HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > スーダンダルフール 地域緊急支援2007/5/4
財団法人日本ユニセフ協会





子どもを中心とした開発のために地域で団結
紛争に背を向けたダルフールの村

【2007年5月4日、スーダン・南ダルフール発】

© UNICEF Sudan/2007/Maki
南ダルフールのヤラ村で教室に集まる子どもたち。ヤラ村は、ユニセフの支援する子どもにやさしいコミュニティ・イニシアチブの支援で学習環境を改善することができました。

ヤラ村では、ダルフールの驚くほど違う側面を見ることができます。民族の違いと部族間の緊張でばらばらに引き裂かれてきたこの地域で、地元のフール族とアラブ遊牧民が隣り合わせに生活し、コミュニティ改善のために共に取り組んでいます。

ここヤラでは比較的安定していることから、ここの人々は自分たちの優先課題—将来のためにコミュニティを強化することに取り組むことができます。

学校や診療所が再建されました。村人の将来的な収入源となるように、園芸園が作られ、レモンやパパイヤ、マホガニーの木が育てられています。「パパイヤは多くのダルフールの人の間で人気となってきています。パパイヤは私たちの収入源になるでしょう。」と言うのは、園芸プロジェクトの管理人に選ばれた村人のモハメッド・エル・ハッサン・アワドです。

保健と教育施設

苗が育てられている竹で囲われた園芸園の反対側には、修復されたこぎれいな保健診療所があります。地域一帯の16,000人あまりの人々を対象とし、センターは周辺数マイルの人々の唯一の保健ケア施設となっています。定期的な予防接種実施のためのワクチン保管施設にはソーラーパネルによる電力が使われています。

地域保健員のほか、医師1名とアシスタント1名がセンターには配置されています。助産師も一人いますが、彼女は1キロ離れたところに住んでいます。それでも、保健診療所はヤラと周辺の村の人々にとってかけがえのない資産となりました。

カラフルでにぎやかな学校も、紛争に背を向ける村人の努力の象徴となっています。6〜14歳までの400人以上の子どもたち(そのうち4分の1は女の子)が、改装された教室で、1日5時間を過ごします。校門には給水所も設置され、校舎の反対側の角には児童用のトイレのために、大きな穴が掘られています。

各教室にはいすと机、黒板、教科書があります。村にはPTAもあります。

将来のために

© UNICEF Sudan/2007/Carwardine
ヤラの学校に通う低学年の女の子が、2時間目の授業の開始を知らせるベルを鳴らしています。

ヤラ村はなぜ、このように将来に向けて良い方向へ舵をきることができたのでしょうか?村の長老アブデル・ラティフ・エイサ・ハロウンはその経緯の一部を説明してくれました。

「1999年、ユニセフがここに「子どもにやさしいコミュニティ・イニシアチブ」を導入しました。そのおかげで、コミュニティが自ら地元の社会サービスの計画作りに参加できるようになりました。プロジェクトからいくらかの資金と支援があったほか、地元の人々も資材や労働力などの貢献をしました。」

このプロジェクトは、紛争で中断されるまでヤラで2年間実施されました。2006年に、新しくなったプロジェクトが再開され、園芸センターが開始されました。今やコミュニティはこの機運を維持しようと心に決めています。

「このイニシアチブがうまくいくように願っています。」ハロウン氏は言います。「人々に時間を与えるという問題ではありません。特定のプロジェクトに対して協同で作業するという理念を信じています。今与えられる1日や2日といった時間は、今後何年にもわたって続く長期的な利益となるでしょう。」

学びへの熱意

© UNICEF Sudan/2007/Maki
南ダルフールの遊牧民の家族の出身の13歳のハムダン(左)は、安全を保障してくれた村の長老と両親のはからいで、学校に通うためにヤラで生活しています。

13歳のハムダンとハミッドは、ヤラの学校の8年生の数学の授業を受けています。彼らの両親は遊牧民の羊飼いです。彼らはアラブ系で、この地域では少数民族です。しかし、兄や地域の長老から安全の保障を与えられて、彼らの両親はここ3年間子どもたちをヤラに残すことができました。ここに子どもたちを残すと決めた唯一の理由は、子どもたちが学校を続けられるようにするためでした。

「かつては学校に行くために長い道のりを歩かなければいけませんでした。」ハムダンは言います。「だから、両親は、自分たちがここで生活した方がいいと決めました。学校に行かなければ、羊の面倒をみるだけだったでしょう。他にどこにも行くところはなかったでしょう。学校に来ることで、人生でもっと多くの事ができるチャンスができました。」

少年たちは家族を恋しがっています。最後に両親に会ったのは3ヶ月前です。しかし、彼らは学びへの強い熱意を見せます。ハミッドは勉強のためだけに今は生活しているといいます。高校を卒業し、いつかは医者になりたいと思っています。ハマダンは工学を志すことに決めました。一生を伝統的な遊牧民として過ごしてきた彼らの両親も、子どもたちの強い願いを共有しています。

少年たちはコミュニティから守られてきました。モハメッド・イブラヒム・カリル校長は、彼らは希望のある未来への指針になると考えています。

「この学校を出た子どもたちが今大学に通い始めています。これに驚くだけではいけません。村の全ての子どもが学校に通っています。ここにはアラブの子どもたちも多くいます。村の委員会が彼らに希望を与え、彼らも私たちと共にいることに安心しています。家族も、政府から給与が出ていないボランティアの先生へ謝礼を渡すなどの貢献してくれています。」

「人々を団結させたものは?」

© UNICEF Sudan/2007/Maki
村のリーダー、ハロウンはユニセフが支援する子どもにやさしいコミュニティ・イニシアチブがどのようにヤラの人々を団結させたかについて説明します。

これは「子どもにやさしいコミュニティ・イニシアチブ」の核心です。ユニセフや地元のNGOからの支援に加え、住民も力をあわせ、安定して繁栄できるような強いコミュニティを作ります。皆が共同して取り組むことにより、プロジェクトの担い手としての感覚が育てられ、サービスがより利用されることにつながります。

さらに重要なことは、ダルフールの紛争がいまだ約400万人に影響を与えている中、イニシアチブは、子どもを中心にすえた地域開発をコミュニティが続けられるようにしています。

「このプログラムがうまく機能しているのは、適切な人々に適切な支援を提供しているからです。そして、学校などの、人々が協同することができる仕組みを作り上げることができます。」カリル校長は説明します。「コミュニティが全ての家庭の子どもたちを歓迎し、みんなが安全な環境の中で勉強できることを示すことで、人々は団結できるのです。」

長老は続けます。「人々を団結させたものは何かって?何ももたない人々の間に格差はない。物がないことをみな共有している。これが平等につながるのです。」

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