公益財団法人日本ユニセフ協会
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ソマリア干ばつ緊急募金 第22報
最も大きな脅威から、子どもたちを守るために

【2011年9月21日 ケニア発】

半年ほど前、ケニアで肺炎球菌の予防接種が実施されました。ケニアは、アフリカの中で、最も早くこの予防接種が導入された国のひとつとなりました。そのケニア北東部のソマリア国境付近にあるダダーブ避難キャンプでは、今、このワクチンを使って子どもたちの命を救う支援が続けられています。

© UNICEF Kenya/2011/Moreno
ケニア北東部のダダーブにあるハガデラ避難キャンプで、肺炎球菌の予防接種を受けるために一番下の子どもを抱えて順番を待つフビア・アデンさん。

ダダーブにある3つの避難区域では、現在43万人以上の人々が避難生活を余儀なくされています。首都ナイロビや港町のモンバサに次いで、既にケニア国内で3番目に人口の多い場所となったダダーブですが、ここに避難してくる人の数は、今も劇的に増え続けています。平均で、毎日約1,200人のソマリアの人々がキャンプ地に辿り着いています。

衛生習慣が普及していないソマリアから逃れて来た人々で過密状態のキャンプ。トイレなどの衛生設備も圧倒的に不足しているため、人々は、一度発生すると急速に拡大してしまう感染症の危険性に常にさらされています。肺炎球菌の予防接種は、キャンプに辿り着いた全ての子どもたちを、世界の子どもの主要な死因のひとつであり、最も一般的な病気でもある肺炎から守るために、ダダーブにある全3箇所の避難区域で、定期予防接種活動の一環として提供されています。

乳児に必要な特別なワクチン

フビア・アデンさんと6人の子どもたちは、ダダーブにある避難キャンプのひとつ、ハガデラ避難キャンプ地に辿り着いたばかりです。フビアさんは、ソマリア北部のキビヨウからの困難で危険な道のりを、21日間掛け、6人の子どもたちの面倒を見ながら徒歩で避難してきました。

フビアさんの夫は、(干ばつの中生き残っている)3頭の牛の世話をするためにソマリアに留まりました。これは、二人で決断したものでしたが、フビアさんは、すぐに夫もフビアさんのところに来てくれることを望んでいます。

避難民登録を申請している間、フビアさんには、3週間分の食糧や生活必需品や衣服、そして避難場所(小屋)が提供されました。フビアさん一家は、また、こうした支援の一環として、健康診断を受け、子どもたちは予防接種を受けました。

ポリオ、はしか、ジフテリアの予防接種に加えて、1歳未満の子どもたちは、この新たに導入された肺炎球菌の予防接種も受けます。そのため、フビアさんの一番下のモハメッド君(生後9ヵ月)は、他の子どもたちよりも、一つ多く予防接種を受けることになりました。

‘このワクチンは、子どもたちの命を守ってくれるはずです’

© UNICEF Kenya/2011/Moreno
ケニア北東部のダダーブにあるハガデラ避難キャンプで、肺炎球菌の予防接種を受けるために母親の膝の上で順番を待つ生後9ヵ月のモハメッドくん。

モハメッドくんは、ハガデラの避難民登録所の脇に国際NGOが設置したセンターで、予防接種を受けました。子どもたちの泣き声が響いているので、どの部屋で予防接種が実施されているのかは、誰でもすぐに判ります。毎日約300人の子どもたちが、ここで予防接種を受けています。

「ソマリアにはひとつも病院がありません。子どもたちは、予防接種を受けていませんでした。」「私は子どもの時に受けましたから、予防接種が大事なことは理解しています。予防接種は子どもたちが病気になるのを防ぎ、子どもたちを助けてくれるんです。」(フビアさん)

世界では毎年、150万人にも及ぶ数の5歳未満の子どもたちが、肺炎で命を落としています。これは、HIV/エイズ、結核、マラリアで亡くなる5歳未満の子どもの合計数を上回る数です。ケニアの年間5歳未満児死亡数12万4,000人のうち、約3万人が肺炎により命を落としています。

「肺炎球菌の予防接種は、肺炎と髄膜炎を防ぐものです。肺炎は、子どもの主要な死亡原因のひとつですから、この予防接種は、避難を余儀なくされた人々にとっても重要なものなのです。」ダダーブで活動しているユニセフのランガナイ・モテマ保健担当官はこのように話しました。

「GAVIアライアンス」の支援

GAVIアライアンス(the Global Alliance for Vaccines and Immunization)とユニセフ、WHO(世界保健機関)の支援で、今年2月に始まった、ケニア政府による肺炎球菌予防接種の全国展開。

一方、フビアさん一家のように、ソマリアからダダーブの避難キャンプに辿り着いた大多数の人々の将来は、いまだ不透明なままです。子どもたちにとって、避難キャンプに設置された、新学期が始まったばかりの学校への通学どころか、今晩眠る場所でさえ確実なことは一つもありません。しかし、フビアさんは、避難キャンプ地での新たな生活を始めるにあたり、子どもたちの予防接種が重要な一歩であることを理解しています。

あらゆることの先行きが不透明な中、少なくとも一つだけ確かなことがあります。それは、子どもたちを肺炎から守る方法があるということです。