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日本ユニセフ協会
 



東日本大震災復興支援 第230報
「自然災害に備える、日本の子どもたち」
ユニセフ緊急支援専門官が、世界に発信
世界防災会議へ向けた一歩

【2014年4月22日 バンコク発】

東日本大震災による津波で家を失った女の子
© UNICEF/NYHQ2011-0427/ADAM DEAN
東日本大震災による津波で家を失った女の子

東日本大震災から3年を迎えた今年3月、シンポジウム「未来をつくる私がおとなに伝えたいこと〜子どもと築く復興まちづくり」がユニセフハウスで開催され、被災地の学校の子どもたちが、震災の体験からの学びをもとに、地域の復興計画を発表しました。

シンポジウムの最後に、講評とまとめとして「子どもたちの取り組みは、まさに、ユニセフが防災への取り組みのキーワードとしている『子どもと一緒に行う防災』を体現化した実例である」と語られた根本巳欧さんは、ユニセフ東アジア太平洋地域事務所で勤務する、緊急支援専門官です。根本専門官は、バンコクにある東アジア太平洋地域事務所に戻った後、シンポジウムで学んだ日本の子どもたちの取り組みを、世界に向けて発信しました。その記事をご紹介いたします。

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「自然災害に備える、日本の子どもたち」

「僕は東日本大震災の津波で祖父母と父を失った。でも、他の子どもたちには津波で親戚を失ってほしくない。」 
2014年3月27日に行われた東日本大震災復興支援3年目のシンポジウム「未来をつくる私がおとなに伝えたいこと」のなかで、12歳の陽音(はると)くんの言葉は、短いけれども力強く、訪れた聴衆の心に響きました。東日本大震災は、過去最大規模の地震でした。「僕にとって、この思いが防災の出発点であり、自分の町の地域復興プロジェクトへ参加した理由」だと、陽音くんは語りました。

陽音くんは、岩手県大槌町の出身で、日本ユニセフ協会主催のシンポジウムに参加した12人の子どものうちの一人でした。イベントは、「子どもにやさしい復興計画」のテーマを掲げ、地域社会が自然災害に備えるにあたり、未来をつくる子どもたちの声に耳を傾けることの大切さを強調しました。

私はユニセフ東アジア太平洋地域事務所の緊急支援専門官です。陽音くんの話を聞いて、台風30号(英語名ハイエン、現地名ヨランダ)の被災地域の復興を支援するため、最近派遣されたフィリピンのことを考えました。フィリピンは現在、長く困難な再建プロセスに取り組んでおり、ユニセフはよりレジリエント(=迅速でしなやかな回復力のある)な社会づくりを支援しています。それは、たとえ新たな自然災害に襲われたとしても、災害被害を最小限にするための支援です。

レジリエントな社会を、子どもたちと

東日本大震災復興支援3年目のシンポジウム「未来をつくる私がおとなに伝えたいこと」で、意見を出し合う子どもたち
© 日本ユニセフ協会/2014
東日本大震災復興支援3年目のシンポジウム「未来をつくる私がおとなに伝えたいこと」で、意見を出し合う子どもたち

レジリエントな社会を構築するには、子どもたちの参加が必要不可欠です。世界中の自然災害の被害者の50〜60%は子どもたちです。自然災害は、貧困と不平等を更に悪化させるため、貧しい地域は特に脆弱です。子どもたちの長期的な発育への潜在的な悪影響とともに、自然災害は子どもたちに過剰な影響を及ぼすため、子どもたちの声に耳を傾けることは重要です。

東北の各自治体では、復興の道のりにおいて、地域社会だけでなく、子どもたちとも協議を行いました。たとえば学校の建築などに関して、子どもたちの意見を集めるために、特別な会議やミーティングが開催されました。これはまさにユニセフが、人々と組織がしなやかな回復力を構築するために重要であると国家レベルで強調していることです。

自然災害で被災する子ども、毎年175万人

国連の推計によると、毎年175万人の子どもたちが自然災害の被害を受けています。 最も災害の多い20カ国のうち、11カ国はアジア太平洋地域にあります。子どもたちの災害リスクを減らすため、すべての人が取り組むことであり、すべての人が取り組むべきことである理由を、陽音くんの言葉がまたしても私に思い出させてくれました。

東京での会議では、ユニセフの防災戦略とアプローチについて話をするよう依頼されました。皆様への私のメインメッセージは、子どもの視点に耳を傾け、彼らのニーズや脆弱性に対処することが防災の核心でなければならないということです。しかし、陽音くんの発言は、私の伝えたかったことすべて、もしくはそれ以上のことを物語ってくれました。それは即ち「子どものための防災」、であり「子どもと一緒に行う防災」です。

ユニセフ東アジア太平洋地域事務所
緊急支援専門官 根本巳欧

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第3回国連防災世界会議(2015年3月)へ向けて

2015年3月、宮城県仙台市で第3回国連防災世界会議が開催されます。東日本大震災被災地の復興を世界に発信し、防災に関する日本の経験と知見を国際社会と共有する機会となるこの会議に向け、ユニセフは、子どもたちが"主役"の一人として位置付けられる"子ども参画"を、日本政府はじめ関係各方面に働きかけています。子どもたちの声を聴き、子どもたちから学ぶことで、社会を自然災害に"レジリエント(迅速かつしなやかな回復力のある)"にしていけると考えています。本シンポジウムでの子どもたちの発表は、東北の被災地のみならず、世界の復興と防災のあり方につながる大きな一歩となりました。

東日本大震災 緊急・復興支援活動について

日本ユニセフ協会が、東日本大震災発生直後の2011年の3月に開始し、様々な方々のご協力を頂きながら活動を続けているユニセフ東日本大震災緊急・復興支援活動。ユニセフが数十年にわたって蓄積してきた知見を最大限に用い、「緊急支援物資の提供」「保健・栄養」「教育」「心理社会的ケア(心のケア)」「子どもの保護」「子どもにやさしい復興計画」の6 つの分野での活動を続けてきました。詳しくは、東日本大震災 緊急・復興支援活動3年レポートをご覧ください。

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