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日本ユニセフ協会
 



東日本大震災復興支援 第210報
国・行政・市民の連携
第9回東日本大震災子ども支援意見交換会開催

【2013年8月30日 東京発】

© 日本ユニセフ協会
国会議員会館での「東日本大震災子ども支援意見交換会」。9回目の今回のテーマは「親を失った子どもなど社会的養護を必要とする子どもたちを巡って」。いわゆる“震災孤児”とそうした子どもたちを支える人々を支える仕組み・社会や制度のあり方に関する意見が交されました。

8月30日(金)、第9回「東日本大震災子ども支援意見交換会」が衆議院議員第二会館で開催されました。

東日本大震災発生後の5月、日本ユニセフ協会は、被災地での子ども支援に関わる多くのNGO・市民団体とともに、支援に関わる様々な情報交換の場として「東日本大震災子ども支援ネットワーク」を設立。民間の支援を行政や地域の制度・仕組みに繋げる政策提言活動の一環として、子ども支援に関わるNPOや市民団体、専門家の方々に加え、超党派の国会議員や関係省庁の方々、被災地の自治体の方々が一同に会する「東日本大震災子ども支援意見交換会」を開催してきました。

「親を失った子どもなど社会的養護を必要とする子どもたちを巡って」をテーマに開催された今回の意見交換会では、宮城県里親連合会のト蔵康行さん、あしなが育英会レインボーハウス担当の八木俊介さん、そして児童家庭支援センター大洋(岩手県大船渡市)の船野克好さんがそれぞれの実践を、また、厚生労働省や文部科学省、復興庁からも喫緊の取り組みが報告され、活発な意見交換が行われました。

◆見えてきた課題

宮城県の委託を受け、「里親サロン」活動を通じて里親子支援活動を展開されている宮城県里親会のト蔵さんと、日本ユニセフ協会の支援も受け岩手県大船渡市で、子どもの心のケアや里親支援、教育関係者などへの啓発活動と幅広い活動をされている児童家庭支援センター大洋の船野さんは、それぞれの実践を通じて見えてきた、いわゆる“震災孤児”の養育状況や里親制度の利用状況、施設をはじめとする“支援側”の人員配置の現状などを報告。仮設住宅での暮らしを強いられている里親子の住環境改善や経済的負担の軽減など(ト蔵さん)や、行政や児童相談所、里親会、施設などが里親支援の連携のあり方をイメージできていない現状(船野さん)が、課題として指摘されました。

「虐待通告件数も震災後増加しています。そうしたものへの対応やひとり親家庭の支援など、広い意味での“社会的養護”の支援の拡充が必要性です」(ト蔵さん)「神戸の震災と異なり多数の遺児が広範囲にいます。復旧復興が進まぬ中、“復興格差”が出てきています。(後見監督人や法律相談対応などの)遺児・孤児の支援情報の提供体制も不備です。絶対的なマンパワー、ボランティアが不足しています」(八木さん)

◆社会が支える

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先の参議院選挙後初めての開催となった今回の意見交換会には、初めて参加された議員の方々も少なくありませんでした。

こうした課題に取り組む動きも始まっています。あしなが育英会の八木さんは、同会が建設を進める「レインボーハウス」と呼ばれる施設が、岩手県陸前高田市と宮城県石巻市、そして同仙台市の計3箇所に、来年3月オープンすると報告。子どもの仲間作りの場として、家族の死などの“死別体験”のケアの場として、そして、子どもたちの自助自立のきっかけ作りの場として、孤児や遺児以外の子どもたちにも開放する予定と説明されました。

また、日本ユニセフ協会の支援を得て「里親子レスパイトキャンプ交流事業」を実施された児童家庭支援センター大洋の船野さんは、「両親を失った子どもたちだけを対象とするのではなく、子どもたちが一緒に暮らしている家族や従兄弟従妹などに募集対象を拡大し、日常から顔の見える関係を利用しながら(キャンプを)実施したことで、地域の方々への里親子支援に関する啓発につながりました」と、専門機関の支援だけではなく、里親会や地域の養護施設などと連携し日常生活に近い位置での関わりを作ることが大切なのではと提案されました。

厚生労働省によれば、今回の震災で“震災孤児”となった子どもたちは241人。このうち、親族里親に引きとられた子どもは168人で、施設に入所した子どもは5人。こうした子どもたちを中心に、厚生労働省は、ひとり親家庭への支援や心のケア、そして被災3県に設置された「安心子ども基金」を活用した施策を、文部科学省は、緊急スクールカウンセラー等の派遣や“震災孤児”の心のケアの対応にあたる教職員の心のケア、奨学金などの財政的支援を展開。復興庁も、先に成立した「子ども被災者支援法」の具体的な運用に向け、パブリックコメントを募集するなどその基本方針の策定に取り組んでいます。今後の取り組みについて、省庁関係者のお一人は、「引き続き、市民団体やNGOと協力しながら取り組んでいきたい」と語ります。

◆“地域力”との連携

今回の意見交換会の各報告に共通していたこと。それは、子どもたちを支える人々への支援と地域との連携の重要性でした。会に参加された実践者やNPO関係者の方々からも、「諸外国では制度として存在する、血縁関係になくとも近所の人で里親になれる地域里親や近隣里親の普及ができれば、より地域力を高めて子どもたちを支援していける」「震災3年目の課題は、コミュニティレベルでの支援のモデルを作っていくこと。レインボーハウスの事業を実施していく上でも地域との連携が欠かせない」などの発言がありました。

先の参議院選挙後初めての開催となった今回の意見交換会。初めて参加された議員の方々も少なくありませんでした。そのお一人の菅野幸子さん(福島県選出)は、「震災直後から親御さんをなくした子どものことが一番気になっていたので、大変よい学びの機会となりました。この取り組みをしっかりサポートしていきたいと思います」と、また、今回、国会内での呼びかけ役を担ってくださった郡和子さん(宮城県選出)も、「直接の孤児、遺児の子どもたちの支援のみならず、被災地域の子どもたちへの支援が改めて必要との思いを強くしましたので、政策の実現につなげていきたい」と力強く語っていました。

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