公益財団法人日本ユニセフ協会
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ソマリア干ばつ緊急募金 第23報
負の連鎖を断つために

【2011年9月26日 ケニア発】

アリ・ユセフ・オマルさん(16歳)は、妹と一緒に、干ばつの中で生き残っているヤギのために、無益ともいえる試みをしていました。地元の町で見つけた小さなダンボールをちぎって、飢えたヤギに与えていたのです。彼らにできることは、それだけでした。かつては200匹もいたヤギ。とげのある低木の枝で作った囲いの中では、わずか3匹が、なんとか生き延びていました。

牧草は枯れ、餌用のとうもろこしを買うお金もありません。町で拾ってきたダンボールだけが、ヤギのお腹を満たすための唯一の方法だったのです。

「もちろん、このヤギたちも、死んでいくでしょう。」アリさんは、肩をすくめてそう話しました。「ダンボールを食べて生きられると思いますか?」

母親と5人の弟や妹たちを食べさせていく責任が、まだ16歳のアリさんの肩にのしかかっていました。将来は家族を養える仕事に就けるように・・・そんな期待を寄せられながら、アリさんは、高校に通うために町に送られました。しかし、雨が降らなければ、彼が学校に留まることも難しくなります。

大きな試練

© UNICEF video
アリ・ユセフ・オマルさん(16歳)は、ケニア北東部を襲った深刻な干ばつのために、家族とともに避難を余儀なくされました。厳しい状況にもかかわらず、卒業を目指して勉強を続けています。

アリさんの一家は、ケニア北東部の干ばつの被害が広がるワジールで、その多くがアリさんのように避難を余儀なくされてきた人々が暮らすキャンプでの生活を強いられています。ここに住む人々の多くは、悲惨な状況を脱しようと、この数ヵ月以内に支援を求めて辿り着いた人ばかりです。多くの男性は、それでも、残されたヤギのために餌を探したり、そのヤギで仕事をはじめようとしたりしています。

「キャンプでの生活は、とても酷い状況です。」「口にできるのは、おかゆだけ。気が滅入ってきます。家族は、いつもお腹をすかせていますが、僕にできることは何もありません。」

学校に通い続けることは、もともと容易なことではありませんでしたが、それが今、大きな試練となってしまいました。今、アリさんが家族一緒に住んでいるのは、木の枝と藁で作られた小さな小屋。宿題をするにも、懐中電灯の明かりだけが頼りです。

将来への希望

こうした困難にもかかわらず、アリさんは、学校で優秀な成績を収めています。一番最近貰ってきた成績表にも、AとBしかありませんでした。「一番好きな科目は、科学と数学です。」「何を学んでも、一番仕事に繋がりますから。」(アリさん)

アリさん一家は、地域の他の人々と同じように厳しい生活を送っていますが、アリさんが仕事に就くことが、アリさん一家の唯一の希望であり、それはアリさんが学校に通い続けられるか否かにかかっています。

「一生懸命勉強することは、自分自身にとっても良いことだと思います。」 「家族の将来の生活のためにも、自分が教育を受けることが重要です。私は、教養のある人になりたいのです。」 アリさんは、中でも一生懸命取り組んでいるという英語で、たどたどしくこう話しました。