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財団法人日本ユニセフ協会




ユニセフ

◆スーダン ダルフール地域緊急情報2004年6月7日◆

スーダンで発生しているダルフール地域での紛争は、1998年以来最悪の状況に
治安の悪化やダルフール地域へのアクセスが制限されているため人道支援を届けることが難しく遅れている。
ダルフール地域では100万人以上が国内避難民となり、約10万人が難民として国境を越えチャドへ

1.概況

image1  スーダン西部ダルフール地域の国内避難民の女性や子どもの状況が深刻化しています。通常、国際基準で、子どもの栄養不良は15%が危機レベルとされていますが、ダルフール地域ではこれを遥かに超えて子どもの栄養不良は23%に達しています。
 多くの国内避難民キャンプでは基礎保健サービスや安全な水、トイレへのアクセスが提供されてはいますが、公衆衛生のレベルの低さ、シェルターの必要性、子どもや女性の栄養不良に対してユニセフをはじめとする人道援助機関は警告を発しています。

 長年続いた南北の内戦を巡る和平協議は最終的に停戦合意に至り、約2年間続きました。しかし、ダルフール地域の内紛は、スーダンの他地域の状況改善の可能性にも暗い影を落としています。政府と2つの反政府勢力の間で続けられている紛争が1998年以来最悪の人道的危機を招いているのです。

 国内避難民はこの4ヶ月で4倍に増え、100万人を超えています。現在、アクセスが可能なのはそのうちの約半数です。国内避難民の大半は、子ども、女性、高齢者で、彼らは、次に挙げるようにダルフール州の3つの地域に分散しています。
 西ダルフール・・57万人、北ダルフール・・29万人、南ダルフール・・14万人 そして10万人以上が隣国チャドに流出しています。

2.ユニセフの活動

 スーダンにおいてユニセフは、他の国連機関、非政府組織(NGOs)、ダルフール地域の地方組織と緊密な連携を取りつつ活動しています。
 状況が悪化してからは、スーダンの他の地域または他国で活動していた職員を、緊急支援のためダルフールへ派遣しました。支援の拠点となるニヤラ、エルゲネイナ、エルファシルの3事務所では、職員の数を3倍にして緊急時のニーズの見極めと可能な限りの基礎サービスの提供にあたってきました。これまでのユニセフの主な援活動は以下の通りです。

保健と栄養

  • 生後9ヶ月から59ヶ月までの10万2796人の子どもにはしかワクチンを実施。
  • 最も栄養状態の悪い子どもたちを対象に、医療センターを通じて130トンの医療用ミルクと計測器を提供
  • 81ヶ所の保健施設に保健キット627セットや72トンの付属資材を提供。これは、約52万2000人を1年間カバーできる
  • マラリア感染を予防するための蚊帳5万張り(10万人の子どもを対象)を提供
  • 妊産婦を支援するための80個の予備助産キット、保健器具9セット、緊急出産用キット7セット等を提供
  • 428人の保健員を対象に緊急事態への対応や疾病調査の研修を実施

水と公衆衛生

  • 手動ポンプ128基の修復、及び163基を3州に新設。これにより14万5500人がカバーされる。
  • 8000人をカバーする手掘り井戸2基を設置
  • 6万8050人に対し、1361の水洗公衆トイレを設置
  • 国内避難民キャンプ内に衛生施設を設置、さらに仮設の学校校舎の近くに4つのトイレを設置
  • 給水などに必要なバケツやコップ、石鹸などを支給
  • 給水所の使用や維持したり公衆衛生についての情報を発信するための、17の保健委員会の組織を支援

教育

  • 2003年末までに、国内避難民の子どもたちが通う学校に対し、生徒用教材キットを300セット、390の教室用キット、390のスポーツキットを提供(1セット50人用)
  • 2004年1月以降、追加で171の生徒用教材キットと284の教室用キットを配布
  • 国内避難民の集中する4地域、エルゲネイナ、モーネル、カルマ、クットゥムでは、その地域で入手可能な(通常は竹やわら)素材を使って164の教室と21の教員室を建設
  • image2
  • 1万の子どもたちのレクレーション活動用に120のスポーツキットを3州に分配
  • 主要科目のテキスト4008セット(1年生から8年生向け)を調達。また、さらに多くのテキストがカルツームからダルフールへと輸送されている
  • 西ダルフールのモーネル、エルゲネイナ、クットゥムでは2万1千人以上の子ども達が3ヶ月間の“キャッチアップ セッション”に参加。
  • 着席用の5600個のマットを提供。
  • 国内避難民の女の子たちを対象に7772着の制服を提供
  • ニヤラでは、自身も避難民である15人の教員に平和教育の研修を実施

