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財団法人日本ユニセフ協会



ハイチ地震緊急・復興支援募金 第37報
ユニセフ広報官からの報告

−ユニセフ広報官ロシャン・カディヴィの報告−

© UNICEF/2010/Khadivi
首都ポルトープランスの通りでは、ハイチを襲った1月12日の地震の傷跡をいまだに目にすることができる。

私は、ユニセフの緊急支援活動の応援チームの一員として、30日前ハイチに入りました。

週末も休日も無く、猛暑の中、日の出から深夜までの勤務。トゥーサン・ルヴェルチュール国際空港の隣に立てられたユニセフの仮設事務所を拠点にした30日間は、目まぐるしく過ぎていきました。ポルトープランス市内にあったユニセフの現地事務所や備蓄倉庫も、1月12日の地震で使えない状態になってしまったため、ユニセフは、この仮設事務所を拠点に、大規模な支援活動を展開しています。

私自身、これまで、世界中の多くの緊急支援の現場で活動してきましたが、今回のハイチでの活動は、私にとって特別な経験となりました。首都ポルトープランスの道という道で、全半壊した建物を目にしました。この震災のすさまじさを物語っていました。

復興への硬い決意
© UNICEF/2010/Khadivi
地震で破壊されたポルトープランスにある教会。

震災後、北米からかけつけたハイチ出身の同僚に、ハイチの人々がどのようにこの震災に対処しているのか尋ねました。彼は、「ハイチの人々は、皆さんが想像しているよりもずっと確固たる決意をもっています。今、彼らの周りにあるもの全てが震災を思い出させてしまいます。だから、震災を忘れるのは難しいことです。それでも、ハイチの人々は前に向かって歩んでいます」と、答えました。

首都にあるシャン・ド・マルス公園は、特に毎年2月に開催されるカーニバルの時期は、非常に賑やかな場所でした。しかし今は、この公園もポルトープランス周辺の他の多くの場所と同様、被災者の避難所になっています。

公園で遊んでいる子どもたちを見つけました。子どもたちは笑いながら、ユニセフのスタッフが「赤ちゃんに優しいテント」の活動状況を確認しているのを興味深そうに眺めていました。ユニセフは、他の人道支援団体やハイチ政府と協力して、避難キャンプでの暮らしを余儀なくされている授乳期の母親と新生児のために、母親が安心して赤ちゃんに母乳を与えることができる空間を確保した「赤ちゃんに優しいテント」を各地に設置しています。

またこの公園では、清潔な飲料水の提供、子どもたちへのはしか、風疹、破傷風、ジフテリア、百日咳の予防接種、トイレの設置、保護者と離れ離れになった子どもたちの発見・登録などの活動も展開しています。

近づくハリケーンの季節
© UNICEF/2010/Khadivi
崩れてきた建物の下敷きとなり、押し潰された車(ポルトープランス)。

雨季とハリケーンシーズンの季節が近づく中、ユニセフの水と衛生専門チームは、ハイチ当局と共に、トイレの数を増やし、飲料水を配布し、被災者たちの衛生状況を改善するために活動しています。こうした活動は全て下痢性疾患の流行を回避するために行われています。

これは大規模な支援活動です。避難キャンプの数は、首都ポルトープランスのみならず、ジャクメルやレオガンといった被災地でも増え続けているのです。ハイチのほとんどの地域では、地震発生前から十分な下水設備が整っていませんでした。このため、今後の支援活動にさらなる困難な状況を引き起こしています。

私は、ハイチの活動にあたっている同僚たちに畏敬の念を抱いています。彼らの多くも、この壊滅的な自然災害で家族を失い、自宅が崩壊したり、全ての所持品を失いました。にも関わらず、彼らは毎日仮設事務所に足を運び、ハイチの子どもたちの暮らしが少しでも改善するよう、活動を続けているのです。

ハイチでの滞在の最後の週となった今週、ポルトープランス近郊のジャケ山に設置されたテントの学校で、ヨランダと言う名前の9歳の女の子に会いました。ヨランダちゃんが暮らす山の中のコミュニティへは、急な山道を登っていかなければなりません。ヘリコプターでさえ着陸が困難な地形であるにもかかわらず、ユニセフの物資供給チームは、臨時の学校と保健所を建てるためのテント、スクールキット、医療品、基礎医療資材を届けました。

希望をもたらす仮設学校

「絵を描くことと歌うこと、それから友達と一緒に遊ぶことが好きなの。今日はとても楽しいわ。」 震災で自宅と学校の両方を失ったヨランダちゃんは話します。ヨランダちゃんの先生のオニクケル・ポールさんは、テントでの学校活動の再開は、子どもたちのみならず彼らの両親や保護者にも、ハイチの状況が徐々に改善されているという希望をもたらすものになると話しました。

ハイチの首都と周辺の地域では、学校が再開されたのは、まだほんの一握りに過ぎません。しかし、3月31日に授業を再開できるよう、大勢の人々が教育省をサポートしています。この目標を達成するために、教室として使用されるテントや、教師となる人材の確保と研修が進められています。また、子どもたちが落第しないよう、集中学習プログラムも実施される予定です。

最近、ある記者の方に、ハイチが、立ちはだかる大きな課題にどう対処していくのかと尋ねられました。私は、そうした困難が立ちはだかっているからこそ、ユニセフが様々な人道支援機関と協力して活動しているということ、また、ハイチのことが新聞のニュースとなってもならなくても、ユニセフは長期的な支援を続けてゆくと答えました。