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財団法人日本ユニセフ協会



パキスタン緊急募金 第55報
洪水被害発生から半年−拡大を続ける栄養不良問題

【2011年1月28日 イスラマバード/ジュネーブ/ニューヨーク発】

© UNICEF/NYHQ2010-2724/Ramoneda
シンド州にある避難キャンプで、子どもにパンを与える母親。

2010年7月にパキスタンを襲ったモンスーンによる洪水被害から、6ヵ月が経ちました。シンド州で行われた最新の調査では、洪水の影響を受けた子どもたちの栄養不良が深刻なレベルにあることが明らかになり、ユニセフは、他の人道支援団体とともにもう一つの難題に直面しています。

シンド州の保健省が今日(28日)発表した調査結果によると、生後6ヵ月から4歳11ヵ月までの子どものうち、シンド州北部の洪水被災地の子どもの23.1パーセントが、また、州南部では、21.2パーセントが全急性栄養不良(GAM)に陥っています。これは、世界保健機関(WHO)が、人道支援が必要な危険域として定める15パーセントをはるかに凌ぐ割合です。さらに、シンド州北部では、重度の栄養不良(SAM)の割合が6.1パーセント。シンド州政府は、生後6ヵ月から4歳11ヵ月までの約9万人の子どもたちが栄養不良であると推測しています。

全急性栄養不良(GAM)は、ある集団における中度および重度の栄養不良の子どもたちを合わせた数で、身長に対する適正体重を下回る子どもたちの数を示しています。重度の栄養不良(SAM)は、急性栄養不良がかなり深刻化している状態を表します。重度の栄養不良(SAM)の子どもたちには、早急に処置が必要です。この子どもたちは、健康な子どもに比べて、5歳の誕生日を迎える前に命を落とす割合が10倍も高くなっています。こうした子どもたちが一命を取り留めても、子どもたちの発育や学力は乏しく、おとなになっても所得能力が低くなる傾向があります。

© UNICEF/NYHQ2010-2734/Ramoneda

「ユニセフは、この調査結果を非常に憂慮しています。こうした子どもたちに手を差し伸べ治療を施すべく、政府と州政府と共に活動を続けています。洪水によって、子どもたちの栄養不良というパキスタンの隠れていた問題が明らかになったのかもしれません。また、これは、短期的のみならず、長期的にも持続的な子どもたちへの支援活動を拡大させる好機とも言えます。ユニセフは、パートナーと協力して、子どもたちのニーズに応えるために全力で活動しています。」ユニセフ・パキスタン事務所のパスカル・ビルヌーブ臨時代表はこう話しました。

シンド州、パンジャブ州、カイバル・パクトゥンクワ州、バルチスタン州の4州の洪水被災地で、洪水による栄養状態の変化についての調査(FANS)が行われました。この調査は、洪水被災地の生後6ヵ月から4歳11ヵ月までの子どもたちの栄養状態を調べるために行われました。間もなく、パンジャブ州政府から調査結果が発表になる予定です。

この調査で予測される結果に対処するため、ユニセフをはじめとする栄養問題に取り組む人道支援団体は、シンド州政府と協力して準備をすすめています。現在の計画では、今後1年半にわたり、急性栄養不良に対する取り組みと予防策に焦点があてられた活動が行われることになっています。ユニセフは、この活動全体を取りまとめる役割を果たし、栄養補助食品の提供や技術的な支援、研修も実施しています。また、栄養不良の子どもたちに食事を与え、女性たちが健康を取り戻すための栄養プログラムも支援しています。

破壊的な洪水被害から半年。ユニセフは、洪水の影響を受けた人々の緊急のニーズに応えるための活動を継続しています。被災者の多くが家を失い、コミュニティも完全に破壊されました。冬は気温が低く、避難キャンプや損傷した家屋での生活はさらに厳しいものとなっており、北部地域では、(風雪によって)故郷に戻ることが難しい状況です。ユニセフは、こうした常に変化している様々な困難に直面している人々の変化する支援ニーズに、柔軟に対応しながら活動を続けています。

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カイバル・パクトゥンクワ州のユニセフが支援した子どもに優しい空間で遊ぶ子どもたち。

この半年の間に、ユニセフは、毎日350万人もの人々に飲料水を提供し、190万人の人々のために衛生施設(トイレ)を設置するなど、前例の無い規模の支援を実施しました。また、ユニセフは、パートナーと共に、900万人以上の子どもたちに、はしかとポリオの予防接種を実施。約850万人の子どもたちにビタミンA補給剤を提供。計約12万人の栄養不良の女性と子どもたちが様々な栄養プログラムの支援を受けました。各所に仮設教室も設置。約18万人の子どもたちがこの恩恵を受けています。約700箇所設置に設置された「子どもに優しい空間」は、20万人の子どもたちが利用。虐待や放置、搾取の危険から守られています。このように、ユニセフは、子どもたちの命を守り、持続的な支援を続けるために、限られた財源を最大限有効に活用し、重要な情報が各人道支援団体の間で共有されるよう、栄養、水、教育、子どもの保護の各分野の支援活動で各支援団体間の活動を調整する役割も担っています。

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シンド州にあるユニセフが支援した臨時教室で授業を受ける女の子たち。

「パキスタンの洪水被害は、まだ終わったわけではありません。それにも関わらず、緊急性が色あせ、世界中の人々が、いまだに大きな助けを必要としているパキスタンの子どもたちを忘れてしまう危険があります。子どもたちは今も、家族と一緒に生活を立て直し、失った日常を取り戻すという難題に直面したままです。これは、多くの子どもたちが、今後も長期にわたって、学校に通わずに働かざるをえない状況に置かれていることを意味しているのです。多くの子どもたちは、長期にわたって満足な食事をしていません。健康を保つこと、病気と闘う体力もない危険な状態に置かれています。」(ビルヌーブ臨時代表)

今回の災害で、ユニセフは、国際社会に対し総額2億5100万米ドルの資金援助を求めましたが、これまでに寄せられた資金は1億9800万米ドルに留まっています。ユニセフは、緊急人道支援活動の他、被災した人々が住み慣れた場所に戻るための支援や復興支援を継続して行っています。ユニセフが、今後も活動を継続するために、まだ確保できていない総額の21パーセントにあたる5200万米ドルの資金が、緊急に求められています。