財団法人日本ユニセフ協会
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当面の飢餓の危機は回避したが、状況は予断を許さず

【2006年10月19日 ハルツーム発】
(ユニセフ・国連食糧農業機関・世界食糧計画 合同発表)

ダルフールの人道危機状況が混迷を深める中、ユニセフ、国連食糧農業機関(FAO)、世界食糧計画(WFP)が合同で実施した最新の調査から、国際社会から寄せられた支援によって、2006年に入り、同地域の人々に蔓延していた栄養失調状態が改善されていること、また、食糧事情も多少ながら改善されていることが判りました。粗死亡率も、3年連続で改善されていた事が明らかになっています。しかし、現地の治安状況の改善は見られず、国連機関などによる人道支援活動が滞っている地域もあり、予断を許さない状況が続いています。

今回の調査は、5歳未満の子どもの栄養状態については、2005年から2006年にかけて若干悪化(11.9%から13.1%)し、人道支援機関が「緊急事態」とする状況(15%)に近い値を示しているものの、最も深刻だった2004年(21.8%)の状況は大きく改善された事を明らかにしています。

国連機関やNGO等の人道支援機関・組織は、これまでに食糧、飲料水、医療、農業など、ダルフールの人々の命を守るために、必要な人道支援物資・サービスを提供してきました。今回の調査は、こうした活動の成果を表したものではありますが、必ずしもダルフールの人々の未来に希望の兆しが戻ってきたことを示しているわけではありません。

全般的な食糧事情についても、収入の半分以上を食糧の確保に使わなくてはならない状況に置かれている人々の比率が、昨年の74%から70%に若干改善されたとは言え、これが、即、今後支援が不要になった事を示しているわけではありません。また、残りの3割の人々についても、あくまで、先の7割の人々に比べれば「まし」な状況にあるということに過ぎず、彼らもまた、引き続き人道支援を必要としている状況に変化はありません。

一方、国連は、現在も悪化を続ける治安状況が、人道支援を一層難しくしているだけでなく、ダルフールの人々が自らの力で状況を少しでも改善することを妨げていることに、重大な懸念を抱いています。

例えば、日々の食糧の確保に困難をきたしている人々の6割近くは、安全上の問題から、農作や牧畜、その他現金収入を得る活動に出られない状況に置かれています。

また、避難民キャンプで生活しているにも関わらず、充分な食糧を得ていない人々の割合は、2005年の67%から1年間で86%にまで増加してしまいました。

栄養失調の子どもを、治療的な栄養支援を提供する「給食センター」まで連れて行ける人々も、1年で半減しました。治安の悪化から、「行けなく」なった人々が増えてしまったことや、子どもたちの栄養状況が改善された地域では、「給食センター」が閉鎖されてしまった所もあることが、その背景にあります。

ダルフールの人口約600万人のうち、人道支援活動の対象になっている約370万人の中から抽出された世帯を対象に実施された今回の調査では、ダルフールの人々が置かれている状況のある側面では改善が見られたことを明らかになりました。しかしながら、調査チームの活動は治安や悪天候に阻まれ、例えば何ヵ月にも渡って人道支援が届いていない地域が調査できませんでした。従って「改善」と見える結果も、こうした点を考慮して捉えられなければなりません。

水を媒介する疾患や死亡を防ぐために大変重要なポイントとなる安全な飲料水。そうした水を確保できる人の割合は、63%から72%に向上しています。また、一般家庭(避難民キャンプ以外の環境)の人々の食糧事情は、ダルフール地域全般で、若干ではありますが向上の兆しを見せています。食糧事情の改善が、農地での耕作活動や現金収入を得る活動の活性化に直接結びついていることも、今回の調査で分かりました。

一般家庭が調査対象の中心となったダルフール北部では、この数ヵ月に治安状況が悪化したにも関わらず、食糧事情が改善しました。一方、避難民キャンプでの生活を強いられ、農地などを持たない人々が他地域に比べて比較的多い南部・西部地域の食糧事情は逆に悪化しています。

ダルフール全域の平均値では、農地で耕作が出来ている世帯は全体の51%。昨年からの変化は見られません。一方、地域別に見て行くと、北部で59%、南部で48%、西部では46%となっています。治安以外に、農地での耕作を妨げている原因として、多くの住民が、治安以外に、農具や種の不足、害虫・雑草による被害や病害を訴えています。

農作物の販売から主たる収入を得ている世帯は、全体の20%。農作業を手伝うことによって主たる収入を得ている世帯は37%に上ります。

2006年9月にダルフール全地域の89ヵ所、2,200世帯を対象に実施された今回の調査を通じ、全世帯の22%が女性を家長とし、53%の世帯の家長は文字を読めないという実態も明らかになりました。

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