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財団法人日本ユニセフ協会



 

インドネシア:新しくお母さんになる女性たちに母子保健サービスを

【2007年4月20日、インドネシア タンジャン村発】

© UNICEF video
ユニセフはアチェからニアス島にかけておよそ227の母子保健センターを建設している

バンダ・アチェ郊外の村で、助産師として働くラドリアナさん。階段を登り、明るい緑色のドアの白い家にたどり着くと、ラドリアナさんはノックして「サラム・アライクムさん」と呼びかけました。すると、玄関のドアが開き、ラドリアナさんはアスリさん(30歳)に出迎えられました。アスリさんは妊娠8ヶ月。彼女にとって2人目となる子どもですが、アスリさんには保健ケアを受けるだけの金銭的な余裕がなく、また、診療所も身重の身体で通うには遠すぎるのです。

ラドリアナさんはアスリさんの血圧や心拍数などを検査し、銀色に光る器具をアスリさんのお腹に当てて胎児の心音を聴診しました。全ての検査が終わった後、ラドリアナさんは「異常無し」と記録しました。インドネシアでは、家族の誰かの具合が悪くなったとき、まずラドリアナさんのような助産師に診てもらう風習があります。しかしアチェでは、数十年におよぶ社会的不安定と2004年に発生したスマトラ沖地震・津波のために、医療従事者や医療物資が不足していました。

母子サービスや必要なケアを提供する

しかし、タンジャン村に変化が訪れました。かつては、母親や子どもたちが治療を受けにいく場所はラドリアナさんの家でした。でも今は違いますーお母さんや子どもたちは、太陽の光を受けてキラキラと輝く、ユニセフが新たに建設した母子保健センターに通っているのです。

© UNICEF video
ユニセフはアチェからニアス島にかけておよそ227の母子保健センターを建設している

この母子保健センターは、ユニセフがアチェからニアス島にかけて建設中のおよそ227の母子保健センターのうち、最初に完成したもののひとつです。これらの母子保健センターでは、母子保健サービスだけではなく、予防接種や栄養改善、健康的な習慣の推進のサービスなども併せて提供されています。また、ほとんどのセンターでは、就学前の子どもたちのための教育活動も行っています。

計画にもとづいて新しく建設されたこれらの設備は、「ポシャンドゥ」と呼ばれる制度を復活させるための活動の一環として建設されました。この制度はコミュニティを基盤とした保健チームによる医療ネットワークで、30年続いていましたが、1990年後半に崩壊してしまっていました。

「かつての『ポシャンドゥ』制度では、母親と子どもにのみ保健サービスが提供されていました。ですが、新しい「ポシャンドゥ・プラス」では、特に5歳未満の子どもを対象にした教育や子どもの保護活動も行っています」とユニセフ保健・栄養担当官のW. ニケン・ササンティさんは語ります。「インドネシアのほかの地域では、村に助産師がいないところもあります。この新しいプログラムによって、地域の人々が保健サービスを利用しやすくなることでしょう」

新たに母親となった人々に心の平和を

ラドリアナさんは、新しい母子保健センターが建設されたことによって、患者さんにより良い治療が提供できるようになったと言います。彼女は家族とともに、センターの建物の中で暮らしています。建物の半分が家で、残りの半分に検査室があります。

「地域の人々の反応はとても良いの」とラドリアナさんは言います。「みんなこの建物を気に入っています。この建物のおかげで、前よりも便利になっただけじゃなくて、患者さんのプライバシーも保てるようになったんですもの。以前はたった一部屋しかなかったから、私の家族も同じ部屋にいて、患者さんは居心地が悪く感じていたのよ」

セティナさんは、ラドリアナさんが現在受け持っている7人の妊婦さんのうちのひとり。彼女はお腹の赤ちゃんのことを心配しています。なぜなら、最初の妊娠のときは自然分娩が難しく、分娩中に帝王切開に切り替えられていたからです。だからこそ、「もう手術はしたくない」と考えています。分娩中に何か問題が起こっても、前よりも良い母子保健センターができたのでセティナさんはほっとしています。「数年前まで、助産師は家を一軒一軒巡回しなければならなかったの。でも今ではサービスはずいぶん改善されたわ」とセティナさんは語ります。「新しく来た助産師はもっと経験を積んでいるし、以前よりも薬や医療物品がたくさん手に入るようになったのよ」

でも、新しく完成した母子保健センターとそこで提供されるサービスがもたらしたものはこれだけではありません。アチェ農村部でこれからお母さんになろうとしている女性や、新しくお母さんになった女性の心の中から少し不安が減って、安心して過ごせるようになったのです。


なお、スマトラ沖地震・津波被災地に対するユニセフ復興募金は、2005年6月24日をもって受付を終了いたしました。本募金に対しては、半年間にわたって日本全国から多くのご支援をいただき、募金額はおよそ33億4千万円にのぼりました。皆様のご支援ありがとうございます。

当協会では、紛争や災害など緊急事態に直面している地域の子どもや女性のための緊急募金の受付を行っております。みなさまの継続的なご支援をどうぞよろしくお願いいたします。