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財団法人日本ユニセフ協会




スマトラ沖地震・津波による津波被害への初動対応——ユニセフ・インドの場合

プラカシュ・グルナニ博士はインド南部、タミール・ナドゥ州に拠点を置いて活動する、ユニセフの保健スタッフ。博士の今年のクリスマス休暇は、突如として終わりを告げました。インド南部に壊滅的な被害をもたらした津波の情報が次々と飛び込んでくる中、博士はチェンナイ中心部にあるユニセフのオフィスへと急行しました。電話がなりはじめ、博士は今、自分が危機的状況の真っ只中に立たされていることに気付きました。

しかし、彼にとってこのような状況は初めてのことではありません。グジャラート州を地震が襲ったときにも、博士はユニセフの一員として保健分野での活動に奔走していたのです。

災害発生直後には、清潔で安全な飲み水やかさばらない衣服など、基礎的な物資を確保することが最も重要になります。保健分野での数年にわたる経験から、博士はこのことを熟知していました。医療施設には緊急医療用の器具や医薬品が、緊急避難キャンプには料理をするための炊事道具が必要になります。「今私たちがしなければならないのは、避難キャンプでの病気の流行を防ぐことです」と博士は言います。博士は早速、ユニセフ・デリー事務所と物資供給セクションに支援を求めました。

カレシュ・クマールは物資の調達と供給を担当するスタッフです。デリーに拠点を置くクマールとそのチームは、平時から緊急支援用物資、特に安全な飲み水の供給を確保できるよう、物資の備蓄に取り組んできました。ユニセフでは、さまざまな業者と長期契約を結び、大量の経口補水塩(ORS)と塩素消毒剤500万錠をいつでも空輸できる体制を整えています。タミール・ナドゥ州で、ユニセフの物資担当官は地元の市場をかけ回り、飲料水を持ち運びするためのタンクを調達しました。これらのタンクは、沿岸地域に設置された避難キャンプ70カ所の一部に送られます。タンクを載せたトラックは、今日、最も被害の大きかった地域に向けて出発しました。

「キャンプに避難してきた人々に清潔な飲料水を提供することが最重要課題です」とクマール氏は言います。「飲料水用のタンクやORS、塩素消毒剤をできるだけ早く被災地域に届けなければなりません。そうすればさらなる犠牲者を減らすことができるのです。これが現時点での一番の課題です」

ユニセフはまた、タミール・ナドゥ州とアンドラ・プラデシュ州の被害の大きかった地域全域にもスタッフを展開させています。その中にはクリスマス休暇中に召集されたスタッフも含まれます。

リゼット・バーガーは水と衛生分野のチーフ。最近ユニセフ・インドのメンバーに加わったばかりの彼女は、家族とともに初めてタミール・ナドゥ州を訪れ、休暇を過ごそうとしていました。しかし事態は一変しました。

「26日の朝、私は海岸沿いに続くポンディシェリーのきれいな町並みを眺めながら、家族と一緒に車でチェンナイへ向かっていました。クリスマスの夜が明けて、いつもと変わらない楽しい一日になるはずでした。チェンナイまであと6時間ちょっとというとき、異変を感じました。人も町並みもすべてがいつもと違って見えたのです。車のラジオをつけるとその理由が分かりました。私が向かおうとしていたまさにその場所では、何千人もの人々が亡くなり、刻一刻と犠牲者の数が増えつづけていたのです。

ようやく到着したチェンナイでは、予約していたホテルが津波に襲われ、宿泊していた子どもが何人か亡くなっていました。ホテルのスタッフはすでに茫然自失の様子でしたが、事態はまだ始まったばかりでした。チェックインを済ませてすぐ、状況を把握するために家族を残してホテルを出ました。

水位がじわじわと上昇して、気付いたときには屋根の上まで避難していた——町の人は口々にそう訴えました。

漁師のアンボさんは、母親とおばあさんを屋根の上まで逃し、二人は換気口にしがみついて波にさらわれるのを防いだそうです。アンボさんには4歳の娘がいましたが、近所の人と遊んでいたはずなのにどこにも見当たりません。もうダメだとあきらめかけていたとき、きょうだいが水の中に沈んでいる彼女を見つけました。まだ死んではいませんでした。家族で道路まで運び出し、通りがかった車に乗せて地元の病院まで連れて行ったそうです。女の子はまだ病院に入院していますが、容態は安定しています。

深夜にホテルに戻ると、水位が再び上昇しはじめているので2〜3時間のうちに退去するようにと言われました。それ以来、私は町に出て被災した人々の話しを聞き、何が必要なのかを見極めようとしています。いたるところで、家屋が完全に流され、車やバイクが積み重なっている光景が見られます。

今回の災害によって最も大きな影響を受けた地域は、貧しい漁村の一帯です。子どもとはぐれてしまったたくさんの母親が、近隣の漁村まで足を伸ばして探そうにも、バス代を工面できず、なすすべもなく取り残されていました。水と衛生の分野に活動の焦点をあてる必要があることは間違いありません。また、多くの子どもたちが精神的なショックを受け、心理面でのケアを必要としています。私が出会った家庭の母親と子どもは、津波に襲われてからずっとしゃがみこんだまま震えていました。

壊滅的な状況の中、被災した人々を支援するためにユニセフにできることがたくさんあります。デリーでの日常の仕事に戻れるまでまだしばらく時間がかかるでしょう。今私がなすべきことは、ここに留まってユニセフ・インドの活動をサポートし、命を守るためにできる限りのことをすることです」


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◇ 募金のお願い ◇

 (財)日本ユニセフ協会では、被災地域におけるユニセフ活動を支援するための募金を、下記の方法で受け付けています(当協会への募金は寄付金控除の対象となります)。皆様のご協力をお願い致します。