人々が、スーツケースや紐で縛った身の回りのものを頭の上に載せて、首都のポルトープランスを離れはじめました。しかし、その一方で、市内の公園や学校、ゴルフコースにまで“出来た”避難キャンプでは、まだ多くの被災者が支援を待ち続けています。

力強く生きている被災者
© UNICEF/NYHQ2010-0044
震災で傷を負い、空港近くの仮設病院に担ぎ込まれた女の子。家族の消息はわかっていない。

こうしたキャンプでは、人々が生き延びるために、懸命の努力をしています。ある男性は、ジェネレーターを持ち込み、何百台もの携帯電話の充電をしていました。ある女性は、なんとか手に入れてきた食べ物を、焚き火で調理しています。キャンプによっては、被災者が「委員会」を作り、みんなが生き延びるために、それぞれの役割などを分担するようにしはじめています。

略奪や暴力が発生している場所もあります。しかし、私がこの目で見たのは、被災者の方々が、この途方もない状況の中で力強く生きている姿でした。

こちらでは、支援物資を運ぶトラックの燃料が入手しにくくなっています。それにもかかわらず、ユニセフは、今日、140台のトラックで給水活動を実施。14万人の被災者に安全な飲料水を提供しました。また、40人の子どもを保護している孤児院にも支援物資を提供。この施設では、まもなく、さらに50人の子どもたちが保護される予定です。

家族と離れ離れになってしまった子どもたちを保護する活動も始まっています。ただ町の中を歩き回るだけでも大変な状況の中で、これは大変時間が掛かる活動です。しかし、少しずつ状況が明るみになってきたようで、ユニセフは、家族の発見などの活動を間もなく開始する予定です。これまでに発見された、こうした状況の子どもたち約900人は、ユニセフが設置している一時保護センターで保護される予定です。

子どもたちの視点に立って
© UNICEF/NYHQ2010-0045
ポルトープランスの孤児院で保護されている子どもたちと話すユニセフ・ハイチ事務所のスタッフ。この日、ユニセフは、この孤児院に飲料水720リットルを届けしました。

私は、家族と離れ離れになった7歳のショーンちゃんと2歳の名前のわからない女の子と先週出会った仮設病院を再び訪ねました。今回は、ユニセフの子どもの保護の専門家ナディン・ペラウルも一緒です。私たちは、この二人の子と、9歳のサンディちゃん、そして6歳のメドシェちゃんの4人の子どもたちを、ユニセフが設置した一時保護センターに連れて行くつもりでした。しかし、仮設病院の医師たちによれば、ショーンちゃんと女の赤ちゃんの傷はまだ癒えていないので、今暫く入院を続けることが必要だとのことでした。

ショーンちゃんとサンディちゃんは直ぐに仲良しになり、その病院で治療を受けていた15歳の子どものお母さんが、この名前がわからない女の子の赤ちゃんの母親役をかってでてくれていました。

この様子を見て、2人だけセンターに連れて行くよりも、4人一緒に連れて行った方が良いと判断した私たちは、あと2日ほど、この子たちを仮設病院の一角の医師や看護師たちが寝泊りしている場所のすぐ隣で過ごさせることにしました。こうすれば、万が一の時も医師たちが対応してくれますし、何よりも、何者かによって国外に連れさられたりする心配がありません。

不法な養子縁組は、今回の地震が発生する前からハイチで問題になっていました。大地震が発生し、国中が混乱に置かれている中、ハイチの子どもたちが不法に海外に連れ去られる可能性が高まっています。

養子縁組も、親を失った子どもたちにとって良い「解決策」の一つです。しかし、今のハイチの現状を考えたとき、多くの人々が行方不明になった自分の子どもや親戚の子どもを捜していると考えられます。子どもたちの不法な国外連れ去りを防ぐために、ユニセフは2人の専門家を、空港に派遣しました。

「家に帰りたいの」
© UNICEF/NYHQ2010-0051
ポルトープランスの空港近くに設置された仮設病院で、ボランティアと話すマリエーヨラインちゃん(9歳)

腕の骨を折ったマリエーヨラインちゃん(9歳)も、昨日この病院にやってきました。親や家族と離れ離れになってしまった子どもたちをどのように支援すべきか?彼女のケースは、それを最も明快に私たちに教えてくれました。

ハイチには、貧困を理由に、親戚や第3者の家庭に出されてしまった子どもたちが20万人ほどいるとみられています。子どもたちに少しでも良い人生を送って欲しいという願いから行われているこの習慣。しかしながら、多くの子どもたちは、奴隷のように家事をさせられ、学校にも通わせてもらえず、暴力や虐待に遭っています。

そんな子どもたちの一人だったマリエーヨラインちゃんは、地震が起こった時、外に水汲みに出ていました。落ちてきたコンクリート片で腕を折った彼女を、「家族」はこの病院に置き去りにしてしまいました。今、彼女が私たちに求めているのは、彼女が生まれた南部の村に彼女を連れて行くことだけです。

「お母さんは死んでしまったの。でも、お父さんはまだ生きていると思うわ。もしそこに連れて行ってくれれば、どこが私の家かも教えてあげられる。とにかく、家に帰りたいの。」