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日本ユニセフ協会
 



東日本大震災緊急募金 第170報
大槌町の小学校で「未来の教室」ワークショップ開催

【2012年11月14日 岩手発】

ワークショップに参加した小学校5年生の子どもたちは、楽しみながら「未来の教室」の模型を作りました。

「こんな環境で勉強したい。こんな所で読書をしたり、遊んだりしたい」。子どもたちが考える理想の教室や学校施設の模型を製作する特別授業(ワークショップ)が岩手県大槌町の小学校で始まったのは今年10月下旬。そして、11月14日に3回目となるワークショップが開催され、子どもたちの模型が完成しました。

昨年の東日本大震災で大きな被害を受けた大槌町は復興計画の中で町の将来を担う子どもたちを主役にした取り組みを始めています。日本ユニセフ協会は、被災地における復興支援活動の一環として「子どもと築く復興まちづくりプログラム」を実施し、同町が復興計画の一つとして進めている小中一貫校づくりに子どもたちの意見や考え、アイディアを反映させるための支援を行ってきました。

図書室の半分を緑のカーペットにして、そこにビーズ・クッションを並べたグループの作品。カーペットの下は収納スペースになっている。

今回のワークショップは、都市計画・まちづくり学習や自然災害科学等を専門に活躍する山形大学地域教育文化学部の佐藤慎也教授、ならびに本事業の基となっている「子どもと築く復興まちづくり」を提案した(株)竹中工務店との協同プロジェクトとなっています。

ワークショップに参加したのは、大槌、大槌北、安渡、赤浜の4つの小学校の5年生の子どもたち約90人。現在、この4校の子どもたちは仮設校舎で一緒に学んでおり、来年4月には「大槌小学校」として統合されることが決まっています。佐藤慎也教授と同学部の学生たち、竹中工務店社員の指導のもと、18のグループに分かれてアイディアを出し合い、楽しみながら模型を製作しました。

子どもたちの作った模型には様々な創意工夫がみられます。円形で4つの部屋(図書室・理科室など)が回転する教室。黒板の裏の壁の上方が窓になっていて外の景色が臨める教室。図書室の半分を緑のカーペットにして、そこにビーズ・クッションを並べたグループの男の子は、こう説明してくれました。「このクッションは座っていてとても楽だから、ゆっくりと読書ができるんだ」

片隅にトイレが設置された教室。避難所での生活の経験が表れている作品。

子どもたちならではの自由な発想と同時に、避難所生活を経験し、今も仮設住宅で暮らしていたり、仮設校舎で学んでいたりするからこそのアイディアも見受けられました。
「ただ楽しむだけでなく、子どもたちが防災対策を考えて工夫をしていることに感心しました。」と、特別授業を担当した5年生の担任の芦澤先生が仰るように、教室や体育館の一角に炊事も可能な流し場やトイレを設置したり、非常用の備蓄品のための収納スペースを設けるなど、避難所での生活の経験が表れている作品もありました。「大きな物(備品)は壁にしっかり固定して、椅子も安定感のあるものを選ぶといったところに、また地震が来ても安全な教室が欲しいという気持ちが出ていますね」芦澤先生はこのように感想を述べられました。

「皆さんが大槌町の子どもたちだからこそできたことだと思います。困難を解決する力が感じられました。こうした活動を全国の子どもたちにも知ってもらいたいと思います。」山形大学の佐藤先生も、子どもたちの発想や作品をこう評しました。

ワークショップを視察した復興庁岩手復興局の渡部参事官補佐は、「子どもの意見が活かされたまちづくりが実現することを願っています。こうした防災を意識した動きが全国の自治体に拡がっていくことが望ましいですね」と、この取り組みに関心を示されました。

そして最後に、児童代表がプログラム関係者へのお礼とともに、「今回の作品を学校全体で共有し、3学期に予定されている未来の大槌について考える学習に活かしたいと思います」と、次の取り組みへの意気込みを語ってくれました。大槌の子どもたちの希望が、実際の教室や学校施設、そして新しいまちづくりにつながっていくことを、日本ユニセフ協会も期待し、今後も支援していく予定です。

写真クレジット全て:© 日本ユニセフ協会

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