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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第29報
日々変化するザータリキャンプの状況−最前線からの報告

【2013年1月31日 ヨルダン発】

日々変化する、ヨルダン北部の砂漠地帯に広がるザータリ難民キャンプの状況。現場で活動に当たっているユニセフのコナディ・コン緊急支援専門官も、そのめまぐるしい変化を感じています。

コナディ専門官は、現在、このキャンプでのユニセフの支援活動の責任者として、ほぼ毎日ザータリ難民キャンプを訪れ、約7万の難民の方々や、キャンプのあちこちで支援活動にあたっているユニセフのパートナー団体のスタッフと多くの時間を過ごしています。コナディ専門官は、キャンプマネージャーであると同時に、人々の間で問題が発生した時の仲裁役や“外交官”としての役割も果たさなくてはなりません。

© UNICEF Jordan/2013/Youngmeyer
ヨルダン北部に設置されているザータリ難民キャンプで、シリア難民の男性と、キャンプ内の問題について話し合うコナディ・コン ユニセフ緊急支援専門家。

難民の大量流入

今日、ザータリ難民キャンプが直面している大きな問題のひとつは、シリアから避難を余儀なくされた大量の難民の流入です。今年1月だけでも、約3万人がシリアからヨルダンへの避難を余儀なくされました。この数は、昨年12月に同じくシリアからヨルダンに避難を強いられた難民の2倍に及びます。

子どもたちをはじめシリアを逃れてきた人々は、国境を越えると、バスで難民キャンプの受付に案内されます。ここで、難民登録を受け、仮住まいとなるテントや、毛布、食料といった本当に基本的な物資を受け取ります。

シリアからの避難の旅路は、危険で困難に満ちたものです。中には、砲弾や爆発物の破片などで怪我をする人も少なくありません。多くの人が、戦闘を避けるため、夜中に徒歩で避難します。国境に辿り着くまでは何時間も、あるいは何日もかかる場合もあります。

コナディ専門官は、この難民キャンプを熟知しています。彼がキャンプの中を歩いていると、子どもたちが近寄ってきます。また、何かの問題についての相談や助言を求めて彼の元にやってくる人もいます。飲料水やトイレ、衛生用品、子ども用の防寒着の提供の他、予防接種、教育や子どもの保護といった分野でも、パートナーと共に活動しているユニセフは、難民キャンプで大きな役割を果たしているのです。

この日、コナディ専門官は、長期にわたりキャンプでの生活を余儀なくされている年配のご夫婦を訪ねました。「ちょっと話をしに行きました。何か困っていることがないか、私たちができる事がないか確認するためにね」(コナディ専門官)

コナディ専門官が訪れた80代後半の男性は、妻や孫を含む約60人の親類縁者と一緒に、半年前にシリアから避難してきたと言います。ヨルダンまでは、徒歩で4時間かかりました。この男性のテントには、家財道具らしいものはほとんどありません。それでも、彼は、コナディ専門官にお茶を飲んでいくよう強く勧めました。この男性一家は、日中の寒さは気にならないものの、夜は非常に冷え込むと言います。毛布の数と、暖房用の燃料が不足するのではと心配していました。

© UNICEF Jordan/2013/Youngmeyer
ザータリ難民キャンプに新たに追加されたテントが並ぶ地域。

困窮する支援物資

次にコナディ専門官が訪れたのは、最近避難してきたばかりの人々が暮らす区画。この区画に設置された共同シャワー室には、ガス湯沸かし器が取り付けられています。この湯沸かし器は、既に48箇所の共同シャワー室に設置され、ザータリ難民キャンプで生活する1万4,000人以上の人々にお湯を提供しています。また、新たな難民の流入が続く中、水飲み場やトイレの不足も大きな課題になっているため、それらの設備の建設も、急ピッチで進められています。

もう一つの問題は、年末から続いた豪雨と大雪のためにキャンプ地内で洪水が広がり、多くのテントが水没したことです。ユニセフは、水浸しになってしまった衣類等に代わる緊急用の防寒着と布団を配布。水没で“住居”を失った多くの人々は、仮設学校用のテントに避難しましたが、数週間が経過した今もその学校用テントは、“住居”としての使用が続いている状態です。このため、数千人の子どもたちが待ち望んでいる学校の再開にも、影響が出る事が懸念されています。

コナディ専門官は、学校用テントでの生活を強いられている人々が“戻れる”場所と、彼らが洪水で失ったりした基本的な生活用品を確保するため、パートナー団体と策を協議。その後、実際に学校用テントで避難生活を送っている人々と面会しました。既に他の場所に移動している人々もいますが、多くは、いまだに机や椅子を積み上げて生活スペースを確保し、教室内で生活しています。

コナディ専門官は、この難民キャンプで避難生活を送っている多くの人々が、学校を、勉強するだけの場所ではなく、キャンプ全体に“安定”を与えてくれる場所として認識されていると話します。

「ですから、学校が通常通りの機能を果たせていないことを、多くの人が申し訳なく感じているのです」「学校から移動してほしいと誰もが望んでいます。そうすれば、学校を再開できますから。そのために、あらゆることを支援するつもりです」

難民の方々と直接話をすることができて嬉しく思います。ユニセフが行っている支援活動について意見を伺えますし、改善点を見出すこともできるのですから」(コナディ専門官)