子どもの保護

  • ダルフール北部では、離れ離れになった家族の追跡や家族再会事業のための体制作りや 手続きのための環境を整備。実際、これはうまく機能し、カップカビヤやエルファシルで35人の子どもが家族との再会を果たした。
  • 性暴力の危険から子どもと女性を守るため、95の人道援助機関と政府職員が実用的な子どもの保護手段に関する研修を受講
  • ダルフールの北部、南部で子どもの保護に関する評価を実施。
  • レイプやジェンダーが引き金となった暴力の立証。また、国内避難民の女性と子どもの安全面の改善に向けて地方政府と協力して提言活動を実施。

救援とシェルター

  • 2月から3月にかけて、ダルフール南部と北部のアクセスが可能な地域に暮らす4118家族(約2万4000人)にシェルターと家族用キット(防水シート、ロープ、乳児用の毛布、ポットとボール)を配布

現在の課題

  • 全地域での援助活動を妨げる不安定な治安情勢
  • 度重なる嫌がらせや攻撃を受けやすい弱い立場に避難民を追い込むなど、避難民集中地域における安全保障の欠如
  • 治安の悪化が、陸路での物資の敏速な供給の障害になり、空輸で物資を輸送するという割高な選択をとる必要に迫られている

3.2004年ダルフール地域でのユニセフの活動計画

主な活動計画

  • 生後9ヶ月から15歳までの261万人の子どもたちがはしかワクチンを接種し、78万4000人にビタミンの補給をする(これは3つのダルフール州に住む15歳以下のすべての子どもが対象で、国内避難民の子どもに限定していない)
  • 100万人の子どもと女性に保健サービスを提供する
  • 15の治療センターを通じて深刻な栄養不良状態にある1200人の子どものケア
  • 60万人に安全な水を、16万人に適切な公衆衛生施設を提供。さらに120万人に衛生教育を実施
  • 4万2000人の子どもたちに学用品を提供し、教育の機会を再び与えるために学校72校を修復
  • 離散した家族との再開事業を支援。また、地域で地雷教育を担当する1万5000人に研修を実施
  • 100万人に非常用シェルターと消耗品を提供

4.必要なアピールと現段階でのニーズ

 早い段階で可能な限り多くの地域の国内避難民に対して人道支援を行うため、ユニセフのスーダン事務所は、これまでにも約600万米ドルを借り入れて支援活動に当ててきました。この借り入れ金の補てんに加え、2004年5月の国連合同アピールにおいて、ユニセフは、ダルフールでの活動費用として3302万8000米ドルの支援を訴えました。詳細は以下のとおりです。

ダルフールでの2004年5月から12月までの活動に必要な支援

支援分野 必要額とされる額 これまでに支援された額 必要額に対する支援額の割合
はしかキャンペーン 2,100,000    
保健と栄養 1,650,000 796,460 48%
水と衛生 3,800,000 1,858,407 49%
シェルターと救済 22,378,000 729,927 3%
教育 1,600,000 0 0%
子どもの保護 1,500,000 0 0%
合計 33,028,000 3,384,794 10%

 ダルフールの国内避難民は、安全状況への不安や雨によって、引き続き故郷からはなれて暮らさなければならないものとみられています。依存は望まないというものの、国内避難民は外部からの支援にこれからも頼っていくでしょう。十分なシェルターが確保できないことや人口が密集した状態では、国内避難民の健康状態の悪化が懸念されます。当面のユニセフの優先課題は、5月から6月にかけて実施されるはしかキャンペーンです。しかし、基礎保健サービス、安全な水、トイレ、緊急時の配給の提供、親と離散した子どもや暴力の被害者の保護といった分野でも活動をしていかなくてはなりません。


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