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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第1報
紛争で家を追われ、栄養不良に苦しむ子どもたち

【2009年3月10日 パキスタン発】

© UNICEF/Pakistan/Ramoneda 2008

北西辺境州の避難民キャンプで、プランピー・ナッツを食べるアタウルラー君(2歳)。

栄養状態を診断するために上腕の太さを測られているアタウルラー君は、不安そうに泣いています。体重は、わずか7.7キロ。2歳の男の子の適正体重を大きく下回っています。栄養士は、アタウルラー君を重度の栄養不良と診断しました。アタウルラー君のひとつ年上の兄、マチウルラー君は中度の栄養不良と診断を受けました。

母親のミナ・グルさんは、栄養士から、プランピー・ナッツ(重度の栄養不良の子どもたち向けの栄養補助食品)とユニミックス(中度の栄養不良の子どもたち向けのビタミンやミネラルを強化した粥状の食べ物)の摂取の方法を教わっています。

住む場所を追われる人々

© UNICEF/Pakistan/Ramoneda 2008

アラムゼブ君(生後8ヵ月)は、カッチャ・ガルヒ避難民キャンプで、緊急に栄養不良の治療が必要であると診断された。

グルさんにとって、今年はとても厳しい年です。年の初め、グルさんは12歳になる娘を、これが2度目の結婚となる40歳の男性と結婚させなければなりませんでした。

「私の義理の両親が娘を結婚させるように言ってきたんです。私は、娘をこんなに早く結婚させたくはありませんでした。私も今の娘と同じ歳に結婚しましたから、どんなに大変なのかよく分かります」と、グルさんは話します。

その後まもなく、グルさん一家は武力紛争によって家を追われ、パキスタン北西部の北西辺境州の州都ペシャワルの避難民キャンプに辿り着きました。

北西辺境州は、パキスタンで最も開発の遅れている地域のひとつ。最新の統計によると、ある部族の子どもたちは、10人にひとりが5歳の誕生日を向かえる前に命を落とし、33パーセントが低体重、16パーセントが重度の栄養不良であると報告されています。

文化に配慮した支援

© UNICEF/Pakistan/Ramoneda 2008

カッチャ・ガルヒ避難民キャンプの栄養診療所で、母乳と補助食についての知識を学ぶ母親たち。

カッチャ・ガルヒの避難民キャンプで、ユニセフは、1万2,000人以上の子どもたちに、ユニミックスや微量栄養素の補助食品、虫下し剤を提供しました。また、緊急に治療が必要な重度の栄養不良状態の子どもたちが発見された場合に備え、ユニセフは、ペシャワル近くに3つの大きな病院に支援拠点を設立しました。

ユニセフのパートナーである農村開発センターで働く女性たちは、カッチャ・ガルヒ避難民キャンプのテントをひとつひとつ回って、栄養治療が必要な女性と子どもたちを確認して回っています。彼女たちを含め、ユニセフは、急性の栄養不良状態の子どもたちをコミュニティでケアするための訓練を、200人以上の政府関係者とNGOスタッフに実施しました。

先日、とある避難民キャンプで、生後8ヵ月の男の子が発見されました。この子は重度の栄養不良で、彼の家族は避難民キャンプにやってきたばかりでした。祖母からミルクと砂糖を加えたお茶を与えられているだけでした。男の子の母親は、政府と武装勢力の間に起きた武力衝突の影響を受け、彼らの村が爆撃を受けた際に命を落としました。このような悲劇に見舞われながらも、この男の子の家族は、ユニセフの訓練を受けた栄養士の手助けを得て、この子を救うための知識や情報、そして栄養補助食品を得ることができました。

カッチャ・ガルヒ避難民キャンプでは、保守的な伝統を守ってきた部族の女性と子どもたちが、こうした情報やサービスを生まれて初めて受けています。そのため、文化に配慮した支援が必要とされていますが、2009年2月までに、既に5,000人以上の母親が、子どもたちの命の問題を直接左右する乳児への食事に関する実践的な知識や技術を身につけました。

「ユニセフは、現地のパートナーと共に、これまでなんら支援を受ける機会を持たなかった女性たちに、幼い子どもたちの食事や母乳育児についての情報を提供しているのです。」ユニセフ・北西辺境州事務所の栄養の専門家アイエン・カーアン・アフリジは話しました。