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財団法人日本ユニセフ協会



フィリピン台風緊急募金 第12報
楽しく衛生を学ぶ
〜台風から6ヶ月たった今〜

[2010年3月 フィリピン・ラグナ州発]

ラグナ州にあるアプラヤ小学校では生徒と先生約200名が校庭に作られた即興ステージから聞こえる愉快な音楽に耳を傾けています。注目の的はラカン氏が主導する参加型移動劇場。

「アプラヤ小学校のみなさんおはようございます!」ラカン氏は挨拶します。
「おはようございます」子ども達は口をそろえて元気良く答えます。
「パフォーマンスを始める前に今日のテーマを大きな声で言ってみましょう。清潔に、健康に、強く、そして安全に」
ラカン氏の動きを真似しだす子ども達の大きな声が村中の人々に響き渡ります。「清潔に、健康に、強く、そして安全に!」

今回の参加型移動劇場はユニセフとセーブ・ザ・チルドレンが協力して2009年の台風16号(現地名「オンドイ」・国際名「ケッツァーナ」)によって被害を受けた地域に公衆衛生と母乳育児を広める活動の一部です。この移動劇場はラグナ州、リサール州、ブラカン州、メトロマニラ州の75地域で多くの児童たちに軽快な音楽、ダンス、寸劇を披露しています。

地域の参加を
© UNICEF Philippines/2010/Pirozzi
ケソン市バランガイ・サンビセンテでパフォーマンスを行うラカン氏
ユニセフは資金と技術の両面でこの活動を全面的にサポートしています

パフォーマンスはオンドイ(台風)の再現から始まります。役者達は激しい水流を表す大きな布を見て逃げ回り、子ども達はラカン氏の指示に従って口で強まる風の効果音を、手で徐々に上昇する水面を表現し、忘れられないあの日の出来事を再現します。

「子どもと地域を参加させることがこのパフォーマンスの重要なことです。参加することによって心が落ち着き、よりメッセージが伝わるのです」ラカン氏はこう説明します。「パフォーマンスの前にはテストを行い、みなさんがどれぐらい理解できているかを確認します。」

すべての子どもたちが抱えている問題

「台風のとき避難した人は何人ですか」ラカン氏が子ども達に問いかけると約半分の生徒が手を上げます。「では避難所での生活がどのようなものか分かっているのですね。」
ラカン氏がこういう間に何人かの役者がステージ上のわらのマットに密集します。いびきをかいている者もいれば毛布をめぐって争っている者もいます。そんな中、現地語であるタガログ語で3人の役者が歌い始めます。
 「どの家族も、幼い子もお年よりも缶詰状態で寒いよ、周りはうるさいし蚊と虫でいっぱい、プライバシーもなければマットにも全員は入らないよ。」
 「水はない、食べ物も電気も明かりも、テレビがなければドラマも見ることができない、避難民として生活するのは辛いよ、とても辛いよ、他人に頼ると自由もないし。」

子ども達は歌を聞いて大声で笑いますが先生の何人かはお互いを見て同情するかのようにうなずきます。救援物資とともにイワシの調理の仕方が7通り書かれたレシピが配給されるシーンになると笑いは倍増します。
「フィリピンの人はコメディが好きなのです。だから笑いを多く入れることによってみなさんが自分達の行動をしっかり見つめ直すことができるのです。普段話し合われないことに関しても触れることができるのです。」とラカン氏は言います。

メッセージの再確認
© UNICEF Philippines/2010/Pirozzi
避難所での生活を演じる役者達

次の寸劇は医療と衛生についてで、子ども達は楽しい歌を聞きながら様々なことを学びます。自分の周りの衛生を保つ方法、風邪をひいた時やインフルエンザにかかった時の対処法、母乳育児がどのようにして乳幼児の健康を維持するか、台風が再びきたらどうすればいいか、トイレと正しい手の洗い方についても学びます。

「ああ、気持ちいい」
トイレに行った振りをする男性の役者を見て子ども達は騒ぎ始めます。
「トイレに行ったらお腹がすいちゃった。やった!ここにケーキがあるじゃないか。」お腹をなでながら役者はケーキを口にしようとします。
「ちょっと待った!」他の役者3人が止めます。「あなた、トイレに行ったのに手を洗ってないじゃないか。あなたの手はばい菌だらけだよ。そのまま手を洗わずに食べるとばい菌が体の中に入って体調を崩すよ。」

© UNICEF Philippines/2010/Pirozzi
診察を待つシーン

3人は男性を囲み、まるでばい菌のように男性の体にこびりつきます。子ども達はすっかり劇に夢中になってしまい、ばい菌に攻撃される男性を見て大笑いします。
「病気にならないためにはトイレに行った後と食事前は必ず手を洗わないといけないよ」
男性役者がうなずくとばい菌はステージから消えます。

次に水が入ったボウルと石鹸が用意されると数人の子ども達がステージ上によばれます。ラカン氏と他の役者に倣って子ども達は一生懸命手をこすり、手洗いの7つのステップを忠実に行います。ステージに上がったレンゾくんの家族はオンドイ(台風16号)がフィリピンを直撃した時に学校の校庭に避難し、不自由な生活を強いられました。

「パフォーマンスはすごく楽しかった」とレンゾくんは言います。「とても面白く、新しいことをたくさん学びました。特に手洗いが一番良かったです!」

みんなで一緒に頑張ろう
© UNICEF Philippines/2010/Pirozzi
ラカン氏に手の洗い方を教わる子ども達

役者達は最後の歌のためステージ中央に集まります。子ども達が手拍子をたたく中、役者達は自分、家族、そして地域に対して思いやりを持つことの大切さを訴えます。周りの環境をどうやって清潔に保つか、水を飲む前に沸かすことによってみんなが「清潔に、健康に、強く、そして安全に」いられるか、母親達に対しては緊急な時以外も母乳育児することの大切さを改めて確認します。

ラカン氏は一番初めに聞いたことをもう一度質問します。しかし今回は多くの子ども達が元気良く手を挙げます。ラカン氏は言います「最後にもう一度質問することによってみなさんがどれだけ理解できたかを把握することができるのです。今までやってきて良い反応しかもらっていません。これは移動劇場がメッセージを伝えるためにどれだけ効果的であるかを証明しています。」

アナリンさん(12歳)はとても共感したようです、「私は環境をきれいにすることが大事だとわかりました。私が住んでいるところでもできることなのでとても良いことだと思います。」
プリンセスさん(8歳)も同じように思っています、「私も環境をきれいにすることは良いことだと思います。今日は新しいことをたくさん学べました。家に帰って家族に教えたいです。」