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財団法人日本ユニセフ協会



 

スマトラ沖津波から2年:大きな成果とこれからの課題

© UNICEF/HQ06-1918/Pietrasik

13歳のシバランジニと10歳のブハンプリヤの姉妹は、津波の発生後初めて母親が亡くなった場所を訪れました。彼女達はかつてインド南部タミルナドゥ州のプドゥペッタイ村に住んでいました。

20万人以上の命を奪い、家や学校、村全体を押流したスマトラ沖地震・津波から2年が経ちました。ユニセフは、今も子ども達の生活を立て直し、彼らが未来に希望を抱くことが出来るように支援活動を続けています。

支援活動を開始してからこれまで、ユニセフが支援した子どもと女性の数は8カ国で480万人に上ると推計されています。津波発生から2年が経ち、大きな成果が見られる一方で、これからやらなくてはならないこともまだ多くあるのが現状です。

現在までの主な成果:

  • ユニセフは53ヶ所の保健施設の改築及び改修を支援し、病院や診療所など約6,100ヶ所に医療物資を配給しました。
  • 120万人以上の子どもがビタミンA補給を受けました。
  • 約170万人の子ども達の発育を地域保健員が観察し、母親に育児や栄養についてのカウンセリングを提供できるよう支援し、インドやスリランカでは、栄養不良児の割合が激減しました。
  • マラリアの感染防止のために、100万人近くの子どもと女性に殺虫剤処理した蚊帳を提供しました。
  • ユニセフの支援で設置された給水設備により、100万人以上が安全な水を手に入れられるようになりました。このうちの25万人は学校に通う子どもたちです。
  • 教育の質の向上と中退する子どもの数を減らすため、ユニセフは教師や校長を対象とした「学習しやすい環境」づくりについての研修を支援しています。

学校の再建

© UNICEF/HQ06-1796/Navarak

津波によって破壊された海辺のリゾート跡地にたたずむ男の子、タイのパン・ガー県にあるバン・ニャン海岸にて。この写真は、先住民モケン族出身の11歳の少年、アッケポン・ナバラクによって撮影されました。

復興支援の成果を物語る活動のひとつとして、津波によって損壊した学校の再建があげられます。

数週間前、10歳のモウリ・ユニアと彼女のクラスメイトは、インドネシアのアチェ州にあるカンポン・バロ小学校の新しく建設されたばかりの校舎に移ってきました。モウリの通うこの学校は、津波の被害を受けた地域に、ユニセフの支援で新たに建設された常設耐久性校舎36校のひとつです。

「前の学校は雨が降るといつも水浸しになっていたの。だから、落ち着いて勉強もできなかったわ。でも、新しい学校は静かだし、気持ちよく勉強することができるようになったの。」と、モウリは話します。

モウリとその友達のように、現在津波被災地に住む数十万人の子ども達が、新しく建設された36の耐久性校舎や145ある準耐久性校舎、修復工事を施した900の学校で勉強しています。また、子ども達が学校に通いつづけられるように、ユニセフは新学期にそなえて100万人以上の子どもに学用品を配布しました。

「学校の再建はもっとも重要な活動のひとつです。」とユニセフ・インドネシア事務所代表ジアンフランコ・ロティリアーニ氏は話します。「今、テントの校舎に通っている子どもはひとりもいません。」ロティリアーニ氏がいうには、新しく建設及び修復された校舎は、衛生設備や遊び場の他、様々な「子どもにやさしい」特徴を備えており、津波発生以前のものに比べて子ども達がより快適に学習することができるようになったとのことです。

パートナーシップの強化

© UNICEF/ HQ06-1615/Noorani

仮設の教室で授業を受ける子ども達、スリランカ南部のキリンダ・イスラム高校にて。新しい「子どもにやさしい」学校は、国際的な津波復興支援の一環として、現在改修工事中です。

ユニセフとパートナー組織は、津波で親を亡くした5,000人近い子どもたちの支援を続けています。孤児やHIV/エイズの影響を受ける子ども達など、弱い立場におかれた子どものケアに関する方針の開発を支援しています。津波によって心に傷を負った子ども約40万人が、ユニセフの支援する心理・社会的ケアを目的とした活動に参加しています。

津波被災国での子どもを対象とした支援活動を通じて、ユニセフは地域の人々や現地のパートナー組織との協力体制を強化してきました。

開発パートナーと協力し、政府は子どものために必要不可欠な政策や制度の整備を強化し、質の向上を進めています。これにより、多くの子ども達が津波発生前に利用出来ていた基礎的な社会サービスが復旧されただけでなく、必要であるにもかかわらず以前は利用できなかったか、または利用が制限されていたサービスも提供されるようになりました。しかし、社会サービスの整備は時間のかかる作業であり、これからも活動を継続していく必要があります。

資金使途

2006年10月31日時点で、スマトラ沖地震・津波の復興支援活動には、 世界各国から6億9,590万米ドル(約807億円)の寄付が寄せられました。 これまでに、この51%にあたる3億5,650万米ドル(約420億円)が使用されました。

【2004年12月26日〜2006年10月31日 】
  これまでの使用額
(米ドル)
2006年11月以降の
使用予定額 
(米ドル)

総額
(米ドル)

総額に占める
割合
現地事務所 339,200,000 315,400,000 654,600,000 95%
  インド 23,200,000 7,600,000 30,800,000 7%
  インドネシア 149,200,000 185,200,000 334,300,000 42%
  マレーシア 1,700,000 2,000,000 3,700,000 0.5%
  モルディブ 38,100,000 19,800,000 57,800,000 11%
  ミャンマー 6,000,000 6,500,000 12,500,000 2%
  ソマリア 5,900,000 500,000 6,400,000 2%
  スリランカ 104,000,000 81,600,000 185,700,000 29%
  タイ 11,000,000 12,300,000 23,300,000 3%
東アジア太平洋地域
事務所
3,600,000 2,500,000 6,100,000 1%
南アジア地域事務所 3,400,000 1,700,000 5,100,000 1%
本部 10,300,000 13,400,000 23,700,000 3%
未配分の資金   6,400,000 6,400,000  
総計 356,500,000 339,400,000 695,900,000 100%


なお、スマトラ沖地震・津波被災地に対するユニセフ復興募金は、2005年6月24日をもって受付を終了いたしました。本募金に対しては、半年間にわたって日本全国から多くのご支援をいただき、募金額はおよそ33億4千万円にのぼりました。皆様のご支援ありがとうございます。

当協会では、紛争や災害など緊急事態に直面している地域の子どもや女性のための緊急募金の受付を行っております。みなさまの継続的なご支援をどうぞよろしくお願いいたします。