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財団法人日本ユニセフ協会
 



シリア緊急募金 第30報
一筋の希望〜ホムスからの報告

【2013年2月1日 シリア発】

UNICEF/Syria 2012

ユニセフのマーク・チョーノー緊急担当官は、シリアのホムスで1ヵ月にわたり支援活動に従事。その活動の様子と、紛争がホムスの子どもたちに与えている影響を、次のように伝えてきました。

私は、現地の詳細な緊急支援ニーズを調査するため、約1ヵ月間ホムスに滞在しました。その間、支援の拡大にむけた現行の活動の見直しや、現地のパートナー団体との連携関係の構築や強化も行いました。

現在ホムスに住む3人に1人が、他の地域からやってきた避難民で、そのうち3分の2が子どもたちです。爆発や空爆の炸裂音、銃声は、未だにホムスで日常的に聞こえてくる音でした。

私が滞在していた場所から1キロ足らずの場所で戦闘が勃発し、町中を震撼させました。世界中の危険な地域で20年以上にわたり任務を果たしてきましたが、何かが爆発すると、その度に未だに不安に駆られます。こうした状況の中で、我々はこの紛争によって被害を受けた人々の生活状況の改善に努め続けています。

紛争の最中

私はホムスの子どもたちの生活状況を確認するために、徒歩で市内を回りました。瓦礫と化した地域の手前の、建物がまだ完全な状態で残っている区画にある子どもを対象に様々な活動を行っている女子修道院を訪ねました。私は、本を読んだり、先生の話を聞いたり、お絵かきしたり、遊んだりするために、子どもたちが怖がることなく修道院に通ってきていることに驚きました。部屋の壁には、笑顔の絵や笑いながら手をふっている絵、そして“許すこと”の必要性を説くメッセージが飾られていました。そこは、瓦礫が散乱し、多くの命が脅かされている外の状況とは別世界でした。

また、「タワー」と呼ばれている建設途中で放置されたアパートに避難している一家のところへも足を伸ばしました。そこで、友人のために自ら教室を開いた14歳の少女と弟に会うことができました。この2人が通っていた学校は、武力衝突の中で破壊されてしまいました。このため、2人は、自分たちが避難生活を送っている場所を、友人たちが教科書を持って集まるスペースにしたのです。

彼女たちのご家族やホムスで出会った教育関係者は、みなさん異口同音に「子どもたちが確実に学校教育課程を修了できるようにしなければならない」と話します。教育施設の大部分は、紛争で深刻な被害を受けています。多くの学校が攻撃で破壊されたか、もしくは、住む場所を追われた人々の避難所になっているのです。

食糧や水だけでなく・・・

UNICEF/Syria 2012

ですから、現在かろうじて機能している教育施設には、当然のように、通常の2〜3倍の児童生徒が押し寄せている状況です。学校の対応能力を超えている厳しい状況の中、先生方も最善を尽くしていますが、非常に大きな負担を強いられています。ユニセフはパートナー団体と共に、一人でも多くの子どもたちが勉強を続けられるように、補習クラスの開講を支援。ホムスでは、現在約6500人の子どもたちがこのクラスに通い、今後数週間のうちに、さらに多くの子どもたちがこの恩恵を受けられるようになる見込みです。また、正規のクラスでの授業の質も確保するため、学校で必要な基本的な教材などの支援も、間もなく始まります。

ここでは、人々が精神的に苦しみ、自暴自棄に陥る様子を見聞きしました。しかし同時に、この紛争によってもたらされた混沌とした世界の中に一筋の光を見出し、与えられた環境の中で精一杯に、懸命に生きようとしている人々にも出会いました。

ホムスのタルビセに拠点を置くパートナー団体のスタッフからは、この地の女性たちが、厳しい寒さの中、衣類の不足を補うため寄付された毛布を洋服に仕立てたりしていると教えてくれました。ユニセフは、紛争の影響を受けた人々のために、子ども用防寒着をはじめ冬用の支援物資を提供しています。しかし残念なことに、かつてないほどの規模にまで広がった今回の危機の中で、必要としている全ての子どもに十分な支援物資を提供できていないのが現状です。

タルビセのこの支援団体は、ユニセフから届いた子ども用衣服の入ったダンボールを開梱し、お母さんや子どもたちに、それぞれの状況に合わせた配布を始めています。「例えば、靴が必要な子どもには靴を、また、靴はあるけど洋服がないという子どもにはパジャマをといった具合です」と、この団体のスタッフは説明してくれました。

心のケア

ユニセフは、この2週間で、家族用衛生キットや毛布、調理器具セット、高カロリービスケットなどの支援物資を、ホムスの6万7,200人以上に届けました。町中にミサイルがふってきて、粉々になっていくのを目の当たりにした小さな子どもたちの恐怖はどれほどのものなのか、私には想像することもできません。私が出会ったほとんどの子どもたちが、心に大きな負担を抱えている兆候を示していました。だからこそ、「子どもに優しい空間」を通じて、出来るだけ多くの子どもたちに心のケアを提供することが非常に重要なのです。

心理社会的支援を実施している地元の団体と、今後の計画を話し合いました。紛争前から若者が中心となって精力的に活動してきたこの団体ですが、まさか自分の町でこのような活動をする日が来ようとは夢にも思っていなかったとのことです。カウンセラーとして働いた経験を持つ私に、彼らは、団体の活動へのアドバイスを求めました。そこで、今後一緒に、この場所で必要とされる相当規模の支援が展開できるよう、心理社会支援に関わる人々のグループを立ち上げることを決めました。

資金と様々な団体の間の強いパートナーシップがあれば、まだまだやれることはたくさんあります。恐怖が徐々に地域の人々の心を蝕み、日常生活を蝕み、子どもたちの命を蝕んでいます。心理社会支援分野でのユニセフの活動は、この地域の子どもたちが、再び子どもらしく日常生活をおくり、健康で地域に根付いた社会の核となる存在となって育ってゆくためにも、非常に重要な支援なのです。