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財団法人日本ユニセフ協会
 



東日本大震災緊急募金 第82報
子どもたちの心に寄り添う−プレイセラピストからの報告

【2011年6月29日 東京発】

震災直後から心配されていた、被災した子どもたちの心の問題。震災で受けたショックや悲しみが深刻なトラウマにならないよう、「子どもに優しい空間」の設置や子どもバス遠足、ちっちゃな図書館プロジェクトなど、子どもたちの心の状態に配慮した様々な支援が行われてきました。そのような中、日本ユニセフ協会とともに被災地の子どもたちの心のケアに取り組んでいるプレイセラピスト(遊びを通じた心のケア専門家)の方が、6月に行ったあるイベントに参加したときの子どもたちの様子を専門家の視点から報告してくださいました。その一部を抜粋してご紹介します。

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安全が守られた和やかな中であっても、小さな刺激(スタッフが呼び掛ける声や子どもの泣く声など)に対して、大きく反応(保護者が近くにいるのに半分泣きながら繰り返し保護者を呼ぶ、身体をびくっとさせるなど)する様子がみられ、子どもたちははりつめた、緊張感の高い状態であることが感じられました。何人かのお子さんは、シールを知らない人に張り付けたり、急に道路に飛び出したりという行動を通して、なんとかバランスをとろうとしているようにみられました。いつもと違う環境でどのようにすごしたらよいか分からないことや、誰かに気にかけてほしい気持ちなどが、悪戯な行動としてみられたのかもしれません。

お絵描きスペースでのこと。ある男の子は、何本ものチョークを使って、長い線を描き、線の両端に丸を描いて、その丸に点を二つと線を描きいれて「へび」と言い「食べられる、にげろー」と他の遊び場に逃げて行きました。また、ある男の子は、ぐるりと大きな四角い形を描き、「バス」と言いました。バスの下にまっすぐな線を描いて、バス停を描き、まっすぐな線を少し伸ばして木を描き、また少し伸ばして家を描きと続けて、「町ができてきた」と言い、お父さんを呼んでその絵を見せて「ここに住もう」と父親を勇気づけるように話していました。また、ある女の子は、地面に二つ長細い丸を描き、その周りにダイヤの模様を描いて、「これを両脚で踏むとみんな幸せになる」と嬉しそうに言いました。他にもたくさんの絵が描かれて、広場はとてもきれいな色になっていました。子どもたちがさまざまな形で表現することの意味深さを感じて感動すると同時に、抱えているたくさんのものを、安心して表現できる環境を整えることが大切であることを強く感じました。たくさんのボランティアの方が子どものお絵かきを応援している姿があり、子どもたちが安心して取り組めていたように感じました。

画像と本文内容は関係がありません。

遊び場を移動しているときに、遊び場に背を向けて座っている女の子が見えたので、隣に座らせてもらうと、しくしくと涙を流しました。「涙がでるんだね」とそっと座っていると、私の顔をみて「さみしい」と小さな声で言い、そこでそっと過ごしました。しばらくすると、少しずつ遊び場の方に身体を向けて、笑顔を私に見せてくれるようになりました。動物のえさやりができる場所に行くと、「怖い、怖い」といいながらもやぎとうさぎのえさやりに挑戦し、『怖い。でも大丈夫だ』という体験から気持ちの調整をしているようでした。ユニセフスタッフの方にも、そのことを見守ってもらうことができ、次第に体の緊張もほぐれて、自然な笑顔で違う遊び場に向かい、他のスタッフと遊ぶことができていました。自分をコントロールする力がある子どもでも、安心感を失っていることが感じられ、遊びを始めることにはたくさんのエネルギーを必要としていることを感じました。

帰りの時間になり、スタッフから声がかかると、「まだ遊びたい」「帰ったら遊べなくなっちゃうんだよ」「今度はいつこれる?」「またきていい?」という声がたくさんの子どもから聞かれました。また、一度帰りのバスに向かったはずの子どもたちが「忘れ物しちゃった」「もう一度さわりたかっただけ!!」と、様々な表情でバスから離れ、一番遠いところにある、小動物と触れ合える小屋まで走って戻って行き、静かに小動物とスタッフに身体を寄せる様子もありました。もっともっと遊びたいという子どもの気持ちとともに、現実の厳しさと、そこへ戻ることの怖さが、ひしひしと伝わってくる感じをうけました。

全体の活動を通して、子どもたちが安心して遊ぶことのできる環境を物理的にも精神的にも必要としていることを感じました。保護者の方たちもまた、自分自身の恐怖をもちながら、家族を守り、生活をしていることの大変さをもっていらっしゃることを感じ、子どもが子どもらしく遊べる姿をみたり、少し離れて自分の時間を取り戻したりすることを必要としているように思いました。

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被災地では、表現や遊びが、子どもたちの心の回復に重要な役割を果たしています。
日本ユニセフ協会は、様々な専門家の方々と協力しながら、子どもたちに寄り添い、支える支援を続けていきます。

写真クレジット全て:© 日本ユニセフ協会/2011/K.Goto

現在の支援物資到着状況

支援先
(県別)
支援物資 到着日 数量 寄贈企業 備考
宮城 3月19日 12,288本 VanaH(株) 2Lペットボトル
福島 3月22日 12,672本 VanaH(株) 2Lペットボトル
宮城 男児・女児用下着 3月22日 20万枚    
岩手 男児・女児用下着 3月23日 3万枚    
福島 3月23日 4,680本 キリンMCダノンウォーターズ(株) 2Lペットボトル
宮城 子ども用靴 3月23日 10,000足  
宮城 子ども用おむつ 3月24日 80パック P&G  
岩手 子ども用下着 3月24日 9,700枚    
福島 3月24日 12,288本 VanaH(株) 2Lペットボトル
岩手 3月26日 1,404足 アキレス(株)  
岩手 男児・女児用下着 3月27日 28,266枚    
岩手 長靴 3月27日 7,462足    
岩手 お尻ふき 3月28日 1,200個 P&G 赤ちゃん用
宮城 レクリエーションキット
「箱の中の幼稚園」
4月2日 各50   ユニセフ物資供給センターより調達
岩手 レクリエーションキット
「箱の中の幼稚園」
4月2日 各50   ユニセフ物資供給センターより調達
宮城 ランドセル 4月6日 70個 日本ニューバッグチェーン  
岩手 ランドセル 4月6日
-7日
340個 セイバン  
宮城 学校用かばん 4月8日 18,000個   ユニセフ物資供給センターより調達
岩手 学校用かばん 4月8日 18,000個   ユニセフ物資供給センターより調達
宮城 防犯ブザー 4月8日 5,000個    
岩手 防犯ブザー 4月8日 5,000個    
宮城 軽自動車 4月8日 3台    
宮城 サプリメント 4月上旬〜 4,000ボトル    
福島 4月11日 1,536本 VanaH(株) 2Lペットボトル
宮城 レクリエーションキット
補充素材
4月12日 60セット
宮城 ミニカー 4月12日 約1,200 タカラトミー
相模原* 4月12日 12,288本 VanaH(株) 2Lペットボトル
宮城 プレイマット 4月13日 2種
各80枚
IKEA
宮城 お絵かきセット 4月13日 60セット IKEA
岩手 保育園用いす・テーブル・座卓 4月14日 いす75脚・テーブル11台・座卓9台   被災した各幼・小・中・高と移転先へ
宮城 原付バイク 4月15日 5台    
岩手 小・中学生用ノート・文具セット 4月15日 (16,700セット)    
福島 ノート・文具セット 4月16日 390セット    
宮城 PC183台・コピー・FAX複合機(57台)・プリンター(61台) 4月18〜21日     各幼・小・中・高と移転先へ
福島 移動式黒板 4月21日 10台    
福島 仮設トイレ 4月22日 20基    
福島 放射能量測定器 4月28日 14台   相馬市各学校へ
岩手 更衣室・授乳用仕切りシステム 4月29日 21セット    
埼玉* 牛乳 4月末〜     加須市双葉町避難所
埼玉* ヨーグルト 5月初旬〜   ダノンジャパン(株) 加須市双葉町避難所
岩手 クーピー(120セット)/絵の具(240セット) 5月13日      
岩手 卓上電気スタンド 5月14日 15台    
岩手 文具セット 5月16日 840セット    
福島 ロッカー 5月16日 22セット   南相馬市教育委員会へ
福島 PC 5月16日 1台   石川町教育委員会
宮城 コピー機(2台)/PC(2台)、プリンター(2台) 5月     東松島市保育所/亘理町保育所2ヶ所)
岩手 受水槽、浄化槽、給水タンク 5月工事      
宮城 ソーラー式ワクチン冷蔵庫 5月18日      
福島 扇風機 5月30日 112台   南相馬市教育委員会
福島 マスク 5月30日 10万枚   南相馬市教育委員会
岩手 コピー機1台 6月2日     保育所
埼玉* 6月15日 460足 コンバースフットウェア(株)  

ちっちゃな図書館送付状況:約15万冊が900箇所以上に届けられています。(6月20日現在)
福島「おもいっきり!そとあそび」プロジェクトの参加児童数(予定含む):約5600名(5月26日現在)

*被災者受け入れ場所

※一部支援物資については、各県の物資集積倉庫より他県の避難所または被災者に配布されている場合もございます。

2011年6月17日午前9時現在 (広報室まとめ)